密会の森で

鶏林書笈

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三十七

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 自分の住んでいる村以外知らない彼女にとって、都に行くまでの道中は、とても面白く思えた。行き交う人々の姿、山や田園の風景、旅宿の風景までこれまで見たものとは異なる趣きをしていた。
 物珍しそうに周囲を見回しながら歩く彼女に大守は苦笑した。
 都に着くと洗練された街並み、服装に彼女は少し気遅れしてしまった。
 王宮に入るとそれは更に強まった。
「私のような者がここでやっていけるでしょうか」
 彼女が弱音を吐くと、
「大丈夫、すぐに慣れるさ。ここにいる半数はお前同様、地方出身者だ」
と大守は励ますように応じた。
 医女の研修所のような場所に連れて行かれた彼女は、そこで大守と別れた。
「がんばれよ」
 彼ははなむけの言葉を残して去って行った。
 王宮近くの家に間借りをした彼女は、毎日、研修所に通い、講習を受けた。
 大半の内容は既に知っていることだったが、時々、初めて知る事柄もあり、講習は楽しいものだった。
 講習終了後、彼女は庶民向けの医療機関である恵民署に配属された。
 これまでは主人と共に患者のもとを訪ねて治療を行なっていたが、ここでは患者が訪ねて来るのだった。
 仕事自体はこれまでと同じだったが、一カ所に留まって機械的に患者を治療していく方法がとても新鮮に感じられた。
 医員の指示を手際よくこなしていく彼女は、すぐに頭角を現し、勤務一年もしないうちに医女のリーダーである行首に任命され、続いて内医院の医女になった。
 庶民対象の恵民署とは異なり、内医院は王族と王宮で働く人々を相手にしなくてはならなかった。王や王妃等、身分の高い方々は相応の実力を持った者が担当し、新入りの行首は主に宮女たちの治療を担当した。
 身分は同格のはずなのに、宮女たちは医女を見下げていた。
 同僚の医女たちは、こうした対応に腹を立てていたが、行首はそうしたことはなかった。ただ、違和感のようなものを感じた。
 村で往診した時も恵民署で働いていた時も、患者は皆、医員や医女に感謝した。元気になったのだから嬉しくなってそうしたことを言うのだろうと彼女は思った。宮女たちは病気が治っても嬉しくないのだろうかと不思議に感じたのだった。
 ここでも実力を発揮した行首は医女のリーダー格となり、王や王妃の治療の手伝いをするようになった。
 その際、上司だったのは許医員だった。彼とは何故か気が合い、それゆえ、今回の王さまの治療も予想外に上手くいき、好い結果となったのだった。
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