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神明神社
水盤のキメラ蝶
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「つか、すげぇよな。こんなん初めて見た。うわ、手触りまで再現してる! やべっ、鳥肌立ってきた」
気を取り直したように優太君が明るく言って、黄緑色の幼虫狛犬をぺちぺち触っている。
「ダメほたるも触ってみ」
(ええ~~)
優太君に勧められて断るわけにも行かず、ほたるも幼虫狛犬にこわごわ触れてみる。
ぶよん。
硬めの水風船みたいな、不思議な弾力があった。新感覚の触り心地。
「うわっ、なにこれ。気持ちいい~」
「だろ? このぶにぶにな感じ、本物のイモムシの手触りとそっくりだぜ」
「え……」
ぞわっとなって、ほたるはひっそりと手を離した。そんなほたるの様子など気づかず、優太君は興奮しっぱなしのご様子だ。
「ルナモスの幼虫は触ったことないけどさ、きっとこんなんなんだろーなぁ。あっちの幼虫は終齢幼虫の色を再現してて、めっちゃ凝ってるよ。すげぇぜ、神明神社」
その時、ふわふわ、と何かがほたるたちの前を横切っていった。
「あ、チョウチョ。あっちにも」
いつの間にか、晴れ渡った境内をパレットに、絵の具を散りばめたみたいに、色鮮やかな無数の蝶たちが飛び回っている。
あっちで、ひらひら、こっちで、ひらひら。気持ちよさそう。
まるでファンタジーの世界に迷い込んだような景色。
燃えるような赤、木漏れ日の金、日の光をいっぱいに浴びて育ったオレンジの色。
宝石色に輝くコバルトブルーやエメラルドグリーンも。
黒曜石のようなすべすべした漆黒の羽のものもいる。
「あっ!!」と、優太君が、また、何かを見つけて走り出す。
背中で紫色のランドセルがカタカタと音を立てていた。
さっき参道を登るときも思ったけれど、優太君はかなり足が速い。
名門私立小学校に通っているし、ガリ勉でひ弱な小学生かと思ったら、案外スポーツが得意なのかも。
昔の篤と同じく、勉強も運動も得意な子だな。
(って、あたし、また篤のこと考えてる!)
やっぱり最近、なんか変かも。
「ダメほたる、遅えぞ。こっち、こっち!」
「優太君が速いのよ」
気持ちを払いのけるように、小走りに優太君のところへ向かうと、ちょろちょろ涼し気な水音を奏でる手水舎があった。
「うわぁ~」
その光景に、思わずため息が漏れる。
大きめのバスタブみたいな四角い水盤の水面を、黄色や赤や紫など、色彩豊かな花々が彩っている。
まるでハーバリウムのような、見るからに瑞々しい花々の蜜を求めて、多種多様の色鮮やかな蝶たちが飛び回り、お気に入りの花の蜜を吸っていた。
水盤の上に掛けられた杓子も若葉色をしたスイレンの葉っぱの形をしていて、すっごく可愛い。親指姫が乗った蓮の葉っぱにそっくりだ。
まるで、おとぎ話の挿絵のよう。
その、水盤の中央でちょろちょろと清らかな水を流している部分、通常なら龍が口を開けている吐水龍の部位は、なんとも奇妙な蝶がついていた。
焦げ茶色の羽に、雨上がりの水たまりみたいなオレンジ色の模様の蝶。
一見地味目な蝶だけど、その顔が変わっている。
「ねえ、優太君。この蝶、カラスのくちばしがついてるよ」
その蝶には、くるりんと丸まったストローの口の代わりに、三角形に尖ったカラスのくちばしがついていた。
おそらく空想の生き物なのだろうと、ほたるは推測する。
「カラスと蝶のキメラかな? 龍とか麒麟とか、鳳凰とか、そういう霊獣の仲間みたいなもの?」
「何言ってんだよ」と優太君が呆れる。
「ただのテングチョウじゃんか」
「テングチョウ? 天狗と蝶のキメラ? 有名な霊獣なの?」
「あのなー。テングチョウは実在するチョウ! タテハチョウのなかまで、わりと一般的なチョウだよ。神明市でも結構飛んでるぞ。ダメほたるの実家らへんだったら、うじゃうじゃいたんじゃね?」
「うそ!」
こんな変な口をした蝶が、うじゃうじゃ?
