25 / 35
25 お戯れ?
「なので、その……カシウス様? 無理して私のこと好きとかおっしゃられなくても大丈夫ですよ! いっその事、何も無かった事にして頂いても構いません!」
「え……」
よかった、本当によかった。
私は皇太子殿下を襲っていなかった……!
これで断頭台は免れますし、それにこの事が両親にバレた所で皇太子殿下のお戯れで済みます。
「カシウス様が責任を感じられる必要はどこにもございません! あれはただの一夜の過ち……ですので!」
「何も無かったことに?」
「はい! なのでついお戯れに抱かれました私のことを『好き』だなんて嘘を、カシウス様が気を遣っておっしゃられなくても大丈夫です! ちゃんと私わかっておりますので……!」
「嘘? 戯れって……」
「あ、ですので私はもう帰りますね? 来月結婚するので……婚約者のお屋敷に明日から入って花嫁修業をするのです!」
皇太子殿下であるカシウス様が、私を好きになるだなんて事は絶対になくて。
カシウス様にお戯れに一度抱かれたからといって、自惚れを持つほど私は馬鹿じゃありません。
だからこれ以上カシウス様と一緒にいてはイケナイ、その優しさに勘違いをしてしまう。
……そして期待をして、しまうから。
「ねえアンジェリーク。君が私に言いたいことは、それだけ?」
座らされていた寝台から立ち上がり、帰ろうとすればカシウス様に声をかけられて。
手を掴まれた。
「え、はい? あの、カシウス様……」
いったいどうされたのかと振り返った先にいたカシウス様は、笑っていなかった。
さっきまで優しく微笑んでいらしたのに。
「……覚えてない、ならもう一度、あの夜のように君を一晩中愛せばそれで済む話」
「もう一度って……え!?」
掴んだ私の腕をカシウス様は引き寄せられて。
私をその腕の中に収められました。
「この言葉、想い……全て本物だと君にわからせてあげようね、アンジェリーク? 一夜の過ちだなんて言わせない、何も無かった事になんて絶対にさせない」
「え、カシウス様……!? ちょっ……あの……」
「逃がさない。他の男の妻になるなんて許せない。君が私を嫌いでも、私はアンジェリークを愛している」
「あ、愛っ……!?」
あのカシウス様が。
皇太子殿下が。
私の事を『愛してる』?
「だからごめんねアンジェリーク? 君がその婚約者のことが好きでも結婚させてあげられないし、逃がしてあげられない、だから私のこと恨んでもいいよ……本当は好きになって欲しいけど」
私がオーギュスト様を好き……?
天変地異が起こってもあり得ないです、あの方のこと殺したいくらい大嫌いなのに。
それに、カシウス様のなにを恨めと!?
「カシウス様、あの……待って下さい! ちょっと私、この状況が理解出来なくてですね!?」
「だめ、待てない」
そう言ったカシウス様は、私のことを寝台の上にゆっくりと押し倒されました。
「かっ……カシウス様……?」
「泣いて叫んでも絶対に止めてあげないからね?」
そしてカシウス様は。
にっこりと穏やかに微笑まれた。
あなたにおすすめの小説
兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした
こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】
伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。
しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。
そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。
運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた――
けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった――
※「小説家になろう」にも投稿しています。
一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。
甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。
だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。
それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。
後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース…
身体から始まる恋愛模様◎
※タイトル一部変更しました。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話
ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。
リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。
婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。
どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。
死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて……
※正常な人があまりいない話です。
ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります
奏音 美都
恋愛
ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私のご婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私はご婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。
そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。
それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。
初恋をこじらせたやさぐれメイドは、振られたはずの騎士さまに求婚されました。
石河 翠
恋愛
騎士団の寮でメイドとして働いている主人公。彼女にちょっかいをかけてくる騎士がいるものの、彼女は彼をあっさりといなしていた。それというのも、彼女は5年前に彼に振られてしまっていたからだ。ところが、彼女を振ったはずの騎士から突然求婚されてしまう。しかも彼は、「振ったつもりはなかった」のだと言い始めて……。
色気たっぷりのイケメンのくせに、大事な部分がポンコツなダメンズ騎士と、初恋をこじらせたあげくやさぐれてしまったメイドの恋物語。
*この作品のヒーローはダメンズ、ヒロインはダメンズ好きです。苦手な方はご注意ください
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。