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95 好きだけど
しおりを挟む二人はとても久しぶりに話をした。
最初は他愛ない話から始まって、どうしてアシェルが王宮に居るのか、どうしてスカーレットが神殿から出られたのか。
そして、今お互いがどうして居るのかゆっくり、ゆっくりと言葉を紡ぐ、そしてお互いの話を一言も聞き漏らすまいと聞きいって。
「なんだ、……私はね、君に嫌われているとばかり思っていたんだよ?」
「嫌ってなど……! 私はアシェルの事が……! 本当は……」
「……私はねスカーレット君が好きだ、君とずっと一緒に居たいと思ってる」
「っ……私もアシェルと居たいと思ってます! だから神殿に戻りましょう? 全て片付けたら、また神殿で沢山お話をして、お茶を飲んでお菓子を食べましょう? そして孤児院に遊びに行って遊ぶのです!」
「……それは嫌だな、私は王と成って君を私の妃にしたいと思っているんだ」
「へ? 妃? え?」
「神殿になんて戻ったら君に触れられないじゃないか、私は君に触れて愛したい」
「触れ……る……?」
触れるとは? だってアシェルは、神殿長で、清らかで穏やかで……?
そんな男性みたいな事をなぜアシェルが言うのかスカーレットは困惑する。
だが、スカーレットは、ふと気づく、そういえばアシェルも男性だったと、素晴らしい神上司ではなくて、穏やな田舎のおばあちゃんじゃなくて。
結ばれる事なんて絶対にないと思って、神殿で側に居られるだけでいいと思っていたから好きだけど男性として異性としては決して見ないようにしていた事を思い出して。
今は二人とも神殿を出て恋をするのは自由なのだと、スカーレットは今更に気づいた。
だってスカーレットは神殿でアシェルと二人でのんびりとお茶を飲むだけでも、すごく幸せだったから。
アシェルのその言葉にスカーレットは赤面して言葉を失う。
だって、アシェルの好きはもっと淡く清らかな好きだとスカーレットは思い込んでいたから。
まさかアシェルが、異性として女性として自分の事が好きで、触れたいと結婚したいと思っていてくれたなんて、スカーレットはそんなこと想像すらしていなくて、心臓が跳ねあがり、思考が止まる。
目が点になり呆けてしまったスカーレットをアシェルが心配して背中を擦ろうと手を伸ばしたらそれに驚いてスカーレットが。
「っひゃあ! っあ、アシェルなんで……?」
と、目を潤ませてスカーレットがアシェルを見上げて頬を赤くするから。
女性経験のないアシェルは珍しく可愛らしい反応をしたスカーレットに胸かドキドキと高鳴って目が離せない。
「アシェルは、私の事が女の子として好き? その、触れたい?」
「っあ、うん、女の子として好きだし、触れたい、スカーレットは? 私の事どう思ってる?」
「好き……でも、その男の人としては見てはいけないと思ってたから……その触れたいとか、結婚とかは、考えてなかった」
「っあー……そうだよね」
「でもきっと男の人として好き……だと思う」
「っ本当に?!」
「でも……私はアシェルの妃にはなれない、アシェルを王には出来ない、王になるのは王太子サミュエル様だから」
「……っえ? スカーレット?」
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