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46 大切な
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「は……?」
クソ親父はまるで愛しい我が子でも抱きしめるように、強く私の事を抱きしめた。
だから一瞬、頭の中が真っ白になった。
……いや、ちょっと待ってください。
え、これはいったいどうゆうことです?
全く意味がわかりません。
このクソ親父はいったい、なにをしてやがるのでしょうか。
あの日、この父親は私になんと言いました?
たしか『お前は生まれるべきではなかった』とかじゃ、ありませんでしたっけ。
なのに今さら何食わぬ顔で「大丈夫か」って、なにが大丈夫なのでしょう。
しかも人前で、フリードの前で私を抱きしめるなんて……この父親、頭でも打ちました?
それともやっぱり。
以前危惧したように、焼きが回ってしまっているのかもしれません。
「怪我はないな、フランツェスカ!? ああ無事で、お前が無事で本当によかった……!」
「……離してください」
思い切り、その腕を振り払った。
「フランツェスカ?」
私が振り払った勢いで足元をふらつかせたクソ親父は、驚いたような声を出した。
なにをそんなに驚くことがあるのでしょうか。
まさかこの私が、感動の涙でも流すとでも思っていたのでしょうか。
そんなこと絶対にありえない。
「これはいったいなんのおつもりでしょうか」
「なんのつもりって、私はお前を心配して……」
「……心配? もうお忘れになられたのですか、ご自分が言ったことを。貴方は私に言いましたよね『お前は生まれるべきではなかった』と。なのにいまさらのこのこ現れて父親ヅラですか? いい加減にしてください、私があの時どんな気持ちで……!」
クソ親父の顔が悲しげに歪む。
いまさらそんな顔したところで許せるわけがないし、私の心の傷は消えてなくならない。
「あれは……」
「……あの時、私がどんな気持ちだったのか貴方にはわからないでしょうね。わかっていたらあんなこと……実の娘に言えるはずがありません」
「あれには理由があったんだ、だから少し話を……」
「それがどんな理由であれ、あんな言葉を娘に向ける父親なんて最低です。話を聞くつもりはありません。さっさとモルゲンロートに帰ってください、迷惑です」
声が震える。
怒っているのに、胸が苦しくて目から涙が零れそうになる。
「フランツェスカ、すまない……」
そしてクソ親父は私になにか言おうとして口を開きかけた。
けれど、なにを言えばいいのか悩んでるみたいに謝罪の言葉だけ口にして後は飲み込んでいた。
それ以上の言葉が出てこないらしい。
酷い事を言ったと、この人自身も今はわかっているのでしょう。
――その時。
フリードの身体が、ふらりと傾いた。
よく見てみるとフリードの顔色は紙のように真っ青で、肩口からは血が止まらず流れ続けていた。
「フリード!?」
「だ、大丈夫です。少し……目眩がしただけで……」
そう言った瞬間、フリードの膝が崩れ落ちる。
私は慌てて、その身体を抱きとめた。
「フリード……っ、しっかりしてください!」
そう呼びかけながら、私は必死にフリードの肩の傷を押さえた。
すると指の隙間から温かい血が溢れて、掌が真っ赤に染まる。
「そんな顔しないでください、大丈夫ですから」
「どこが大丈夫なのですか! 誰か、医者を……血が止まっていなかったのなら、早く言ってください……! 言ってくれたらこんな悠長に話してなど……」
そして指先に伝わる温もりがどんどん冷たくなっていくような気がして、手が震えた。
「これくらいの怪我はかすり傷のようなものです、だから……大丈夫です、心配には及びません」
掠れた声で、フリードは笑みを浮かべた。
その微笑みは、胸が痛くなるほど優しかった。
「う、嘘です! こんなに血が……! 私のせいで……」
「フランツェスカ、気にしないでください。貴女が、無事なら、私はそれで……いいのです」
フリードの薄氷のような青い瞳が、僅かに細められる。
痛みに顔を歪ませながらも微笑みを浮かべるフリード。
その笑顔には、私に対する気遣いだけが滲んでいた。
……私はずっと素っ気ない態度で冷たくしていたのに。
この人は、本気で私を守ろうとした。
その事実が、痛いほどに胸に突き刺さった。
あのとき「愛するつもりはない」と言ったフリードの言葉を思い出し、胸が苦しくなった。
わかってる。
フリードにも聞いたからわかってる。
あの言葉は別に本気じゃなくて、敵国の王女と結婚したくなかったから、破談にする為に言ったことだって。
なのに私はずっと冷たい態度を取り続けた、子どもみたいに意地を張って。
「――今すぐ医師を手配するようにシュバルツバルトの王宮に伝えろ! すぐにだ! フランツェスカお前も王太子の傷をしっかり圧迫しておいてやれ」
騎士達に指示を出す声は、国王としてのそれだった。
「貴方なんかに言われなくてもさっきからやっております! なんなのですか貴方は、偉そうに……!」
怒鳴り返しながらも、私は必死にフリードの傷を押さえた。
「……フランツェスカ。私に言いたいことが山ほどあるだろうが、今は彼を助けることだけを考えなさい、大切なのだろう?」
「そんなの当たり前です! この人は私の……大切な夫なのですから!」
そんなこと言われなくてもわかっている、今はフリードの命の助けるのが先。
怒るのも、泣くのも全部。
――フリードが助かった後でいいのだから。
「は……?」
クソ親父はまるで愛しい我が子でも抱きしめるように、強く私の事を抱きしめた。
だから一瞬、頭の中が真っ白になった。
……いや、ちょっと待ってください。
え、これはいったいどうゆうことです?
