タチバナ

箕面四季

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あの日の真実

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 ナツキはいびきを立てて眠る春ちゃんの、ワックスやら何やらでベタベタの髪を一晩中寝ないでずっと撫でてたんだよ。
 ナツキはすごく悩んでいたんだ。

 でも、ナツキは決意したんだよ。
 それで、僕に春ちゃんを託したんだ。

「春ちゃんにはたくさんの選択肢があるから。春ちゃんが望む家族を作れる人がこの世界のどこかにいるはずだから。だからギズモ、春ちゃんのことをよろしくね」って。

 ねえ、春ちゃん、聞いて。

 僕は「キュ、キュイキュイ」と小ジャンプを繰り返した。
 だけど春ちゃんに僕の声は届かない。

「心配いらないわ。ナツに任せて」
 ミミちゃんが僕を優しくなだめるのと、ずっと黙っていたナツさんが口を開いたのはほぼ同時だった。

「僕は大学で昆虫学の講師をしています。僕は子供の頃から昆虫が好きでした。フィールドワークに出かけて珍しい昆虫に出会った時などはトキメキます。昆虫を愛おしく思う気持ちもあります。ですが僕はアセクシュアルなので、いわゆる恋愛感情と言うものがありません。そのため春ちゃんさんの気持ちが理解できると言ったらうそになります。けれど、一つだけ確かなことがあります」

 真っ赤な目をした春ちゃんが、顔を上げる。
 腫れあがった両目で「確かなこと?」と子どもみたいに尋ねた。
 ナツさんは春ちゃんの前に小さなカードをスッと差し出し、ナツキみたいに微笑んだ。

「相手の気持ちは相手に直接聞かなければわからない、ということです」
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