ようこそ、むし屋へ2 ~麗しの碧ちゃん&むしコンシェルジュの卵編~

箕面四季

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夜のむし屋

碧ちゃんとアキアカネさんは犬猿の仲?

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「オオミズアオまで引き寄せちゃうとは、ほたるちゃんの招きむしは、強力というか個性的だねぇ」
「アキアカネさん!」
 黒縁丸メガネをかけたアキアカネさんが、大きな年輪テーブルの奥に座りながら、「やっほー」と柔和な微笑みでこちらに手を振っていた。
 向尸井さんの私服が衝撃的過ぎて、アキアカネさんの存在に気づかなかったのだ。

「ほたるちゃん、いらっしゃ~い」
 燃えるようなオレンジ髪のアキアカネさんは、同じ色のロングジャケットを羽織っていて、いつものオシャレファッションだ。
 今日も黒縁丸メガネの中の赤茶色の瞳が美しい。唯一無二の夕焼け色に輝く瞳。
 独特の柔和で神秘的なオーラに、初めて出会った時は、なぜだか死神かな、と思ってしまったイケメンアキアカネさんは、今日も安定のかっこよさで、ほたるはほっと安堵した。

 そのアキアカネさんは、年輪テーブルの上の白磁のお皿に盛られた、茶色いお菓子をポリポリ食べていた。
 あ、あれは……。
 ごくり、とほたるは唾を飲む。

「それ、かりんとうですか? 美味しそう~」
「僕の手作りさ。趣味なんだ」

「アキアカネさんって、料理が趣味なんですか? ちょっと意外!」
 でもこれはいい方のギャップ。萌える方のギャップだ。

「せっかく捕まえた獲物は、美味しく料理してあげなくちゃ失礼だからねぇ」
「獲物?」
 ちょっと意味がわからなかったけれど、そんなことより、かりんとう!

 この、つやつやに輝く焦げ茶色の極細かりんとうは、四、五本を一気に放り込んでポリポリ食べれちゃう、ひいじいじが大好物だったやつだ。

「あたし、その極細かりんとう大好きなんです。子供の頃、ひいじいじと一緒に食べたなぁ」
 夕焼けに舞うアカトンボを眺めながら、ひいじいじの部屋の縁側で食べる極細かりんとうは、心がホッと和む味がした。
 ちょっとしょうゆ感の強い、素朴な甘辛い味がたまらないのよね。

「そういえば、トンボもこれが好きだったなぁ」とアキアカネさんが懐かしそうに夕焼け色の目を細める。
「そうなんですか?」

(あ、そういえば)
 そういえば、ひいじいじは極細かりんとうを食べながら、「本物はもっとウマいんじゃ。ほっちゃんにもいつか食べさせたいのぉ」とか言ってたっけ。
 ひいじいじの言う本物って、アキアカネさんの手作りかりんとうのことだったのかも。

「ほたるちゃんも食べるかい?」
「いいんですか?」
「もちろん」
 ひいじいじが称賛した本物の味。ぜひ試さねば!
 よだれを垂らしながら年輪テーブルに歩み寄ろうとするほたるの腕を掴んで、碧ちゃんがグイと引き留める。

「ほたるちゃん、そんな変なもん食べたらお腹壊すよ~。ちょっとアホメガネ! 僕のほたるちゃんにおかしなもの食べさせないでくれる?」
 敵意むき出しに、アキアカネさんを睨みつける碧ちゃん。一体どうしたというのだろう。

「変な料理って、アキアカネさんに失礼だよ、碧ちゃん」
「ええ~、僕はほたるちゃんのために言ってるのにー」
 ぷくぅとほっぺを膨らませていじける碧ちゃんを見ながら、アキアカネさんが勝ち誇ったように、口角を上げた。

「自分が食に興味ないからといって、他者を巻き込むのは良くないよ、オオミズアオ君。そんなことだから、君はほたるちゃんにも嫌われるのさ」
「え、別にあたし、嫌ってないですけど……」

「きぃ~、アホメガネ~、ボケメガネ~、バーカバーカ、べぇ~」
「やれやれ。オオミズアオ君がいつまで経ってもバカなのは、ちゃんと食事をしないからかもしれないなぁ」
「なにを~~」
「まあまあ。二人とも、落ち着いて」
 優太君と碧ちゃんも相性が悪いと思ったけれど、アキアカネさんと碧ちゃんはそれ以上だ。まさしく犬猿の仲。見た目美男美女でお似合いなのに、もったいないなぁ。
 もしや、過去に何かあったのだろうか。痴情のもつれ?
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