審判を覆し怪異を絶つ

ゆめめの枕

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第二章 わたし、めりーさん

語る/騙る

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「何だよ、お前ら。冷てえよな」
「ちょ、ちょっと待って。呼ばれたって誰に?」

 沢村が俺に視線を向けながら、恐る恐る聞く。

「黒川くんにですよ。沢村さんからの招待だと聞いて。僕はお断りする予定でしたが、こいつが僕だけだと心細いからって言いだして、僕も来ました」
「おいっ! そこまで言うなよなあ」
「……なるほどね」

 千堂が立川に噛みつくので、沢村は察したようだ。立川も沢村の態度に気付き、俺に冷たい視線を向けてきた。

「沢村さんの言い方からして、僕たちは飛び入り参加のようですね。どういうことです?」
「え、そうなのかよ」

 千堂は驚いて俺を見た。その手には、ポテトチップスやチョコレートやらが入っているビニール袋が、提げられていた。

「楽しみをぶち壊してすまないが、まあそうだな」

 肯定すると、千堂は「別に良いけどよお、ちゃんと言ってくれよぉ。めちゃくちゃお菓子買ってきちゃっただろ」と恥ずかしがっているが、立川は怒りに満ちた目をしていた。激怒、業腹、私憤……怒りにも種類があるが、この色は何を指し示すか。

「まず初めに聞きたいことがある」
「何でしょう」

 激昂を抑えて、立川が掌を見せる。

「お前の占い結果を、もう一度聞きたい」
「初日に占ったのは師堂くんですよ」

 未だに騙る立川に、「もう騙る必要はない」と一刀両断する。

「……では聞きますけど、貴方が自身を白だと言える根拠は?」
「勿論、俺は例のメールを見せることが出来る」

 既にメリーからのメールが出てくるよう、その画面のままにしておいたので、すぐに立川の目の前に携帯を翳した。

「おお、確かに」

 千堂が前のめりになって、俺が神官であることを確認する。

「お前が心配していたのは、俺たちが黒の可能性だ」
「……ええ、そうですね」
「だが、これでその疑念も立ち消えただろう。お前が初日で本当に占ったのは誰だ」
「……」

 立川は黙り込んだ。視線を下に向けて逡巡してから、「……月島くんですよ」と言った。

「え……?」
「月島ア? 何でだよ」

 それはあり得ないと分かっている沢村は目を見開き、何も知らない千堂は眉を顰めた。

「ちょっと待ってよ。月島くんって言ったよね。それって、でも、そんなこと……いや、それよりも、師堂くんのことは占ってないってこと?」
「……」

 立川が再びだんまりを決め込む。咄嗟に月島だと言ってしまったのだろう。本当に立川らしくない。

「月島のことは占ってないだろう。お前が占ったのは誰なんだ」
「どうしてそう言えるんです? 僕が月島くんを占ったって証拠もありませんが、占っていない証拠だって無いでしょう」
「月島だけはあり得ないんだ」

 すると立川は苛立ちを声に滲ませて、「何故です」と端的に問うた。

「こいつにはメールが来ていない。つまり、こいつは今の騒動に全く関係が無いんだ」
「それは……」
「え、ずるくね?」

 言い淀む立川の前に、千堂が「何でお前だけメールが来てねえんだよ」と唇を尖らせた。

「まあ、あまり言いたかないけどさ、オレって電話持ってねえんだわ」
「え?」

 月島が頭をがしがしと掻きながら言うので、その場にいた全員の視線が月島へと集まった。

「オレは携帯を買う余裕もないほど、困窮してるってワケ。お前らだから言うけど、絶対に誰にも言うなよ」
「そ、それは勿論……」

 立川も驚いたようで、少しどもりながら、誰よりも早く頷いた。

「俺も分かったけど、お前……それって、」

 千堂の声が細くなって、糸のように途切れた。

「あまり訊くなよ。オレは、言えない立場なんだわ」
「言えない立場……?」

 沢村が繰り返す。

「今は言えねえな。沢村でも」
「いや、聞きたくはないけど」
「沢村のそういうところ、好きだぜ」
「困る。辞めろ」

 俺がいるだけなら兎も角、この場には立川も千堂もいる。二人が勘違いしてしまうよりも先に、本気の声で沢村が否定する。普段の掛け合いが始まってしまったところで、俺は「そういうわけで、月島はあり得ない。本当のことを言えよ、立川」と切り出した。
 月島のこともあって混乱しているせいか、立川は諦めたように「……千堂ですよ」とぽつりと零す。事実はどうだか知らないが、これは月島の作戦勝ちだ。

「え、マジか」

 思いも寄らない人物――むしろ自身のことで、千堂が目を見開いた。すぐに「つか、俺を占って他に白だしするとか、俺のことも皆のことも疑いすぎ」と不満の声を漏らした。

「ええ、自分でも疑い深いとは思いますけど」

 立川は沢村と月島を一瞥した。
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