【完結】虐げられる令嬢は一夜の過ちを隠す。溺れるような愛を君に。

千紫万紅

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25 お戯れ?



「なので、その……カシウス様? 無理して私のこと好きとかおっしゃられなくても大丈夫ですよ! いっその事、何も無かった事にして頂いても構いません!」

「え……」

 よかった、本当によかった。

 私は皇太子殿下を襲っていなかった……!

 これで断頭台は免れますし、それにこの事が両親にバレた所で皇太子殿下のお戯れで済みます。

「カシウス様が責任を感じられる必要はどこにもございません! あれはただの一夜の過ち……ですので!」

「何も無かったことに?」

「はい! なのでついお戯れに抱かれました私のことを『好き』だなんて嘘を、カシウス様が気を遣っておっしゃられなくても大丈夫です! ちゃんと私わかっておりますので……!」

「嘘? 戯れって……」

「あ、ですので私はもう帰りますね? 来月結婚するので……婚約者のお屋敷に明日から入って花嫁修業をするのです!」

 皇太子殿下であるカシウス様が、私を好きになるだなんて事は絶対になくて。

 カシウス様にお戯れに一度抱かれたからといって、自惚れを持つほど私は馬鹿じゃありません。

 だからこれ以上カシウス様と一緒にいてはイケナイ、その優しさに勘違いをしてしまう。

 ……そして期待をして、しまうから。

「ねえアンジェリーク。君が私に言いたいことは、それだけ?」

 座らされていた寝台から立ち上がり、帰ろうとすればカシウス様に声をかけられて。

 手を掴まれた。

「え、はい? あの、カシウス様……」

 いったいどうされたのかと振り返った先にいたカシウス様は、笑っていなかった。

 さっきまで優しく微笑んでいらしたのに。

「……覚えてない、ならもう一度、あの夜のように君を一晩中愛せばそれで済む話」

「もう一度って……え!?」

 掴んだ私の腕をカシウス様は引き寄せられて。

 私をその腕の中に収められました。

「この言葉、想い……全て本物だと君にわからせてあげようね、アンジェリーク? 一夜の過ちだなんて言わせない、何も無かった事になんて絶対にさせない」

「え、カシウス様……!? ちょっ……あの……」

「逃がさない。他の男の妻になるなんて許せない。君が私を嫌いでも、私はアンジェリークを愛している」

「あ、愛っ……!?」

 あのカシウス様が。

 皇太子殿下が。

 私の事を『愛してる』?

「だからごめんねアンジェリーク? 君がその婚約者のことが好きでも結婚させてあげられないし、逃がしてあげられない、だから私のこと恨んでもいいよ……本当は好きになって欲しいけど」

 私がオーギュスト様を好き……?

 天変地異が起こってもあり得ないです、あの方のこと殺したいくらい大嫌いなのに。

 それに、カシウス様のなにを恨めと!?

「カシウス様、あの……待って下さい! ちょっと私、この状況が理解出来なくてですね!?」

「だめ、待てない」

 そう言ったカシウス様は、私のことを寝台の上にゆっくりと押し倒されました。

「かっ……カシウス様……?」

「泣いて叫んでも絶対に止めてあげないからね?」

 そしてカシウス様は。

 にっこりと穏やかに微笑まれた。

 

 
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