Evergreen

和栗

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※会いたい

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「涼くん、話があるんだけど」
和多流くんが仕事部屋から戻って来て、ソファに腰掛けた。
姿勢を正して見つめると、真面目な顔をして出張に行ってくるね、と言った。
「出張?また京都?」
「ううん。前の会社の同期がね、独立するんだ。事務所の開設の手伝いをしてこようかなと思ってる。同期って言っても、おれより年下だけどね」
前みたいに駄々をこねない。
多分、本気で仕事をしに行くからだ。
うん、と頷いて手を握る。
「頑張ってね」
「うん。ありがとう。・・・来月、2週間くらいなんだけど・・・」
「そっか。駅までお見送りするよ」
「多分昼くらいに出るから、無理しないでね。あぁでも、おにぎり作ってほしいな。新幹線で食べるから」
「分かった。大きいの作るね」
よし、具も張り切っちゃおう。
和多流くんはよろしくね、と短く言ってからペタッと甘えて来た。たくさん甘やかした。



******************


「鍵は必ず閉めて、チェーンも閉めるんだよ。インターホンは出なくていいから」
「・・・あのさ、子供じゃないんだけど・・・」
たまたま出発の日と休みが重なったので、駅まで見送りに来た。改札で見送ろうと思ったら、わざわざ入場券を買って寄越したので、笑ってしまった。
ホームまでくると、急に過保護モードが発動した。
「車は好きに使っていいからね。あ、誰かと出かけるなら一応連絡が欲しい。あと帰る時も連絡してね。位置情報でも確認するけど念のため、小まめに連絡を、」
「分かった分かった。和多流くんもついたら連絡してね」
「それはもちろん。明日から準備だけど心配なんだよなー。おれ含めて4人しかいないからさ」
「え?・・・フリーランス、辞めるの?」
「辞めないよ。しばらく下請けでやるんだ。人手がないからね」
「そっか。あの、頑張ってね。電話するね」
「・・・心配だ。こんな可愛い子を残して行くのが心苦しい・・・。もう一回くらいキスしたかった・・・」
家で散々したのに。ていうか昨日の夜からしてるのに。
そりゃ、おれだってキスは好きだしたくさんしたいけど・・・。
「帰って来たらね」
「・・・ここにして」
左手が出される。そっと手を取って指輪にキスをすると、さっとおれの左手を取って指輪にキスをした。
「涼くん、大好きだよ。行ってくるね」
「ん。気を行けてね」
新幹線に飛び乗った瞬間、ドアが閉まった。ゆっくり走り出す。無意識に追いかけて手を振った。
和多流くんも手を振ってくれて、追いつけないスピードで走り去って行った。
行っちゃった。
駄々こねなかったな。・・・ちょっとこねてほしかった。
そんなこと言うと調子に乗るだろうから、必死に胸の奥に押し込む。
電車で家に帰り、きちんとチェーンまで閉めてソファに座る。和多流くんに作ったおにぎりとおなじものを口に入れると、携帯が短く音を立てた。
『昆布うますぎる』
あ、おにぎり食べてるんだ。
ふと見るとおれのも昆布だった。
嬉しくなる。
『ツナマヨも最高』
『もう一つはシャケ?』
立て続けにメッセージが来た。
そうだよ、と送ると万歳のスタンプ。
ふふっ。なんか、可愛い。



