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人工むし
人工むしの構造
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「あの~。あたしにもわかるように教えてください」
そろそろと挙手したほたるを「お前、オレが貸してやった昆虫図鑑はちゃんと読んでるんだろうな」と、向尸井さんがじろりと睨んだ。
「も、もちろんですよ~。読んでますって。……ちょっとずつ」
「ダメほたる、うそ、下手すぎか」
「あはは」
やれやれ。とため息を吐きながら「セミの抜け殻は見たことあるのか?」と、向尸井さんが聞く。
「ありますよー、それくらい。田舎者をバカにしないでください。抜け殻からぴよんぴよんって出てる白い紐みたいなのも、見たことありますし! ゴミかなって思ってましたけど」
「ゴミ……。あれは、気管の部分だ。昆虫は、腹部や胸部にある気門という穴からチューブ状に気管が体内へと伸びていて、気門から取り込んだ空気を全身に送っている。つまり、人間の血管のような役割をしているのが気管だ」
「なるほどー」
「セミは羽化終了の間際まで、抜け殻の中の気管と成虫が繋がっているから、抜け殻には細い糸が伸びている。脱皮中の体が落ちないように支えているという役割もあるが、まあそれはいい。ここで人工むしの話に戻せば、どうやら、この人工むしは、自分の気門をこの少年に繋げることで呼吸していたようだな。外に出てしまっている今、空気の循環ができずにいる。それで、必死に、この少年の内部に気管を伸ばそうとしているわけだ」
「なるほどー」
「……お前、絶対、わかってないだろう」
「あはは~」
「……このアホは放っておくとして、このままの状態だと、この人工むしは呼吸ができずに腐敗していく。腐敗を防ぐためには、君の体内に戻すしかない。100%の確証は持てないが、90%以上の確率で、この人工むしが君の体内に定着すると、徐々に混乱は収まり、君の周りで起きている奇妙な出来事も収まっていくだろう」
優太君の顔が、ぱあっと希望に輝いた。
「なら、もうちょっと我慢すれば、オレの周りの変なコトも元に戻るってことですか?」
「おそらくはな」
「その人工むしが身体の中にいることで、具合悪くなったりとかは」
「君はかなり強いむし耐性を持っているから、心配はないだろう」
「ってことは、変なコトが収まれば、今まで通りに生活できるってこと?」
「そういうことだ。ただし、君が仕事を持つまでの話だが」
「それって……どういう意味ですか?」
向尸井さんは厳しい顔つきで碧ちゃんを見た。
「この人工むしの生業は?」
「弁護士だね~」
「そうか」
頷いて、ちらりとアキアカネさんを見た後、向尸井さんは優太君に視線を戻した。
「これは、オオコトダマの蛹の中身だ。つまり、生業鞍替えのむしだ。さっき、アキアカネが言っていたように、人工的に作られた生業鞍替えのむしは、自分の生業に執着する。もし君が、この先、弁護士以外の職に就こうとすれば、どんな手を使ってでも阻止してくるだろうな。それこそ、周囲の人間の命を奪ってでも」
「それじゃ、優太君は将来を選べないってことですか??」
ほたるは驚いて向尸井さんに尋ねた。
「そういうことになる」
「それじゃ、優太君は将来の夢を見られないじゃないですか! なんとかならないんですか?」
ぐいっと詰め寄ったほたるの視線をがしっと捉え、向尸井さんが冷静に言い放った。
「なんとかなるなら、とっくになんとかしてる」
そろそろと挙手したほたるを「お前、オレが貸してやった昆虫図鑑はちゃんと読んでるんだろうな」と、向尸井さんがじろりと睨んだ。
「も、もちろんですよ~。読んでますって。……ちょっとずつ」
「ダメほたる、うそ、下手すぎか」
「あはは」
やれやれ。とため息を吐きながら「セミの抜け殻は見たことあるのか?」と、向尸井さんが聞く。
「ありますよー、それくらい。田舎者をバカにしないでください。抜け殻からぴよんぴよんって出てる白い紐みたいなのも、見たことありますし! ゴミかなって思ってましたけど」
「ゴミ……。あれは、気管の部分だ。昆虫は、腹部や胸部にある気門という穴からチューブ状に気管が体内へと伸びていて、気門から取り込んだ空気を全身に送っている。つまり、人間の血管のような役割をしているのが気管だ」
「なるほどー」
「セミは羽化終了の間際まで、抜け殻の中の気管と成虫が繋がっているから、抜け殻には細い糸が伸びている。脱皮中の体が落ちないように支えているという役割もあるが、まあそれはいい。ここで人工むしの話に戻せば、どうやら、この人工むしは、自分の気門をこの少年に繋げることで呼吸していたようだな。外に出てしまっている今、空気の循環ができずにいる。それで、必死に、この少年の内部に気管を伸ばそうとしているわけだ」
「なるほどー」
「……お前、絶対、わかってないだろう」
「あはは~」
「……このアホは放っておくとして、このままの状態だと、この人工むしは呼吸ができずに腐敗していく。腐敗を防ぐためには、君の体内に戻すしかない。100%の確証は持てないが、90%以上の確率で、この人工むしが君の体内に定着すると、徐々に混乱は収まり、君の周りで起きている奇妙な出来事も収まっていくだろう」
優太君の顔が、ぱあっと希望に輝いた。
「なら、もうちょっと我慢すれば、オレの周りの変なコトも元に戻るってことですか?」
「おそらくはな」
「その人工むしが身体の中にいることで、具合悪くなったりとかは」
「君はかなり強いむし耐性を持っているから、心配はないだろう」
「ってことは、変なコトが収まれば、今まで通りに生活できるってこと?」
「そういうことだ。ただし、君が仕事を持つまでの話だが」
「それって……どういう意味ですか?」
向尸井さんは厳しい顔つきで碧ちゃんを見た。
「この人工むしの生業は?」
「弁護士だね~」
「そうか」
頷いて、ちらりとアキアカネさんを見た後、向尸井さんは優太君に視線を戻した。
「これは、オオコトダマの蛹の中身だ。つまり、生業鞍替えのむしだ。さっき、アキアカネが言っていたように、人工的に作られた生業鞍替えのむしは、自分の生業に執着する。もし君が、この先、弁護士以外の職に就こうとすれば、どんな手を使ってでも阻止してくるだろうな。それこそ、周囲の人間の命を奪ってでも」
「それじゃ、優太君は将来を選べないってことですか??」
ほたるは驚いて向尸井さんに尋ねた。
「そういうことになる」
「それじゃ、優太君は将来の夢を見られないじゃないですか! なんとかならないんですか?」
ぐいっと詰め寄ったほたるの視線をがしっと捉え、向尸井さんが冷静に言い放った。
「なんとかなるなら、とっくになんとかしてる」
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