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ひいじいじの来客
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シューーーーーー。
ヤカンのお湯が沸くような音がして、ひいじいじの部屋の景色が丸く、黒く、しぼまっていく。
黒く塗りつぶされた円の外から、細い金色の糸の束が無数に現れた。
それらは、ものすごいスピードで、うにょうにょと赤ちゃんの優太君に向かって、伸びてくる。
「掛けまくも畏き伊邪那岐大神~、筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に~、御禊祓へ給ひし時に生り坐せる祓戸の大神等~、諸諸の禍事罪穢有らむをば~、祓へ給ひ~清め給へと~白す事を聞こし召せと~、恐み恐みも白す~」
きゅっっっっつ!!!!!
金色の細い糸の束が抱っこ紐に触れる直前。
それらが甲高く鳴いて、潮が引くように、サーと、黒い景色の中に戻っていく。
残されたのは、静寂。
宇宙に放り出されたみたいに息苦しい無音が続く。
それを破ったのは、ひいじいじの声だった。
「大原や~てふの出て舞う~朧月~」
圧縮された景色の真ん中で、小さな小さなエメラルドグリーンの閃光が音もなく爆発した。
それは化学反応のように激しく狂暴な光を溢れさす。
ぎゅっと目を閉じても、瞼を貫いて眩しい光が強く白くつき刺さってくる。
白、白、白……。
劇的な光が通り過ぎると、今度は夏の早朝のような、からりと清涼な風が頬をなでた。
生命力がみなぎるような、雑草の瑞々しい匂いが鼻孔をかすめ、ほたるが恐る恐る目を開けると、そこは、実家近くの田んぼのあぜ道のようでもあり、神明山の森の中のようでもあり、夏の高原にも、住宅地の合間の草ぼうぼうの空き地のようにも見える場所だった。
東の空には、明るく白っぽい太陽が昇り始めている。
あと一時間もすれば、セミが鳴きだしそうな、暑さを予感する太陽だった。
「ま、ママ?」
近くで、優太君のかすれた声がした。
細いつり目をこの上なく丸くして、茫然と見上げる優太君の目線の先で、抱っこ紐を付けた優太君のお母さんが、柔らかい微笑を優太君に注いでいた。
ほたるには、二人の視線が交わっているように見えた。
優太君のお母さんが、優太君に何か話しかけている。
けれども声は、音にならなかった。
自分の唇を触って、残念そうに笑った後、優太君のお母さんは、優太君に向かって、満面の笑みを浮かべた。
そよ風のように、優しく、優しく、優太君の髪を撫で……消えたのだった。
ヤカンのお湯が沸くような音がして、ひいじいじの部屋の景色が丸く、黒く、しぼまっていく。
黒く塗りつぶされた円の外から、細い金色の糸の束が無数に現れた。
それらは、ものすごいスピードで、うにょうにょと赤ちゃんの優太君に向かって、伸びてくる。
「掛けまくも畏き伊邪那岐大神~、筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に~、御禊祓へ給ひし時に生り坐せる祓戸の大神等~、諸諸の禍事罪穢有らむをば~、祓へ給ひ~清め給へと~白す事を聞こし召せと~、恐み恐みも白す~」
きゅっっっっつ!!!!!
金色の細い糸の束が抱っこ紐に触れる直前。
それらが甲高く鳴いて、潮が引くように、サーと、黒い景色の中に戻っていく。
残されたのは、静寂。
宇宙に放り出されたみたいに息苦しい無音が続く。
それを破ったのは、ひいじいじの声だった。
「大原や~てふの出て舞う~朧月~」
圧縮された景色の真ん中で、小さな小さなエメラルドグリーンの閃光が音もなく爆発した。
それは化学反応のように激しく狂暴な光を溢れさす。
ぎゅっと目を閉じても、瞼を貫いて眩しい光が強く白くつき刺さってくる。
白、白、白……。
劇的な光が通り過ぎると、今度は夏の早朝のような、からりと清涼な風が頬をなでた。
生命力がみなぎるような、雑草の瑞々しい匂いが鼻孔をかすめ、ほたるが恐る恐る目を開けると、そこは、実家近くの田んぼのあぜ道のようでもあり、神明山の森の中のようでもあり、夏の高原にも、住宅地の合間の草ぼうぼうの空き地のようにも見える場所だった。
東の空には、明るく白っぽい太陽が昇り始めている。
あと一時間もすれば、セミが鳴きだしそうな、暑さを予感する太陽だった。
「ま、ママ?」
近くで、優太君のかすれた声がした。
細いつり目をこの上なく丸くして、茫然と見上げる優太君の目線の先で、抱っこ紐を付けた優太君のお母さんが、柔らかい微笑を優太君に注いでいた。
ほたるには、二人の視線が交わっているように見えた。
優太君のお母さんが、優太君に何か話しかけている。
けれども声は、音にならなかった。
自分の唇を触って、残念そうに笑った後、優太君のお母さんは、優太君に向かって、満面の笑みを浮かべた。
そよ風のように、優しく、優しく、優太君の髪を撫で……消えたのだった。
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