******************


『今ご飯食べて来たんだ。明日からがんばろーって、決起集会みたいなのしてきた』
「楽しかった?」
『うん。でね、そこで飲んだ地酒が美味しかったから買って送ったから。コンビニ受け取りにしてあるからね』
「え?買ったの?」
『涼くんと飲みたいもん。ぬる燗がめちゃくちゃ美味しかった。ね、帰ったらおでん作って欲しい。ぬる燗でいっぱいやろうよ』
「ふふっ。いいねぇ。楽しみ。コンビニ受け取りなんだね。わかった。ありがとう」
もうお土産の話、してる。
この2週間で色々買い込んで来そうで恐ろしいので、先に釘を刺す。和多流くんは返事もせずに黙り込み、別の話にすり替えようとした。
「ちょっと、買いすぎないようにね!」
『もー・・・分かったよー。あーあ・・・』
「あ、ねぇ、おれの部屋着知らない?畳んでベッドに置いといたはずなのにどこにもないんだ。洗濯もしてないし・・・」
和多流くんが知るわけないよなーと思いながら、先ほどから探している部屋着について尋ねる。和多流くんは急に静かになった。ピンと来た。
「まさか持っていったの!?」
『・・・だって、涼くんの匂いがないと落ち着かないから』
「へ、変態!」
『違いますー!安眠するために持ってきたんですー!ついでに言うとパンツと下着も拝借しました!』
「何してんの!!??変なことしたら怒るよ!?」
『ふーんだ。おれにも癒しが必要なんだもん』
「もー!」
『・・・帰りたい』
ポソっとつぶやいた。
「え?」
『・・・キスしたいなぁ』
「ん、帰ってきたらね」
『ぎゅーって抱き潰したい』
「潰されるのは困るなぁ・・・」
『んー・・・』
「あ、そういえばホテルってどんな部屋?見せて」
『え?うん。いいよ』
カメラに切り替わる。
綺麗なビジネスホテルだった。ユニットバスに、大きなテレビ。そして何故かダブルベッド。
「なんでダブル?」
『大の字で寝てやろうかと思って』
「えー?本当はお店でも利用しようと思ってたんじゃないの?」
からかうように言うと、ぱっと和多流くんの顔が映った。にやにやしながらファイルを映す。
「あ!」
『ちゃんと持ってきてるもんねー。動画も持参してますよ。なくてもおれには涼くんって恋人がいますから、お店なんて必要ありません』
おれの写真集・・・(自分で言うの、気持ち悪いな)。
和多流くんは何故か得意げ。
まぁ、いっか。こんな時くらいは。
「ほどほどにね」
『・・・ん。あー、キスしたいなぁ。涼くんの唇って薄くて柔らかいんだよ』
「な、何っ、」
『たまにカサついてるのがたまんない。リップクリーム塗ってさ、プルプルにしてからキスするのも、好き』
優しい笑顔で何を言ってるのさ。
キス、したくなってくる。
自分を慰めるなんて簡単。手と、道具を使えばそこそこ満足できる。でも、でも、抱きしめるのもキスをするのも、和多流くんがいないとできないんだよね。
『帰ったらたくさんしてね』
「うん」
『・・・』
「ん?」
『んー?いや、たまにはさ・・・』
「うん」
『やっぱいいや。明日仕事だね。気をつけて行ってね』
なんだか寂しそう。そんなにおれのことを求めてくれるんだ。チラッとベッドを見る。和多流くんの部屋着がきちんと畳まれていた。おれも、借りちゃおうかな・・・。
「和多流くんもね」
『うん』
「・・・あの、好き、だからね」
『・・・へへ。それが欲しかった。涼くんから言ってほしかった。嬉しい。おれも好きだよ。明日も電話するね』
「だめ。おれからかけるから」
『ははっ!じゃあ、勝負だね。おれが勝つよ』
「おれだもんね」
笑い合って、通話を終える。
和多流くんの部屋着を着てベッドに入る。優しい匂いがした。すぐに眠りについた。
翌朝、ほら、おれの勝ちだ、と嬉しそうに電話がかかってきて大笑いした。