「お、そうだ! 霊獣繋がりでいいこと教えてやるよ」
優太君が偉そうに、えへんと咳払いをする。
「ダメほたるがさっき言ってた、龍とか麒麟とか鳳凰みたいな霊獣は、あ、あと霊亀を合わせて四霊獣な。それって実は全部『むし』なんだぜ」
気を取り直したように優太君が明るく言って、黄緑色の幼虫狛犬をぺちぺち触っている。
「ダメほたるも触ってみ」
(ええ~~)
優太君に勧められて断るわけにも行かず、ほたるも幼虫狛犬にこわごわ触れてみる。
ぶよん。
硬めの水風船みたいな、不思議な弾力があった。新感覚の触り心地。
「うわっ、なにこれ。気持ちいい~」
「だろ? このぶにぶにな感じ、本物のイモムシの手触りとそっくりだぜ」
「え……」
ぞわっとなって、ほたるはひっそりと手を離した。そんなほたるの様子など気づかず、優太君は興奮しっぱなしのご様子だ。
「ルナモスの幼虫は触ったことないけどさ、きっとこんなんなんだろーなぁ。あっちの幼虫は終齢幼虫の色を再現してて、めっちゃ凝ってるよ。すげぇぜ、神明神社」
その時、ふわふわ、と何かがほたるたちの前を横切っていった。
「あ、チョウチョ。あっちにも」
いつの間にか、晴れ渡った境内をパレットに、絵の具を散りばめたみたいに、色鮮やかな無数の蝶たちが飛び回っている。
あっちで、ひらひら、こっちで、ひらひら。気持ちよさそう。
まるでファンタジーの世界に迷い込んだような景色。
燃えるような赤、木漏れ日の金、日の光をいっぱいに浴びて育ったオレンジの色。
宝石色に輝くコバルトブルーやエメラルドグリーンも。
黒曜石のようなすべすべした漆黒の羽のものもいる。
「あっ!!」と、優太君が、また、何かを見つけて走り出す。
背中で紫色のランドセルがカタカタと音を立てていた。
さっき参道を登るときも思ったけれど、優太君はかなり足が速い。
名門私立小学校に通っているし、ガリ勉でひ弱な小学生かと思ったら、案外スポーツが得意なのかも。
昔の篤と同じく、勉強も運動も得意な子だな。
(って、あたし、また篤のこと考えてる!)
やっぱり最近、なんか変かも。
「ダメほたる、遅えぞ。こっち、こっち!」
「優太君が速いのよ」
気持ちを払いのけるように、小走りに優太君のところへ向かうと、ちょろちょろ涼し気な水音を奏でる手水舎があった。
「うわぁ~」
その光景に、思わずため息が漏れる。
大きめのバスタブみたいな四角い水盤の水面を、黄色や赤や紫など、色彩豊かな花々が彩っている。
まるでハーバリウムのような、見るからに瑞々しい花々の蜜を求めて、多種多様の色鮮やかな蝶たちが飛び回り、お気に入りの花の蜜を吸っていた。
水盤の上に掛けられた杓子も若葉色をしたスイレンの葉っぱの形をしていて、すっごく可愛い。親指姫が乗った蓮の葉っぱにそっくりだ。
まるで、おとぎ話の挿絵のよう。
その、水盤の中央でちょろちょろと清らかな水を流している部分、通常なら龍が口を開けている吐水龍の部位は、なんとも奇妙な蝶がついていた。
焦げ茶色の羽に、雨上がりの水たまりみたいなオレンジ色の模様の蝶。
一見地味目な蝶だけど、その顔が変わっている。
「ねえ、優太君。この蝶、カラスのくちばしがついてるよ」
その蝶には、くるりんと丸まったストローの口の代わりに、三角形に尖ったカラスのくちばしがついていた。
おそらく空想の生き物なのだろうと、ほたるは推測する。
「カラスと蝶のキメラかな? 龍とか麒麟とか、鳳凰とか、そういう霊獣の仲間みたいなもの?」
「何言ってんだよ」と優太君が呆れる。
「ただのテングチョウじゃんか」
「テングチョウ? 天狗と蝶のキメラ? 有名な霊獣なの?」
「あのなー。テングチョウは実在するチョウ! タテハチョウのなかまで、わりと一般的なチョウだよ。神明市でも結構飛んでるぞ。ダメほたるの実家らへんだったら、うじゃうじゃいたんじゃね?」
「うそ!」
こんな変な口をした蝶が、うじゃうじゃ?
「お、そうだ! 霊獣繋がりでいいこと教えてやるよ」
優太君が偉そうに、えへんと咳払いをする。
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