韓劇♡シアター#文披31題

鶏林書笈

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西瓜~Day12すいか

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 窓の外を見ると西瓜が実っているのが見えた。
 魯山君はふと昨年の今時分を思い出した。

「上王さま」
 裏口の方で声がした。下働きの禿同と尹生だった。
「お前たち、ここに来てはまずいのではないか」
「ちょうど、交代の時間のようで護衛たちは誰もいなかったので大丈夫です」
 尹生はこう答えながら西瓜と胡桃を手渡した。
「安平さまを始めとして多くの方々が上王さまの復位を望まれ、動いていらっしゃいます。もう少しの御辛抱で御座います」
 禿同は慰労の言葉を掛けた。
「そうか…、御苦労、お前たちも気を付けて過ごしてくれ」
 上王が労(ねぎら)うと二人は頭を下げて去っていった。
 三年前、彼は父王が早世したため王位に就くことになった。まだ十一歳だった。
 祖父である世宗は、こうなるのを予想していたのだろうか、皇甫仁等の臣下たちに、将来、孫が即位した際、補佐するよう託した。
 お陰で彼は形式だけにせよ、王としての職務を果たすことが出来た。
 こうした状況に不満を持つ者も当然いた。
 叔父である首陽大君もそうした一人だった。父・文宗の弟たちの中でも優秀で野心家である彼は、自分こそ王に相応しいと自負していた。
 叔父は当初こそ幼い甥を尊重していたが、少しづつ真綿で首を絞めるように追い込んでいきその座を奪ってしまった。
 上王となった魯山君は王宮の片隅の屋敷に暮らし、監視が厳しいため訪れる人もほとんどなかった。
 だが、現王の王位簒奪に憤り、上王に同情する人々は多かった。
 その中には上王を復位させようと実力行使に出た者もいた。
 後に“死六臣”と呼ばれる成三問たちが起こした事件もそうだった。
 これは未遂に終わったが、魯山君も関与が疑われ、上王の座を奪われ、寧越に配流された。
 成三問たちは当然死刑となったが、彼らに同情する声は多かったそうだ。
 その後、魯山君に縁ある人々は次々捕まったと聞く。


「自分が生きている限り、多くの者が害を被るのだな」
 西瓜を眺めながら魯山君は思った。
 天は何故自身を王位に就かせたのだろう。最初から叔父上が王位に就いていれば、誰も死ぬことはなかっただろうに…。
 まもなく、朝廷より賜薬が届くだろう。自分がこれを飲めば全てが終わる。もう誰にも害が及ぶことはないだろう。
 思いがここに至った時、彼の心は僅かだが安堵した。
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