********************



「あら、じゃあ2週間いないんだ?」
「そうなんです」
「たまには羽を伸ばさないと。わたくんってさ、春日部くんにベタベタくっついてるから少し疲れない?」
シロさんがお肉をひっくり返しながら笑った。
成瀬さんは丼飯をガガガっと口に押し込み、黙って食べる。こんなに口に押し込んでるのに、汚くないのが不思議だ。
「今何日目?」
「3日目です。昨日は元気そうでした」
「あー、そろそろやつれてきてるわね。前に2人が出張に行ってた時はさー、わたくんがちょこちょこそっち行ってなんとか補給してたけどー」
「あ!ちょ、」
成瀬さんの顔がピクリと動く。
や、やばい!
「どういうことだ?」
「いや、その、あの、違うんです、」
「何が違うんだ」
うぅう・・・!
初めての出張の時は、新幹線で1時間くらいの距離。しかも在来線だと2時間かからないくらいの距離で、2日に1回くらい和多流くんがやってきて一緒にお昼を食べていた。
おれの休憩に合わせてこちらに来て、早く上がれそうな日は夜も一緒に・・・。さすがに泊まるのはと断って日帰りでお願いした。
というかそうでも言わないとずーっといそうだったんだもん。
恐怖を感じながら話すと、成瀬さんは深くため息をついた。
「お前らは馬鹿なのか?」
「馬鹿なのはわたくんよねぇ?春日部くんが終わるまでカフェで仕事して、夜また合流して食事をして帰って、また2日後に来て。過保護すぎ」
「そんなにベタベタしてーのかお前らは」
「おれは断ったんです!心配だからって来たんです、勝手に!」
「愛がそうさせるのよね」
「くだらねぇ」
成瀬さんはパンっと音を立てて箸を置く。
ちょっとムカっとする。いいじゃん、プライベートなことなんだし。
いや、そりゃ、ちょっと過剰だとは思ったけど・・・。でも、出張は初めてで、おれも緊張してたし、ちょっと、寂しさもあったし・・・。
「でもまぁ、わたくんの気持ち、分かるわ」
「え?」
「ビジネスホテル、嫌な思い出があるんでしょ?詳しくは聞いてないけど」
「あ・・・はい」
「怖い思いをした場所に大事な人を置いておくのは、心配よね」
あ、そっか。だから来てくれてたのかな。
隣は成瀬さんが部屋を取っていたし、緊張したはしたけど少し、前よりは、平気になってきた。
「最近怖いことはないの?大丈夫そう?」
「あ、は、はい。大丈夫です。なんだろ、本当に減って・・・不思議なんですけど」
「少し筋肉がついてきたからじゃないか」
「え?」
「運動してるだろ」
「あ、はい。ジムに行ってます」
「体が出来上がってくると自然と顔が前を向く。前を向くと姿勢が正しくなる」
「・・・あ、なるほど・・・」
「前を向くと、少し視野が広くなる。世界が広がる」
「・・・はい。そうかもしれないです」
「視野が広がるということは自分を見直すいいきっかけにもなる。それができたから少しずつ変わったんだろ、お前は」
「・・・そうなんですかね」
「それに、あんだけ過保護な男がそばにいたら多少の自信もつくだろ」
毎日好きと言ってくれて、毎日キスをしてくれる。連絡もマメだし、嫌な顔せずに送り迎えもしてくれる。
慣れが生じて少なくなりがちなコミュニケーションも、和多流くんは絶対に怠らなかった。
「あの人ほんっとむっちゃくちゃ春日部くんに惚れてるからねー。胸焼けするくらいよ」
「何か言ってるんですか?」
「おれがテレビを見ていた時に食べてみたいって言ったものを作ってくれた、とか。そんな惚気ばーっかりよ」
「えぇっ」
「あーしたこーしたとか。好きすぎて溶けるとか」
「溶けて排水溝に流れればいいんだ」
笑ってしまう。まだそんなに惚気てくれるんだ。
なんか、嬉しいな。
お腹を満たして家に帰る。
ただいまーと声をかけても、返事はなかった。
あ、そうだよ。いないんだった。
楽しく飲んで食べて帰ってきても、いないんだよね。あと1週間と少し、ずっと1人なんだよね。
携帯を取り出して電話をかける。すぐに和多流くんの声がした。
『おつかれ。食事楽しかった?』
「ん。今帰ってきた。・・・ねーねー、好きって言って?」
『ふふっ。酔ってる?好きだよ。大好き』
「おれもぉ。んふふふふ」
『うーん、心配だ・・・。鍵かけた?』
「かけたよ」
『チェーンは?』
「今かけたぁ。あ、荷物も受け取ってきた。ありがとう」
『先に飲んでてもいいけど、程々にね。日本酒って後から来るから』
「和多流くんと飲むの」
『うん。楽しみ』
「キスしたいなぁー」
『ん?帰ったらじゃないんだ?』
「ちゅー」
『うん。ちゅー』
あー、おれ、酔ってるなぁ・・・。
ていうか、和多流くん落ち着いてるなぁ。
昨日と一昨日は帰りたい帰りたいって言ってたのに。
「もしかして寝てた?」
『ん?ううん』
「なんか静かだね」
『いやー、あはは。・・・賢者タイムです』
「へ?」
『今、してたの。涼くんの動画見て・・・あはは』
「・・・んふっ!ふふふっ!あははははは!ご、ごめん!あはは!」
『もーね、ダブルベッドで下半身丸出しですよ』
「ひ、ひひっ!は、は、はひっ!おかし、おかしい!贅沢!」
『今日は電話は無理かなーと思ってたからさ。ちょうどフィニッシュした時にかかってきて・・・』
「やめてー!」
ツボにハマり、ゲラゲラ笑いながら廊下にうずくまる。
なんでこんなに面白いのかな、この人は。
昔はなんでもスマートにこなしてかっこよかったのに。
おれだけに見せてくれる姿だったらいいな。
『笑った顔、可愛いんだろうなぁ。触りたい』
「いつもと変わらないよ」
『じゃあ可愛いな。ふふっ』
「明日も早いの?」
『そうだね』
「じゃあそろそろ切るね」
『涼くんの部屋着、匂いが薄くなってきちゃったよ。あーあ・・・』
「もぉ。すぐそういうこと言う。でも、好き。そういうとこ」
『おれも大好きだよ』
「おやすみ」
『おやすみ』
通話を切ってからシャワーを浴びる。
すぐにベッドに飛び込んで、和多流くんの枕に顔を埋める。いい匂い。少し、少しムラムラする。
静かに自分で慰めて、和多流くんの笑顔を思い出して眠った。会いたいなぁ。


