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77 クレーマー
しおりを挟む訓練されたプロの社畜である元悪役令嬢スカーレットは、いつものように平民用の礼拝堂に一人残りのんびりとしていたら床に汚れが残っているのを小姑のような粗を見つけ出す観察眼で発見し、みんな作業後の最終確認しっかりしてよね?! と拭き取っていたら。
突然の元婚約者王太子サミュエルの来訪、そして頼んでも、聞いてもいないのにも関わらず何故か勝手に弱音と愚痴を語りだして、それで礼拝堂でのまったり時間を邪魔されて。
面倒だなと、多少苛立ってでも、その内飽きるか……と少し放置しておこうかなと思ったけれど……。
昔ならばそれで黙って聞いて適当にあしらってその場を辞すればそれで良いと思っていた。
だけど、スカーレットはその行為が間違いだったと、やっと気付く事が出来たから。
元婚約者である王太子サミュエルに対して、社畜なりの関わりを、持つ事にした。
叱責と罵倒という形で。
そして繰り広げられるのは今までの王太子サミュエルの自分への行いについての苦情から始まり、王太子としての重責なんて何を今さら? 私なんてお前の婚約者するにあたってどれだけ無理難題な王妃教育されたと、思ってるのか? という、元婚約者スカーレットの愚痴。
そして、誰がお前の代わりをするしないではなく、お前今まで王太子として教育されてきたんだろ? その教育費用税金なんだよ、もったいないと思わないのか? 国民舐めんな?
そしてそこまでの王太子のベテランに今さら何処かから親戚連れてきたとして、お前と比べられて可哀想だから、お前が我慢しろ。
という、理不尽な社畜論の展開。
社畜はスカーレットは今までの鬱憤をサミュエル相手に捲し立てて、精神的に徹底的に叩きのめした。
そして、お前の側近が私に暇なのか纏わりついて邪魔だからどうにかしろという要望をして、お前の婚約者なんて金輪際なにがあろうと絶対に嫌と宣言していたら。
この乙女ゲームのヒロインで義理の妹フローレンスのこれまた突然の来訪。
「なにをしていらっしゃるのですか、お姉様?」
何をしているも何も、ここは私の職場である、そしてその職場に永久就職させたのはお前だヒロインという言葉は飲み込んで。
乙女ゲームはもう終わったはずなのに、こいつら断罪後になぜ私に、悪役令嬢に、次々と頼んでもいないのにわざわざ会いに神殿に来るのか? 暇なのか……? 仕事しろ……? 本当にこの国大丈夫?
との社畜はおもって。
「……フローレンスこちらに何のご用ですか? 」
「フローレンス! 私の後を追ってきたのかい?」
当のフローレンスはなぜか。
「私のお姉様に近づかないで頂けます? サミュエルの癖に!」
と、ちょっとその言葉の意味が理解出来なかった。
私のお姉様……とは?!
お前、私の事常時嫌がらせしてくるくらいに昔から嫌いじゃん? ある意味断罪というか、色々と怒られたほうがいいのお前じゃん? と、思う相手からの何故か所有権の主張。
しかもそれ言い放った相手って、お前のヒロインのヒーローで彼氏……? 婚約者じゃ……?
なに血迷った事言ってるのこの子?!
とうとう狂った? それともこれは何かの罠か?
疑心暗鬼に陥るプロの訓練された社畜であり元悪役令嬢スカーレット。
そんなスカーレットの戸惑いなんてフローレンスは気付きもせずに、礼拝堂の入り口から走ってきて、スカーレットに抱きつくという暴挙に出る。
それに対して疑心暗鬼真っ只中の、抱きつかれてしまったスカーレットは、考えるのをやめた。
そしてこれまでの経験から、こいつらにいつも通りに取り合っていたら絶対に録な事にはならないなと確信して、もういっそのこと、全てに体当たりして自分からガンガンいくか! と決意した。
逃げてるから駄目なんだ、そう自分から攻めていこう、それはまるで社畜時代のクレーマーとの関わりのように。
逃げるから弱腰だから相手は此方を下にみてどんどん付け上がる。
だから毅然とした態度で立ち向かえばいい。
此方は何も悪い事など一切していないし、後ろめたい事など何もないのだから。
だからフローレンスに対しても社畜は精神的に叩きのめす。
今までのスカーレットのフローレンスに対する鬱憤に加えて、社会通念上の叱責も上乗せして。
それがまさかフローレンスを喜ばせているなんて社畜は知らない、まさかフローレンスがシスコンの変態だなんて、社畜は予想出来ないから。
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