ようこそ、むし屋へ2 ~麗しの碧ちゃん&むしコンシェルジュの卵編~

箕面四季

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二度目のチャイム

佐世保家の異変

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「まあ、冗談はこれくらいにして~」
 こほんと、碧ちゃんが咳ばらいをする。

「君が返した蛹だけど、中身が戻らないんだよー。このままだと、佐世保家の異常は収まらないかもよー」

 碧ちゃんの言葉に驚いて、ほたるは優太君を見た。

「優太君、佐世保家に異常が起こってるの?」
「まあ、たぶんな。ほたるも見ただろ。ザマスさまの人格が変わるの」

「ザマスが取れて優しくなっちゃう大家さんのこと?」
「うん。まあそれはたいした問題じゃないとしても、ザマスさまのハイツを借りてる人たちが、続々と契約解除を申し込んできてるんだ。この間、管理委託してる不動産屋が話に来たんだけど、だいぶヤバいっぽい」

「あ」と、ほたるは、最近ハイツであった出来事を思い出した。

「そういえば、この前、ゴミ出しの時にばったり会った二階の部屋の先輩も、引っ越すって言ってた! 大学編入するわけでもないし、部屋に不満があるわけでもないけど、無性に引っ越したい気分なのって」

「それな。みんな似たような曖昧な理由で引っ越そうとしてるらしいぜ。賃貸契約解除は申し込みから二ヶ月後だから、今はまだ問題ないけど、一斉に人がいなくなったら経営破綻かも。でも、一番ヤバいのは父さんの弁護士事務所だな」
「ヤバイって、どういうこと?」

「なんかさ、いきなり警察が押しかけてきて『公文書偽造の疑いがある』とか言って、事務所の書類全部持って行っちゃったんだって。事務所にも入れなくて今家で待機状態なんだけど、顧客からクレームの電話がずっと鳴りっぱなしで、対応に追われてるんだよ。悪い噂とかも流れてるみたいで、依頼を取り消すお客さんも続出なんだ」
「それって、すっごく大変じゃない!!」

「でもさ、オレの父さん、道端に落ちてた10円を悩みに悩んで交番に持ってくようなお人よしだぜ。ザマスさまは大企業の顧問や、大きな裁判の案件をたくさん抱えて超多忙な凄腕弁護士とか周りに吹聴してるけど、本当は、他の弁護士事務所に断られて困ってるお金のない人の依頼ばっか引き受けてて、その資料作成に深夜まで残業してる貧乏弁護士なんだよ。要領悪いんだよ。そんな人が公文書偽造とか大それたことできるわけないっつーの。確かに、目つきはヤクザ並みに鋭いけどさー」

 その目つき、優太君も受け継いでるけど。

「お父さん、かっこいい人だね」
 早くにお母さんを亡くした優太君が、こんな風に伸び伸びと元気に育っているのは、優しいお父さんのおかげもあるかもしれないな。

「別に……かっこよくは、ねぇけど」
 悪い人じゃないよ。と、顔を真っ赤にしながら優太君がぼそりと言った。

「ううむ~。君が触れたむしは、オオコトダマの蛹だからなー」と、碧ちゃんが両手を組んで唸る。

「オオコトダマ? オオゴマダラじゃなくて?」と眉をよせる優太君。

「オオゴマダラにそっくりのオオコトダマさー。あれは、昆虫じゃなくて、人の体内に宿る方のむしなんだよねー」

 しかも特殊なー。と、碧ちゃんは大きな黒目をきらりと光らせた。
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