********************


「そういえばお前、まだ有給消化し切ってなかっただろ」
「あ!忘れてた!」
成瀬さんがカレンダーを差し出す。えー、どうしよう。
すっかり忘れてた。
「ここ、連休にしたらどうだ?ここなら代われるから」
「え、急ですけどいいんですか?」
「あぁ。おれは次の週にする」
次の休みは連休になった。
和多流くんもいないし、何をしようかな・・・。
掃除?おかずの作り置き?うーん。




・・・い、行っちゃうか・・・?



いや、ちょっと、行動がメンヘラチックだけど・・・いやいやそんなこと言ったら和多流くんだってそうだったよね?いやでも、あれはおれのことを心配して来てくれてて・・・おれは・・・ただ、自分の寂しさを埋めるためっていうか・・・良くないよなぁ・・・。
「申請しておけよ」
「あ、は、はい!」
パソコンで申請して、テキストを持って教室へ向かう。
・・・和多流くんは、この日、普通に仕事だろうな。平日だし。でもお昼ご飯くらい食べられたりするかな・・・。
新幹線で2時間くらいだし、日帰りくらいできる、し。
・・・始発で行って、朝イチ顔を見て、帰るでも、いい、かも・・・。
それなら、迷惑かからないよね・・・?
ちょっと重いかもしれないけど、引かれるかもしれないけど、でも、でも。



会いたいなぁ・・・。



「涼くん、なんか恋する乙女の顔になってるよ」
「え!?」
慌てて顔を上げると、和泉ちゃんがいた。
じーっとおれを見て、ニヤッと笑う。
「藤堂さんのこと考えてたんだ?」
「や、ちょっと、ここは職場ですので・・・」
「またまたぁ。本当は話したいくせにぃ」
廊下の端っこでこそこそと話す。すっと真奈美ちゃんも現れて、2人でニヤニヤしながら詰め寄ってくる。
「や、やめなさい!」
「ほらほらー、惚気ちゃいなよ」
「なに、春日部先生、恋人のこと考えてた?」
「からかうんじゃないの!」
「今度恋バナしようよー。お兄ちゃん、浮いた話の一つもないんだよ。つまんない。うちきてご飯食べて、恋バナ大会しようよ!真奈美もいい人いるんだよね?」
「まぁね」
大人の笑顔。
こういう大人びた子って、年上の人と付き合うのかな。
謎がいっぱいなんだよな。
「あれ?ていうか2人とももう受かってるよね?大学・・・」
「受かったけどテストがあるのー。うちの学校厳しいんだよ。最後まで成績落とせないの」
「あ、そうなんだ?自習室にいるなら後で行くよ」
「ほんと?ありがとう。あ、さっきのさ、マジだからね。今度うち来てよ。お父さんがずっと気にしてたよ。最近来ないなーって。だから、彼氏とラブラブだからって言っといた」
「ちょちょっ、ちょっと!静かに!」
もー、女子高生って怖すぎる。
軽く手を振って教室へ向かう。
仕事に集中!


