その悪役令嬢の中身は社畜です。聖女と崇められておりますがその中身は社畜です。大事なことなので二度言いました。

千紫万紅

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3 これは黒い、真っ黒だなぁ

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 自慢の金髪縦ロールをバッサリ切られた。
 しかもメイドの手で雑に。

 そしてドレスも宝石も没収され、質素なワンピース姿に着替えさせられ。
 カバンひとつをポイッと渡され、私は無言で馬車に押し込まれた。

 向かう先は、そう神殿。
 
 で、やってまいりました。
 
 女神シャダンを奉る、我が国の宗教シェアNo.1神殿へ!
 
 なんというか……気分はまるで入社式!?

 髪を整えられて、リクルートスーツ!

 ここで私は死ぬまで奉仕し。
 魂を削って畜生のような生活を送る。

 ここは会社……もとい、神殿!

 見上げれば、眩しいほどに美しい純白の建物。
 なかなかに立派な外観を見ただけで私にはわかってしまう。

 これは社員(神官)への還元なんて全くしていないタイプの組織だと。
 
 うん、プロの社畜として私は察知しました。
 これは間違いなく、過労死不可避!
 やったね!
 
 ああ、なんて素晴らしい終の棲家。
 心が躍りますね!

 ……しかも、しかもですよ?
 神殿なので恋愛禁止、結婚も禁止。
 つまり産休・育休・扶養手当の概念が完全にゼロ。まるっきりゼロ!

 なんという完全ブラック企業。

 これは黒い、真っ黒だなぁ。

 真っ白に輝く神殿ほど、内情は真っ黒。
 そう思ったら、なぜか少しだけ目元が潤んだ。

 では、確認事項といたしまして。

 社長は女神シャダン様。
 広報も女神シャダン様。
 商品(祝福)も社長のご提供。
 つまり完全ワンマン経営!
 
 ……あ、これ。
 上司の気分ひとつで天罰が飛んでくるやつだ。
 こわやこわや。

 さぁて。
 転生社畜で悪役令嬢のスカーレット、ここに入社(出家)いたします。

 馬車を降り、神殿の前で立ち止まる。
 逃げようと思えば逃げられる気もした。
 
 けれど十代の少女がお金もコネもなく、ひとりで生きていけるほどこの世界は甘くない。
 ……これでも元社会人。世の中の厳しさは心得ている。

 なので言われたとおり、指示された通りに。
 神殿の扉を開けて、最初に見えた神官へ声をかけた。
 
「お忙しい所、失礼致します。本日よりこちらでお世話になりますスカーレットと、申します……」
 
 掃除中の灰色の神官服を着た男性が顔を上げる。

「君は、新しい人……えと。そうだね、神殿長のところ……まず行こうか?」

「はい、場所を教えていただけますか?」

「あ、いいよ。案内する。おいで」

「はい、ありがとうございます!」

 ……ありゃ、思ったより優しい。
 ちょっとだけホッとしながら、彼の後をついて広い神殿内を歩く。

 そうして神殿長の所まで案内して頂いた。

「ここが神殿長室、ちょっとまってね」

 コンコンコンコン……。

「はい、誰かな?」

 中から、落ち着いた男の声がした。
 優しそうな声音、意外とブラックじゃない?
 
「新しい神官が来ました、えっと名前は……」
 
「スカーレットです!」

「スカーレットらしいです、神殿長」

「ああ……話しは聞いてる。どうぞ。入って」

 名を告げると。
 先程までの優しい声音ではなく少し厳しい声音に変化した。

 悪い噂も届いていると瞬時にそう判断し、私は静かに息を整えたのです。
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