しかはあれども

山之城奈央子

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 えっと……何がどうしてそうなった? 



母から、最初それを聞かされた時に私が感じたものを、一言で言い表すならばそんな感じ。







 義姉が、長子なのは結婚当初から聞いて知っていた。

そして、彼女に二人存在する弟夫婦と兄達とが、どちらとも互いに仲が良いとも聞いていたし、その子供達を日頃から可愛がっていた事も、良く聞いて知っていた。

特に、下の弟の末の娘をこのまま子供が出来ないならば、将来は自分達の跡取りに出来ないか? と、半ば本気で考えていたらしい事も、随分と昔に一度だけ聞いた事もあった。

もっとも聞いたのは、その選択肢を検討するにはまだ早くはないか? と、少しばかり変に思った位の時期なのだが、こちらもそのやり取り自体すぐに忘れていった。
まぁ、その娘は今現在では普通に嫁に行っているらしいので、実際に交渉をしたのかは不明なのだが……。







 兄達が結婚して数年が過ぎ、その間に二度ほど転勤があった、

その頃には三組の家族は、実家のあった地より遠くそれぞれ別々の県に移住していたものの、とにかく彼らの夫婦仲も、その義弟達との関係も、例えそれが表面上であろうとなかろうと、結婚以来ずっと円満だと伝え聞く状況だったのはとても良い事だろうと思えたし、まして昨今の長男が親と同居しないのも、ありふれた話だと、それはもう身近な例として、良く知っていた。





 義姉は、母に嫁として長子らしい気遣いを示し、折に触れ連絡や贈り物を寄越し『結婚して兄ちゃんも親孝行の仕方を覚えたらしい(笑)』と言わしめる位に以前とは比較にならない程、頻繁に電話で聞く息子の声に母も上機嫌だった。



ある時、話の流れで子供の事に触れたのだろうか? それとも親戚の誰かから言われでもしたのだろうか? 



「もし望むなら一度調べてみる? それとも願掛けでもしてみる? 」


と、母は自身が結婚後なかなか子供に恵まれずに悩んだ事や、願掛けも含めて色々努力もし、ようやく兄が生まれた事など、また、従姉の実例にも触れ兄側に問題がある場合も考えられるのだから、と治療するなら早い方が良くないだろうか? と義姉に切り出したところ



「お義母さん、私達不妊治療はしないと決めてるんです。だってほら病院で調べてどちらかに原因があるとハッキリ知っても嫌な思いをするだけだし、それで片方を責めたりなんて事したく無いじゃないですか? 」



と、この件は打ち切り。暗に口出しは無用だと、そんな言葉を返して来た。








『あの人、前の離婚の原因はそれだったのかもねぇ? もしかしたら以前調べた事があったのかも……子供に恵まれないのは残念な事だけど、責める訳にはいかないしねぇ、それに世の中に子供の居ない夫婦なんて沢山いるし。  夫婦仲が良いのなら、その分お母さんの事も大事にしてくれるだろうし……まぁ、仕方がないね……とにかく、兄ちゃんがそれで良いんなら私は、良いわ」







多分、色々な思いを飲み込んで、程なく母はその事を諦めたようだった。











 仕事柄、常に都市部に居を構える兄は『遊びに来るには便利な所だから、観光の拠点にすれば良い』と、何度か母を誘っていた。

日頃から、あちらの親戚や友人達を良く家に招くらしく、『お義母さんも奈央ちゃんと一緒に遊びに来てください。私、昔から【他人の家に泊まるのはどうも苦手】で、どうしても駄目なんですが、家に来て貰えればおもてなし頑張りますから(笑)』と、天然なのか些か藪蛇に思える不穏当な言葉で【夫の実家に帰省時に宿泊しない理由】を口にする。(それ、言っちゃダメなヤツでしょう? )




 また、兄夫婦の結婚後すぐ始まった、互いの実家同士の盆暮の贈答品のやり取りの、お礼と近況報告的な電話での会話で、

『いつも誠一郎くんには世話になります。誕生日や父の日母の日以外にも家の援助までして貰って、本当に助かっています』

と、丁寧に述べられた内容から、自身の実家以上の援助が行われていたのを知らされる事となったのは、あまり気分の良い物ではなかったが、その素朴な感謝の言葉に悪意があった訳ではないだろう。





 そこも、あちらより少しばかり年長者と思えばこそ

「ちょこちょこと目に付き始めた、妙子さんの気に染まない部分はそれなりにあるし、またこれが同居なら、色々と無理も出て来るけど、まだお母さんの場合は別居だし、これくらいの距離感ならこっちから喧嘩する事も無かろう」

と、母の方が一歩引く形で納める気、らしかった。




だから、取り立てて表面上は問題も無く、嫁姑の関係は概ね良好で、それなりには上手く行っている、筈だった。









 その関係も、唐突に不幸に見舞われた事で、予期せぬ転機が訪れた。





 あちらの父親が病気の為突然に死を迎え、独り実家に残された母親には、間も無く認知の症状が見受けられる様になった。
悪いことに近くに住む親族は、その母親と同じか年上の、従姉妹達ばかりで非常に心許ないし、そちらに任せるには申し訳も無いから、と言い



『お義母さん、ウチの母を私達夫婦で引き取っても良いでしょうか? 』





と、義姉による相談を母が受けたのはある夜の事……。
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