********************


いろんな言い訳、理由をつけて、結局始発の新幹線に乗ってしまった。別に小さくならなくてもいいのに、ついつい下を向いてちょんっと座席に座る。
和多流くんには内緒。駅に着くまで念のため携帯の充電は切っておく。
ドキドキする。和多流くん、びっくりするかなぁ。引かれませんように!
ソワソワしながら景色を見て時間を潰す。
朝ごはんは、無理だな。お昼くらいなら食べられないかな。あ、あわよくば夜も・・・。明日も休みだし、どこかホテルを取って一泊して、朝ごはん、とか・・・。
真剣に仕事してるところに浮かれた状態のおれなんかが行って迷惑になるかもな・・・、
やっぱり、やめておけばよかったかも・・・!
でももう戻れない!
嫌な顔されたら帰ってくればいいんだ!
本を開いて没頭する。あっという間に目的地についた。
カバンを持ってホームに降りる。少し寒いな。
携帯の電源を入れてホテルを確認する。よし。中央口だ。
中央口に向かって歩く。人、多い!そりゃそうだ、通勤ラッシュの時間帯だもん。
人の波をかき分けて外に出る。キョロキョロしながらホテルを探す。あ、あった。ここだ!
位置情報を確認すると、まだホテルにいた。もう少ししたら降りてくるかな。いつもこのくらいの時間に連絡がくるし。そう思っていたらメッセージが来た。いってきまーす。そう書かれていて、大当たり!と内心喜んでしまった。
返事はせずにホテルの前のガードレールに寄りかかる。く、来るかな・・・。
そろそろ、来るかな。ロビーを見つめていると、オフィスカジュアルな和多流くんが携帯を見つめて歩いてきた。自動ドアを抜けて階段を降りてパッと顔を上げる。
あ、あれ!?メガネかけてる!?
バチっと目が合う。和多流くんは胸ポケットに入れようとした携帯を落とした。おれは肩から鞄がずり落ちた。
「・・・・・・え?」
「・・・あ、お、おは、よぉ・・・」
もっと、違うことが言いたかったのに。もう少し明るく、なんか、もっと楽しく、声をかけるつもりだったのに。じゃーん、来ちゃったー!みたいな・・・。失敗、した・・・。
和多流くんは動かなかった。つま先からじーっとおれを見つめ、また目が合って、メガネを外して目を擦った。
「あ、き、来ちゃった・・・えへへ、」
「あー・・・はい、はい・・・」
あ、引いてる・・・。そりゃそうだよね。これから仕事だもん。
カッと顔が熱くなる。自惚れてた。いろんな言い訳をしても来たのは、喜んでくれると思ってたからだ。恥ずかしい・・・。帰りたい。
俯いて服を掴む。
おれは、嬉しかったから・・・和多流くんも嬉しいかなと思ってたけど、こんな朝から、来たら、ウザいよな・・・。
「あ、もしもし。おれ。藤堂です。うん・・・あのさ、おれ、熱あるみたいで・・・。悪い。休むわ。うん。ごめん。じゃあ」
顔を上げる。
いつの間にか携帯を拾って、どこかに電話をかけたようだった。
顔色は変わらず、携帯をポケットにしまって近づいてくる。ガシッと腕を掴まれ、思い切り引っ張られた。
そのままホテルの中へ戻っていく。
「あ、い、いたい、」
「・・・」
「あの、ごめんなさい、勝手なことしてごめ、」
足をもつれさせながら階段を登り、1番奥の部屋のドアをカードキーで開けると、背中を押されて部屋の中に押し込まれた。転んで膝を打ち、思い切り倒れ込む。
「い、!あの、ごめんなさい!ぁうっ、」
覆い被さって、唇が押しつけられた。
キスだ・・・。
両手を握られる。ギューっと握り返し、目を閉じる。
「ん、んぅっ、う、」
「ん・・・!はぁっ、涼くん・・・?」
あ、名前・・・呼んでくれた・・・。嬉しい・・・。
返事をしようと口を開けると、舌がねじ込まれた。
「ぁむっ、んんっ!んー・・・」