全く意味がわかりません。
このクソ親父はいったい、なにをしてやがるのでしょうか。
あの日、この父親は私になんと言いました?
たしか『お前は生まれるべきではなかった』とかじゃ、ありませんでしたっけ。
なのに今さら何食わぬ顔で「大丈夫か」って、なにが大丈夫なのでしょう。
しかも人前で、フリードの前で私を抱きしめるなんて……この父親、頭でも打ちました?
それともやっぱり。
以前危惧したように、焼きが回ってしまっているのかもしれません。
「怪我はないな、フランツェスカ!? ああ無事で、お前が無事で本当によかった……!」
「……離してください」
思い切り、その腕を振り払った。
「フランツェスカ?」
私が振り払った勢いで足元をふらつかせたクソ親父は、驚いたような声を出した。
なにをそんなに驚くことがあるのでしょうか。
まさかこの私が、感動の涙でも流すとでも思っていたのでしょうか。
そんなこと絶対にありえない。
「これはいったいなんのおつもりでしょうか」
「なんのつもりって、私はお前を心配して……」
「……心配? もうお忘れになられたのですか、ご自分が言ったことを。貴方は私に言いましたよね『お前は生まれるべきではなかった』と。なのにいまさらのこのこ現れて父親ヅラですか? いい加減にしてください、私があの時どんな気持ちで……!」
クソ親父の顔が悲しげに歪む。
いまさらそんな顔したところで許せるわけがないし、私の心の傷は消えてなくならない。
「あれは……」
「……あの時、私がどんな気持ちだったのか貴方にはわからないでしょうね。わかっていたらあんなこと……実の娘に言えるはずがありません」
「あれには理由があったんだ、だから少し話を……」
「それがどんな理由であれ、あんな言葉を娘に向ける父親なんて最低です。話を聞くつもりはありません。さっさとモルゲンロートに帰ってください、迷惑です」
声が震える。
怒っているのに、胸が苦しくて目から涙が零れそうになる。
「フランツェスカ、すまない……」
そしてクソ親父は私になにか言おうとして口を開きかけた。
けれど、なにを言えばいいのか悩んでるみたいに謝罪の言葉だけ口にして後は飲み込んでいた。
それ以上の言葉が出てこないらしい。
酷い事を言ったと、この人自身も今はわかっているのでしょう。
――その時。
フリードの身体が、ふらりと傾いた。
よく見てみるとフリードの顔色は紙のように真っ青で、肩口からは血が止まらず流れ続けていた。
「フリード!?」
「だ、大丈夫です。少し……目眩がしただけで……」
そう言った瞬間、フリードの膝が崩れ落ちる。
私は慌てて、その身体を抱きとめた。
「フリード……っ、しっかりしてください!」
そう呼びかけながら、私は必死にフリードの肩の傷を押さえた。
すると指の隙間から温かい血が溢れて、掌が真っ赤に染まる。
「そんな顔しないでください、大丈夫ですから」
「どこが大丈夫なのですか! 誰か、医者を……血が止まっていなかったのなら、早く言ってください……! 言ってくれたらこんな悠長に話してなど……」
そして指先に伝わる温もりがどんどん冷たくなっていくような気がして、手が震えた。
「これくらいの怪我はかすり傷のようなものです、だから……大丈夫です、心配には及びません」
掠れた声で、フリードは笑みを浮かべた。
その微笑みは、胸が痛くなるほど優しかった。
「う、嘘です! こんなに血が……! 私のせいで……」
「フランツェスカ、気にしないでください。貴女が、無事なら、私はそれで……いいのです」
フリードの薄氷のような青い瞳が、僅かに細められる。
痛みに顔を歪ませながらも微笑みを浮かべるフリード。
その笑顔には、私に対する気遣いだけが滲んでいた。
……私はずっと素っ気ない態度で冷たくしていたのに。
この人は、本気で私を守ろうとした。
その事実が、痛いほどに胸に突き刺さった。
あのとき「愛するつもりはない」と言ったフリードの言葉を思い出し、胸が苦しくなった。
わかってる。
フリードにも聞いたからわかってる。
あの言葉は別に本気じゃなくて、敵国の王女と結婚したくなかったから、破談にする為に言ったことだって。
なのに私はずっと冷たい態度を取り続けた、子どもみたいに意地を張って。
「――今すぐ医師を手配するようにシュバルツバルトの王宮に伝えろ! すぐにだ! フランツェスカお前も王太子の傷をしっかり圧迫しておいてやれ」
騎士達に指示を出す声は、国王としてのそれだった。
「貴方なんかに言われなくてもさっきからやっております! なんなのですか貴方は、偉そうに……!」
怒鳴り返しながらも、私は必死にフリードの傷を押さえた。
「……フランツェスカ。私に言いたいことが山ほどあるだろうが、今は彼を助けることだけを考えなさい、大切なのだろう?」
「そんなの当たり前です! この人は私の……大切な夫なのですから!」
そんなこと言われなくてもわかっている、今はフリードの命の助けるのが先。
怒るのも、泣くのも全部。
――フリードが助かった後でいいのだから。
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