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53 こいつもヤバい
しおりを挟むスカーレットは危機に瀕してした。
それは命の危機な気もするが、壁ドンという古典的な、状況から察するに貞操の危機の方が強い気がした。
今日も社畜はご機嫌に礼拝堂にやって来て、社畜として素晴らしい自画自賛したくなるほどの仕事が出来たと満足し、
さて、お昼ご飯食べに行こうかなと、礼拝堂を出て、廊下を歩いていたら、急に誰かに腕を捕まれて、倉庫として使っている空き部屋に連れ込まれてしまった。
「え? なに?」
と、困惑するのも無理はない。
女神のお膝元で、女神様のものである神官の身体に許可なく触れるなんて、天罰が下る行為だ。
なのにその輩は、スカーレットを倉庫に連れ込み、昔ながらのとっても古典的な壁ドンを繰り出したのだ。
さすが攻略対象者というべきか、そんな古典的な使い古された技を繰り出すなんて。
と、社畜はこの乙女ゲームの攻略対象者の希少な魔法使いでスカーレットの天敵、アダムを見上げる。
「あの……なんの御用でしょうか」
「スカーレット、二人で話がしたかったんだ」
二人で話したいだけで、断りもなく神官に腕を掴み、密室に連れ込んで壁ドン。
ヤバイやつだと、学園時代から薄々気づいていたけど……本当にヤバイやつだった!
神官に無断で触れるなんて罰当たりだし、女性の身体に許可なく触れるなんて犯罪者だし痴漢だし?
公爵家の子息のライリーもヤバイやつだったけど…こいつもヤバイやつだと、スカーレットは背筋にゾクゾクと嫌な寒気が走る。
「あの……こんな所じゃなくてもお話出来ますので……」
「人に聞かれたら、まだ不味いんだよ。スカーレットお前に濡れ衣を着せた犯人がわかった」
「……え?」
それは貴方達でしょう?
それかフローレンス?
そう言いかけた、スカーレットはアダムの言葉に驚く。
「スカーレットお前に濡れ衣を着せたのは、公爵令嬢のレオノーラだった」
「レオノーラ……?」
あー……なんかそんなのもいたな? 挨拶されたことがあるような、ないような。
社畜はあまり興味ないことは、仕事以外の事は覚える気がないやつである。
「その方がどうして……? それより、何故そんな事をお調べに?」
「君を神殿から救いだす為だ。大丈夫、俺がなんとしてでもスカーレット、お前をこんな所から連れ出してやる、そして貴族に戻してやる」
「え……?」
なに言ってるんでしょう? この方……。
私を神殿に入れたのも、貴族の位の剥奪に、気軽に賛成されたのも私……知っていますが。
何を突然言い出すのかと思ってみたら、なにを馬鹿な事をわざわざこんな事をして言うなんて。
「だから、安心していい、冤罪を晴らし、神殿から出たら俺がお前の事をもらってやるからな。」
「……へ?」
そうして、アダムの顔が近づいて
……あ、これはキスされると、社畜はいち早く察知して、避ける。
「スカーレット? 恥ずかしいのか? 大丈夫、誰も見ていない」
そりゃそうだろう。
お前が密室に連れ込んだ犯人……
「嫌です! はなして!」
逃げようとしたら簡単に捕まり壁に押し付けられて、またキスをしようとして……。
「助けて! だれか!」
と、叫んでも誰も来なくて、じたばたと、暴れていると。
「スカーレット、素直になって……?」
と、顔を掴まれてキスを……。
という時に、
バンっ! と、閉じられた扉が開いた。
……誰もいない、風で開いたのか?
……そして、それに萎えたのかアダムはそれ以上なにかをしようとは、しなかったけど。
スカーレットの、身体は恐怖で震えて。
アダムは、
「また来るよ」
と、一言残し帰って行った。
その場は解放されたけど、これは何の罰ゲーム?
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