「何でいるの?夢?おれ、幻覚見てる?」
顔が離れ、呼吸を乱しながら見つめ合う。
「はぁ、はぁ、あの、顔、見たくて・・・」
「・・・本物?」
「うんっ。和多流くんに会いたくて、来た、」
「・・・っ!んっ、」
また、キス。
手を解いて首に回すと、ガシッと顔を掴まれて何度も口内を犯された。
体が震えて、射精した。あまりの気持ちよさに、何度も何度も。
「はぁ、ん、んー・・・」
「んぁっ!あ、いっひゃぅ、いく、」
「ん、ん・・・!」
「ゔーーー!む゛ぅっ!んぐ、ゔぅっ、」
「たくさんいって・・・」
「あ、も、や、くち、や、きもちいーの、」
「トロトロ・・・美味しい・・・」
「しゅきぃ、・・・!もっと、ん、むぅ、む、」
「すき・・・だぁいすき・・・」
どれくらいキスをしていたんだろう。首に回していた手はいつの間にか力無く床に落ち、和多流くんの力強い手が握っていた。
体が痙攣する。また、いっ・・・。
「あ、はぁあ・・・ん、」
「あ゛ー・・・もっと・・・涼・・・」
「ひ、ひもちぃ・・・いっひゃうの・・・」
「うん、いってごらん・・・」
耳元で囁かれて、ガクンガクンと腰が跳ねた。
「お゛・・・!あ゛・・・!」
「上手だね・・・。何回いったのかな」
ジーンズのチャックが降ろされる。
籠った熱が広がった気がした。
力が入らない。起き上がれない。
「あぁ、こんなにベトベト・・・。掃除してあげるね」
柔らかくて熱い舌がペニスに触れる。
「あぅう~・・・!やぁ~・・・!」
「ん、ん、・・・濃いね・・・。1人でしなかったの?」
「は、ひぃ、!いく、いく!」
「うん、いいよ」
パクッと咥え、ぢゅるるっと吸われた。
腰、気持ち、いい!
「ん。まだ出るかな。たくさんいけたねぇ。可愛いなぁ・・・」
「和多流くん・・・!」
「・・・あ、ご、ごめん・・・!ごめん!大丈夫?」
急に我に返った和多流くんがおれの顔を掴んで目を合わせた。
頷くと、ホッとしたように笑った。
「涼くん・・・」
「あの、んと、」
「あ!!シャワー浴びて!その間に片付けしておくから!」
「え・・・」
「立てる?あの、来てくれて嬉しい!でも何で?ていうか日帰り?帰っちゃうの?じゃなくて、お腹空いてない?大丈夫?鍵かけた?」
う、わぁ・・・会話がはちゃめちゃだ・・・。
パニックになってるのかな・・・。
ゆっくり立ち上がってユニットバスへ入ると、タオルとバスローブそこね!と言って扉を閉めた。
と、とりあえずぐしゃぐしゃの下着を洗おう・・・。
軽くシャワーを浴びて下着を洗い、そっと扉を開ける。
ベッドへ向かうと、和多流くんは服を着替えていた。
少しシワになった浴衣を着て、おれを見る。
「タオル、足りた?小さいのしかなかったでしょ」
「うん、大丈夫。・・・あの、パンツ干していい?」
「うん。そこにかけたらいいよ。・・・で。涼くん」
椅子の背もたれにパンツをかける。顔を上げると鏡があった。鏡越しで和多流くんと目が合った。
するっとお腹を撫でられた。
「本当に本物だよね?」
「うん、」
「だよね。舌の厚みも匂いも涼くんだもん」
「急に来てごめんね」
腰を掴まれ、グリンっと回された。正面で向かい合う。
「・・・本物だあ・・・」
「ん・・・」
「・・・涼くん」
「ん?」
「涼くん・・・。キス」
返事をする前に、唇が重なった。
何度も角度を変えて、うっとりとキスを堪能する。気持ちいい・・・。ちゅ、ちゅ、と優しい音を立てて唇が吸われ、腰が押しつけられた。足を絡めて押しつけ返すと、ゆるゆると動いた。
「ん、ぅん・・・」
「涼くん・・・すごく気持ちいい・・・。来てくれるなんて思わなかった・・・。嬉しすぎて暴走した。ごめんね。乱暴にして、ごめんね。怖かったよね?」
「び、びっくりした。怒ったかなって・・・」
