ようこそ、むし屋へ2 ~麗しの碧ちゃん&むしコンシェルジュの卵編~

箕面四季

文字の大きさ
71 / 97
人工むし

接客はざっくばらんに

しおりを挟む
「お客様の変なコトは、この人工むしが引き起こしているものと推測されます。土地むしの状態から、強引にオオコトダマの蛹の中身にされ、長い年月を経た後、ふたたび外に放り出されたことで、人工むしは、自分が何者かわからず、混乱しているのです。萌黄色になり、茜色になり、群青色になり、墨なっては、燃え盛る赤に揺らめく。この色の変化はむしの混迷そのもの。その混迷がお客様の身の回りで変なコトを引き起こしているのでしょう」

「じゃあ、この線のような毛糸のようなもじゃもじゃ揺れる人工むしを取ったら、優太君の身の回りで起きている変なこともなくなるってことですか? 向尸井さん」
「いや、それがそう簡単にはいかな……って、見習いアルバイトが口を挟むな!」

「もうそういうのいいじゃないですか。てゆーか、優太君には、向尸井さんのダサい私服姿とか、傲慢な姿とかバレバレなんだし、碧ちゃんもアキアカネさんもいないことにするには、存在感ありまくりですよ。この際ざっくばらんに行きましょうよ~。優太君、あたしたちがいても気にしないよね?」

「え、まあ。オレは別に……かまわない、けど」
 優太君が上目遣いに向尸井さんをちらちら見る。

「ダサい私服姿って何のことだ?」
「あ、なんでもないでーす」
 あっははーと笑うほたるを見て「はあ~」と、向尸井さんが諦めのため息を吐いた。
「蜻蛉の子孫を雇ったオレがバカだった」
 くっく。と、アキアカネさんがおかしそうに笑って、向尸井さんの肩をぽんぽん叩く。

「そういえば、蜻蛉もむし屋の流儀をひっかきまわすのが得意だったよね。客商売は和気あいあいが一番じゃってね。蜻蛉がいると、身なりの良い神経質そうな紳士のお客様と何故か相撲大会になっちゃったり、人見知りで口数の少ないご婦人が三時間もおしゃべりしつづけたりして、退屈しなかったよ」
「おかげでむし屋協会が発行する、品位あるむし屋ランキングの上位からこの店が消えた」
 苦々しい表情の向尸井さん。

「へえ~。ひいじいじが……あたしが知ってるひいじいじは、部屋にこもって本ばっか読んでて、家族からは、人に興味ないとか言われてたのに」

「ほたるちゃんの記憶の中の蜻蛉は、晩年の蜻蛉だろう? 青年期と老齢期の性格が同じ性格の人間はいないさ。チョウやガのように、幼虫から蛹を経て羽を持つ形へと目に見えて変化しなくとも、生きとし生けるものは、年月を経るにつれ変化していくものだよ。良くも悪くもね」

 そうかもしれない。
 まだ二十歳に満たないほたるの人生を顧りみても、小学生のほたると今のほたるは、見た目も性格もだいぶ違う。
 良い方に変わった、と、信じたい。

「話を戻すが、この人工むしは、むしむし交換の対象外だ」
 執事風の丁寧な接客を諦めた向尸井さんが、ため息交じりに優太君に告げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。

神ちゃま

吉高雅己
絵本
☆神ちゃま☆は どんな願いも 叶えることができる 神の力を失っていた

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

エリちゃんの翼

恋下うらら
児童書・童話
高校生女子、杉田エリ。周りの女子はたくさん背中に翼がはえた人がいるのに!! なぜ?私だけ翼がない❢ どうして…❢

たったひとつの願いごと

りおん雑貨店
絵本
銀河のはてで、世界を見守っている少年がおりました。 その少年が幸せにならないと、世界は冬のままでした。 少年たちのことが大好きないきものたちの、たったひとつの願いごと。 それは…

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜

おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
 お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。  とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。  最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。    先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?    推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕! ※じれじれ? ※ヒーローは第2話から登場。 ※5万字前後で完結予定。 ※1日1話更新。 ※noichigoさんに転載。 ※ブザービートからはじまる恋

処理中です...