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97 実力
しおりを挟むスカーレットの領地に派遣されてしまった不運な者達はあまりにも過酷な労働に苦悶の表情を浮かべていた。
だがどんなにその仕事か嫌でも逃げる事など許されはしない、派遣を命じたのがあの王妃だから。
そして、現場の陣頭指揮を嬉々として先頭に立ち何故か自らも現場で働く美しい少女が怖かったから。
まだ年端もいかない美しい少女は、泥にまみれることも一切厭わずに目を輝かせ街道を補修する。
成人男性でも大変な労働なのに率先してされてしまっては自分たちが辛いと言うことさえ憚られた。
そしてその少女はいう、当事者意識を持てと。
そして自分のやっている事に責任を持てと。
そうすれば、今は辛くともすぐにやりがいが出て、もっと頑張りたくなる、ならないほうがおかしい。
そして派遣されてしまった不幸な者達は、少女によって幸福な者達へと昇華された。
やりきった感を出しつつ意気揚々とスカーレットはたった数週間で領地の補修を完了させ領地運営を始める。
現代の社畜の知識により、領地の運営は瞬く間に軌道に乗り赤字だった財政が黒字となる。
だが、領地の民にはスカーレットは大変恐れられてしまう事になったがそれはもう致し方なく。
そして、それを一部始終見せられてしまった、手伝わされ極度の過労状態となった父で元侯爵は愛娘に恐れおののくが、それはまた別のお話で。
だが、これだけは言っておきたいムスメコワイと。
貴族の令嬢として育ったはずなのに、まるでその精神は行動は軍人のようで。
それに自分にも命令してくるが己自身でも働き続けるのだ、この愛娘は。
それもほとんど休む事なんかなく、それがさも当たり前のように、不満など一切口にすることもなく、黙々と仕事をこなし続ける。
しかもその仕事振りは本気で自分の会社に引き入れたいほどに有能で、完璧だった、
まさかここまで有能だったなんて、父は予想していなくて、王妃の協力を得て来た時は大層驚いた。
あの王妃を説き伏せて支援を得るなど、宰相でも難しい事を易々とやってのけた。
そしてその支援で借りられた人員を使い潰す勢いで、慈悲もなく使い倒したのにも関わらず最終的には何故か崇拝されて帰ってきたスカーレット。
そしてあっという間に領地の経営は赤字を脱したどころか、どんどんと黒字化していく。
まるで自分の今までの苦労なんてなんの意味など無かったかのように、父は自信を失くしかけたが、いや、会社は上手くいってるし! と、持ち直す。
が、ふと思う。
これ自身が経営している会社もスカーレットに任せたら、もっと良い方向に行くのではないだろうか?
と、おもったがそこまで娘に頼る訳にはいかないなと思い直して父である元侯爵の会社の者達は救われたのだった。
もしスカーレットが社長なんかになっていたら。
社員達には地獄しか待っていなかっただろうから。
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