「マジで現実と妄想が区別できてなかった。早く部屋に押し込んで確認しなきゃって焦っちゃって・・・膝、打ったよね?大丈夫?痛い?」
「赤くなってるけど、痛くないよ。う、うれ、しい・・・?」
「え?」
「あ、いや、あの、おれがいて、その、嬉しい、かなって・・・」
「めちゃくちゃ嬉しいよ!帰したくないもん!」
きつく抱きしめられる。嬉しい・・・。幸せ・・・。
しばらく和多流くんを堪能して、ベッドに倒れた。
何度も頭を撫でてくれて、何度もキスをして、何度も素肌に触れて、目を合わせて笑った。
「涼くん~・・・!」
「へへへ、嬉しい」
「可愛いよぉー・・・!」
「仕事、休ませちゃってごめんね・・・」
「・・・え?おれ仕事休んで・・・あ!しまった!電話しないと!!」
「え?してたよ?!」
「あ、マジで!!?覚えてねぇ・・・!」
「そ、そんなにパニックだったの?」
「いやもうさ・・・天使がいるって、思ったら思考がぶっ飛んだ」
「は?天使?」
「自動ドアから出たらちょこんって天使が立ってたんだよ。おれ、天に召されたのかと思った」
「反応が薄かったからめちゃくちゃ焦ったよ。仕事、休ませちゃってごめんなさい。お昼とか一緒に食べられたらなって思って・・・それで、来たんだ。それだけだったんだ」
「こんな知らない土地でウロウロされたら気が気じゃないからどんなふうにしてても休んでたよ。たまにはこういう休みもいいじゃん。あぁ、幸せ・・・」
よかった・・・。
和多流くんの手が激しくお尻を揉み始めた。
したいのかな。
さっきからそういう雰囲気ではあるけど、手を出してこないんだよな。おれから来て欲しいとか?それともさっきちょっと急いじゃったから?遠慮してる?
「うー。お尻柔らかいー。可愛い」
「・・・いいよ、好きなようにして」
「ん。・・・抱きたいけど、もう少しこのままでいたいなーって気持ち・・・。あの、何時に帰っちゃうの?」
「あ、うーんと、」
「終電は危ないから・・・名残惜しいけど明るいうちの方がいいよ」
寂しそうに頭を撫でてくる。ぎゅーっと抱きつくと、和多流くんは無言のまま甘えるようにくっついた。
「と、泊まっちゃおうかな・・・」
「え?・・・でも、始発じゃ間に合わないでしょ?調べてみるね」
「休みなんだ」
「・・・え?本当?休み取ってくれたの?」
「うん。だから、このホテルが空いてればここ泊まろうかな・・・。空いてなかったから他のところ探すよ」
「いや、ちょっと待ってて」
和多流くんは立ち上がると浴衣を整えて部屋を飛び出して行った。
え?
何?
何か探しに行ったの?
ぼーっとしながら部屋を見渡す。ドレッサーの椅子に引っ掛けたパンツがなんだか情けなかった。ふと視線を下に移すと、ドレッサーの下に紙袋が押し込まれていた。
椅子をどかして引っ張り出す。お菓子の箱がいくつか入っていた。
ご当地限定のやつ。これはもしや。
「お待たせ!あ!」
「・・・和多流くん、これ・・・」
「あー、うん、えと、・・・いや、言い訳しません。お土産です。最終日に持って帰るつもりで・・・」
「買いすぎだよ」
やっぱり。
おれの好きなやつばっかりだもん。
あ、漬物も入ってるし。お茶っ葉も。
「だって会えないからお土産でも買わないと気が紛れなくて」
「袋パンパンじゃん。あ!割れ物まで入ってる!」
「いやー、ぬる燗飲む時にいいかなーって・・・ペアの・・・お猪口・・・」
「・・・ねぇ、最終日までまだあるのに、こんなに買ってどうするの?まさか、まだ増えたりするの?」
「・・・だってさ!夜は1人なんだもん!!涼くんのことたくさん考えちゃうんだもん!!そりゃー増えるに決まってるじゃん!」
「開き直らないでよ」
「・・・喜んで欲しいんだよ・・・」
