ようこそ、むし屋へ2 ~麗しの碧ちゃん&むしコンシェルジュの卵編~

箕面四季

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神明神社

映え神社

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「つかさー、オレ、こんなにカラフルな神社初めて見た」
 改めて手水舎や狛犬を見回して、優太君がほうっと息を吐いた。

「だよね。SNSにアップしたら、『いいね』の嵐だよ。ゆりりんがいたら喜ぶだろーなぁ」
「ゆりりんって?」

「大学の友達で、インフルエンサーなの」
「へえ~。ダメほたるにもちゃんと人間の友達いるんだ」

「いるに決まってるでしょ。まあ、少ないけど」

 大学でできた数少ない友達のゆりりんは、オシャレなカフェや映えスポットなどを自撮り写真と一緒にSNSで紹介していて、フォロワー数5万人以上の人気インフルエンサーだ。
 ふわふわの巻き毛と姫系ファッションがトレンドマークのゆりりんは、碧ちゃんとは違うアイドル的な可愛らしさで人気を誇っている。

 可愛いカフェや雑貨に囲まれて笑顔を振りまくゆりりんの写真は、何気なく撮っているように見えて、その実、ものすごい労力の末の一枚だ。

 同じような写真をアングルを変えて何十枚も撮影し、その中から一番いいものを選び、更にそれを加工して、SNSにアップする時間帯まで考え抜いて、載せている。
 もちろん、写真を撮るときは、お店の人に必ず撮影の許可も得ていて、周りの迷惑にならないように気を遣っている。いつもはほわわんとした雰囲気だけど、SNSの写真を撮っている時はプロ意識があってかっこいい。
 
 最近、企業からの商品紹介の案件がたくさん届くようになったの! と喜ぶゆりりんに、この神社を教えたい!

「そっか。この神社って、ゆりりんの言ってた映え神社かも」
「なにそれ」

「インスタ映えする神社のことらしいよ。ほら、風鈴とか提灯をいっぱい垂らした神社のフォトスポットで写真撮って、SNSにアップしてる人とかいるでしょ。ああいう映えスポットを作って、若い参拝客をたくさん呼び込もうとしている神社が、今結構あるんだって。あたしの友達のゆりりんは、古い神社を映え神社にするコンサルト業務もやってるらしくて、鳥居とかお社の朱色を塗りなおしたり、和のアイテムで飾ったりして、神社をカラフルにするのがポイントって言ってた。あと、神社に明確なコンセプトを打ち出すことも大事らしいよ」

「明確なコンセプト?」

「うん。例えばここって、狛犬がルナモス?の幼虫だったり、手水舎の水盤に花を浮かべて蝶をおびき寄せたり、水盤の水が出ているところも、テングチョウ?になってるでしょ。たぶん、ここは、蝶をコンセプトに改造中なんじゃないかな。もしかしたら、元々蝶を祀っている神社なのかも」

 神社の鳥居だけボロボロなのは、まだ改造途中だからだろう。

「ガもいるけどな」と、優太君が補足する。

(優太君、細かい)


「つまりここは、蝶をコンセプトにした蝶神社なんだよ」
「それを言うなら鱗翅目神社だな。ガもいるから」
 やっぱり細かい優太君をじとっと見ながら(明確なコンセプトって点で言ったら、蜻蛉神社もイケてるかもなぁ)と思う。

 亡くなったひいじいじと縁があり、ほたるがむし屋に行くための入り口でもある蜻蛉神社は、名前のとおり、トンボだらけの神社だ。

 手水舎の水が流れるところもトンボ、狛犬も二匹のトンボの石像、神社の鈴の上部にも金色のトンボがついている。
 拝殿の中を覗き込んだら、黄金の玉にとまる黄金のトンボが祀られていた。

(でも、あそこはちょっと古いからなぁ)

 最初見た時はSNS映えしそうと思ったけれど、全体的に古めかしさがあって、色が抜けてしまっているから、写真にするとインパクトに欠けるかも。

(まあ、どうせ一般人は来られないか。てゆーか、あたしも行けないんだった)

 蜻蛉神社は、どうやら通常世界とは異なる空間に存在しているらしい。
 一度目にほたるが訪れた時、地元にあったはずの蜻蛉神社は、その数日後、大学の帰り道に現れた。

(蜻蛉神社には、どうやったら行けるのかなぁ)

 再び、ダニー先生の講義中に考えていた疑問が頭をもたげる。
 むし屋に行きたいと願う以外、あたしは何もしていないはずなんだけどなぁ。
 やっぱり願い方だろうか。

「たぶん、違うと思うぜ」
「え? 違うの?」

「この神社は、ダメほたるの言うような映え神社じゃないと思う」
「あ、そっちか」

「それ以外になんかあんの?」
「あはは。こっちの話。確かに、映え神社にしようとしてるかどうかなんて、神主さんに聞いてみないとわからないもんね。案外、最初から、こんな感じでカラフルだったのかもしれないし」

「そうじゃなくて。明らかに変だからさ、この神社」と、優太君は水盤の蝶たちを指さした。
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