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神明神社
優太先生の虫講義
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「つまりだな」と、優太君は、近くに落ちていた木の枝を拾って、足元の硬い地面に『虫』と書いた。
(別に聞いてないんだけど)
苦笑交じりに、ほたるは『虫』の文字を見る。
「まず第一に、小学校で習う、この『虫』って漢字は、元々マムシを意味していたんだな」
「マムシって、毒蛇の?」
「そう。ほら、『虫』の漢字ってさ、象形文字にすると、こんな感じで……『虫』の四角の部分がマムシの頭に見えるだろ。んで、真ん中の縦棒と下の横棒にチョンってところがさ、くねくねしたヘビの体に見えねぇ?」
「あ、本当だ」
「つまり『虫』は、大きな頭をした毒蛇の絵を漢字にしたもので、元々は、今みたいな虫のことじゃなかったんだよ」
「へえ~」
「で、この『虫』の漢字を三つ並べた『むし』……これ、この『蟲』って漢字」
「優太君、よくそんな難しい漢字知ってるね」
「オレ、ダメほたると違って賢いから。んで、この『蟲』の漢字には、ありとあらゆる動物が含まれるんだよ」
ダメほたると違って、が、余計なんですけど。
ここは、なめられないよう、賢いところを見せつけないと。
「はい!」とほたるは手を挙げた。
「じゃあ、ダメほたるさん」
「先生、ダメが余計です」
「細かいことは気にせず、どうぞ」
「細かくはないですが。ええと、さっき優太先生の言った、『ありとあらゆる動物』というのは、つまり植物と動物に大別した時の、虫とか魚とかを含む動物のことでしょうか」
「おっ、ダメほたるさんにしては正解です」
「こう見えて女子大生なので。てゆーか、ダメほたるさんにしては、が、余計です」
「んじゃ続きな」
するっとスルーして、優太先生が続ける。
「えっと……古代中国では、 ありとあらゆる動物を、鱗のある鱗蟲、毛のある毛蟲、羽のある羽蟲、甲羅のある甲蟲の4つに分類してたんだ」
優太君は、『蟲』と書いた文字から放射状に四つの線を引いて、それぞれの先に『鱗蟲』『毛蟲』『羽蟲』『甲蟲』と、付け足していった。
(小4なのに、鱗がさらりと書けるとは、末恐ろしい子)
さすがは名門私立の小学生。頭のデキが違う。
しかも、達筆なんですけど。
この子と競うのは、もうやめよう。
「この、『鱗蟲』の長、つまり一番偉い奴が蛟竜なんだ。んで、『毛蟲』の長が麒麟。それから『羽蟲』の長が鳳凰、でもって『甲蟲』の長が霊亀なんだ。つまり」
トントン、と地面の漢字を指さして、優太君がニヤリとした。
「霊獣たちは、全部『蟲』。な、『むし』だろ?」
「ああ、なるほど」
神明大学のダニー講師と同じく、ためになるのか、ならないのかわからない、優太先生の虫講義、これにて終了。
「ま、それだけ、虫っていうのは、たっくさんの意味を含んだ神聖な生き物ってことなんだよ」
「神聖な生き物ねぇ」
(別に聞いてないんだけど)
苦笑交じりに、ほたるは『虫』の文字を見る。
「まず第一に、小学校で習う、この『虫』って漢字は、元々マムシを意味していたんだな」
「マムシって、毒蛇の?」
「そう。ほら、『虫』の漢字ってさ、象形文字にすると、こんな感じで……『虫』の四角の部分がマムシの頭に見えるだろ。んで、真ん中の縦棒と下の横棒にチョンってところがさ、くねくねしたヘビの体に見えねぇ?」
「あ、本当だ」
「つまり『虫』は、大きな頭をした毒蛇の絵を漢字にしたもので、元々は、今みたいな虫のことじゃなかったんだよ」
「へえ~」
「で、この『虫』の漢字を三つ並べた『むし』……これ、この『蟲』って漢字」
「優太君、よくそんな難しい漢字知ってるね」
「オレ、ダメほたると違って賢いから。んで、この『蟲』の漢字には、ありとあらゆる動物が含まれるんだよ」
ダメほたると違って、が、余計なんですけど。
ここは、なめられないよう、賢いところを見せつけないと。
「はい!」とほたるは手を挙げた。
「じゃあ、ダメほたるさん」
「先生、ダメが余計です」
「細かいことは気にせず、どうぞ」
「細かくはないですが。ええと、さっき優太先生の言った、『ありとあらゆる動物』というのは、つまり植物と動物に大別した時の、虫とか魚とかを含む動物のことでしょうか」
「おっ、ダメほたるさんにしては正解です」
「こう見えて女子大生なので。てゆーか、ダメほたるさんにしては、が、余計です」
「んじゃ続きな」
するっとスルーして、優太先生が続ける。
「えっと……古代中国では、 ありとあらゆる動物を、鱗のある鱗蟲、毛のある毛蟲、羽のある羽蟲、甲羅のある甲蟲の4つに分類してたんだ」
優太君は、『蟲』と書いた文字から放射状に四つの線を引いて、それぞれの先に『鱗蟲』『毛蟲』『羽蟲』『甲蟲』と、付け足していった。
(小4なのに、鱗がさらりと書けるとは、末恐ろしい子)
さすがは名門私立の小学生。頭のデキが違う。
しかも、達筆なんですけど。
この子と競うのは、もうやめよう。
「この、『鱗蟲』の長、つまり一番偉い奴が蛟竜なんだ。んで、『毛蟲』の長が麒麟。それから『羽蟲』の長が鳳凰、でもって『甲蟲』の長が霊亀なんだ。つまり」
トントン、と地面の漢字を指さして、優太君がニヤリとした。
「霊獣たちは、全部『蟲』。な、『むし』だろ?」
「ああ、なるほど」
神明大学のダニー講師と同じく、ためになるのか、ならないのかわからない、優太先生の虫講義、これにて終了。
「ま、それだけ、虫っていうのは、たっくさんの意味を含んだ神聖な生き物ってことなんだよ」
「神聖な生き物ねぇ」
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