15 / 39
二章
十五話
しおりを挟む
化け物云々という話をする雰囲気ではなくなり、二人は下校することにした。同じ帰り道を、途中まで連れ立って歩く。(小学生の頃は、たわい無い会話をしながら、こうして帰ったな)と、和義はたかが数年前の生活を懐かしんだ。
記憶の中で、赤いランドセルが楽しそうに揺れる。その時も早紀は、オカルトめいた話をしていた。当時は、彼もその手の話題に抵抗が無く、喜んで付き合ったものだった。
これまで彼は、彼女とあまり口を交わさなくなった理由について、性差を意識する様になったからだと考えてきた。だが今は、(渡瀬家に関する悪い噂の煽りを受けたく無い、という理由もあったんじゃないか)と思い始めている。
早紀が学校でも陰口を叩かれていた事を、彼は知っていた。意識的にではなくても、無意識の内に避けてきた可能性はある。
また先程の度を超えた説明は、昔を思い出して童心に帰ったのかもしれない。そんな風に考えていると、胸中に罪悪感が広がっていった。
もう一度謝ろうかと思い、彼は少し前を歩いている早紀に目を向ける。彼女は、歩道の脇にいる犬の亡霊を見つめていた。それがふわふわと漂う鬼火に食らいつくと、直ぐ様走り去っていく。
犬の亡霊が生前にどんな生き方をして、どんな死に様だったのかを、彼は想像した。そして、食われた霊魂のことも。
更に数分ほど歩いた後、岐路で別れる事となった。
早紀が振り返って、「さようなら」と挨拶をする。それに和義が「また明日」と返すと、彼女は懐かしい笑顔で笑った。
記憶の中で、赤いランドセルが楽しそうに揺れる。その時も早紀は、オカルトめいた話をしていた。当時は、彼もその手の話題に抵抗が無く、喜んで付き合ったものだった。
これまで彼は、彼女とあまり口を交わさなくなった理由について、性差を意識する様になったからだと考えてきた。だが今は、(渡瀬家に関する悪い噂の煽りを受けたく無い、という理由もあったんじゃないか)と思い始めている。
早紀が学校でも陰口を叩かれていた事を、彼は知っていた。意識的にではなくても、無意識の内に避けてきた可能性はある。
また先程の度を超えた説明は、昔を思い出して童心に帰ったのかもしれない。そんな風に考えていると、胸中に罪悪感が広がっていった。
もう一度謝ろうかと思い、彼は少し前を歩いている早紀に目を向ける。彼女は、歩道の脇にいる犬の亡霊を見つめていた。それがふわふわと漂う鬼火に食らいつくと、直ぐ様走り去っていく。
犬の亡霊が生前にどんな生き方をして、どんな死に様だったのかを、彼は想像した。そして、食われた霊魂のことも。
更に数分ほど歩いた後、岐路で別れる事となった。
早紀が振り返って、「さようなら」と挨拶をする。それに和義が「また明日」と返すと、彼女は懐かしい笑顔で笑った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる