その悪役令嬢の中身は社畜です。聖女と崇められておりますがその中身は社畜です。大事なことなので二度言いました。

千紫万紅

文字の大きさ
4 / 6

4 アットホームな職場、チームワークを大切にしています

しおりを挟む
4



 入室の許可をいただき。
 案内してくれた神官さんの後に続いて神殿長室へと足を踏み入れた。

 面接なんて何年ぶりだろう。
 久しぶり過ぎて動悸がしてきたが……大丈夫。
 圧迫面接には就職活動でもう慣れているし、上司からの意味のない叱責の方が何倍も精神を削られる。
 
「君が、スカーレット……か」

 頭のてっぺんから足元まで、じっくり観察されました。
 
 はい、そうです。
 私がスカーレットです。中身は社畜ですが。

「はい。よろしくお願いいたします」

 許可が出るまで、じっと目は伏せたまま。
 
 敵意はございません。
 攻撃の意図はありません。
 ……と、動物的本能で訴えかけます。

「……そう。ああ、顔をあげて大丈夫、今日から君も女神シャダン様に仕える私たちの家族だからね」

 家族といえば家族経営。
 アットホームな職場、チームワークを大切にしています。

 つまり、ブラック確定。
 これは間違いなく黒い!
 真っ黒です!

 社畜センサーが盛大に反応し、私の心の中の社畜はガッツポーズをした。
 
 
 そしてこれだ、この感じ。
 これこそ私の生きる環境だと、私の中の社畜がここはヤベェと歓喜する。

 新天地への期待で胸がドキドキしている。
 大丈夫、たぶんこれは過労の動悸じゃないはずだ。

 だって私はこの日のために寝溜めして、食いだめして、心身を整えてきたのだから!
 今日からの修行という名の労働を一日でも長く生き抜くために!
 
 ――神殿長の言葉に従い、伏せていた顔を上げる。
 それでも決して相手の目を見てはならない。

 現実ならネクタイの結び目を見るのが礼儀だけど神殿長はスーツじゃない。
 なので首より少し下あたりを見つめる。
 うん、完璧なビジネスマナー。
 
 ……それでもわかってしまう、
 この人、顔が良すぎる。
 
 まるで神が創り出したような整った顔立ち。
 純白の神官服に包まれたその姿は、もはや神そのもの。

 ああなんと素晴らしい営業担当。
 いや、広告塔なのだろう。

 この人がポスターに載っていたら、信者五割増しは確定。
 お布施もわんさかいただけるだろう。
 
 さすが乙女ゲームの世界!
 営業にもビジュアルが求められる時代だ。

 薄い水色の髪もこの世界ならでは。
 そして品のある微笑み。
 
 金髪縦ロールの私とは、格が違う。
 いや、格どころかジャンルが違う。
 美しさの暴力だ。

 さすが乙女ゲームの世界だ!

 ――営業は第一印象が命。
 見た瞬間に信頼を勝ち取るその容姿、この人プロだ……!

 尊敬と畏怖の入り混じった気持ちで見つめていると、神殿長が静かに言った。

「うん、君の話しは聞いてるよ、君は一生、ここで暮らすことになるのだけれど……それは理解しているのかな?」

「はい、理解しております」

「……そうか。では、まず神官服に着替えてもらいたい。それから君の部屋へ案内するよ」

「はい、よろしくお願いいたします」

「では、私に着いてきて。神殿の中も少し案内しよう。君の話も聞いてみたいからね」

「かしこまりました、よろしくお願いいたします」

 ――まずは制服支給。
 つまり神官服への着替え。
 
 会社で言えば、社章付きスーツの貸与で社員としての意識付け。
 これで正式に社員……いや、神官の一員ということか。

 そして社員寮。
 個室か相部屋か、それはかなり死活問題。
 できれば一人部屋がいいところだけど、我が儘は言えないし。
 
 さらに事情聴取?
 いやこれは追加面接か?
 
 そして、お待ちかねのオリエンテーション!
 
 次々とスケジュールが立ち上がっていく。
 もうやることがいっぱいだ!

 期待に胸を膨らませながら、私は思う。

 ――今日から始まる社畜(神官)生活。
 どんな地獄が待っているのか、ワクワクしている自分がいるのが一番恐ろしいと。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

いや、無理。 (本編完結)

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。 一旦完結にしましたが、他者視点を随時更新の間連載中に戻します。 もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、 「わかってくれるだろう?ミーナ」 と手を差し伸べた。 だから私はこう答えた。 「いや、無理」 と。

平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました

Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。 伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。 理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。 これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。 私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~

絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

処理中です...