唇を突き出して言うから、笑ってしまった。
嬉しいよと言うと、ホッとした顔になる。
「涼くん、キスしよ」
「うん。好きだね、キス」
「寂しかったんだよ」
「・・・あのね、なんでさっき、メガネしてたの?」
「え?あぁ、ちょっとぼやけてて。なくても見えるけどかけてたの。惚れた?」
「う・・・か、かっこよかったです、」
「うれし・・・。可愛いなぁ・・・」
「ベッド、」
「うん。行こう」
立ち上がった時、インターホンが鳴った。飛び跳ねてベッドの陰に隠れる。会社の人が来たのかも。ビクビクしていると、和多流くんはくすくす笑いながらドアに近づいた。
何か話をしてすぐに戻ってくる。
「ふふっ。猫みたいな動きだったね」
「な、何?誰?大丈夫?」
「大丈夫だよ。はい、これ」
渡されたのはタオルと浴衣とバスローブ。キョトンとしていると、アメニティは引き出しにあるよ、とドレッサーの引き出しを開けた。
「え?」
「ん?」
「・・・あ、借りてきてくれたの?ありがとう」
「うん。もう1人泊まるから持ってきてくださいって話しといたからね」
「え?あ、部屋とってくれたの?わざわざ、ありがとう」
「部屋はここだよ?」
「・・・は?え!?」
「当たり前じゃん。ここ2人でも泊まれるんだから。ダブルにしておいてよかったー。贅沢してやろうと思ってこの部屋にしたんだけど、涼くんが来てくれるなんて思わなかったから。今夜一泊、のんびりしようね」
ニコニコ。すっごくニコニコ。おれも、嬉しいけど・・・いいのかな。
借りたものをドレッサーにおいてベッドに腰掛けると、そっとバスローブをずらされた。
和多流くんはいきなりメガネをかけると、問診のお時間でーす、と低い声で言った。
「えっ、」
「はい、この何日かオナニーは行いましたか?」
「え、え、いきなり、」
直視できない。顔を下げるとそっと指先で顎を持ち上げられた。
「答えてください?」
「う・・・し、しまし、た、」
「ペニスだけ?」
「・・・はい、」
「正直に」
腰が甘く痺れる。
「あ、・・・!ほ、ほんと、は、・・・エネマグラ、しました、」
「電動?」
「う、」
「あぁ、太い方かな?」
「は、はい、」
「何回いきましたか?」
「・・・分かんないです。・・・でも、一回いったら、とまらなくて・・・」
「他には?」
「してないです、」
「どうして?」
「・・・だってぇ・・・余計寂しくなる、」
「恋しくなる?」
あ、・・・胸が、キュッてなった。
恋しい・・・その言葉がしっくりくる。寂しかった。恋しかった。1人ですると虚しくて、和多流くんに会いたくなった。
「うんっ!恋しかった、だって、」
「おれもだよ」
「・・・ほんとぉ・・・?」
「何度もして、何度も名前、呼んだよ」
「おれも、」
「どんなふうに?」
「和多流くん、って・・・何度も・・・」
「・・・たくさんした?」
「・・・その、一回だけ」
「どうして嘘つくの?」
「・・・ごめんなさい。2回、しました。でも1回目は、事務的に触っただけで、」
「うん」
「・・・あ、」
指先が背中を撫でた。
熱い。気持ちいい。
和多流くんは両手を見せると、よく見て感じてね、とおれの首をその手で包んだ。
指の腹だけが触れ、ゆっくりと胸まで降りていく。
「あ、ひぃ、あ、んっ」
「気持ちいい?」
「いい!あ、もっとぉ・・・」
今度はまた背中に回り、10本の指の腹が撫でていく。背中が反り、ゾクゾクと震えた。
何度も往復し、ぜーぜーと息を切らすと唇が重なった。バチっと頭の中が弾ける。
「ん゛!む゛ゔぅっ!」
「いいよ」
「ん゛ーーーー!!」
腰、熱い!
大きな快楽が身を包んで、和多流くんにしがみつく。
今日、変だ。キスだけでこんなにいくなんて。
「や、や、和多流く・・・気持ちぃいの・・・」
「おれも・・・」
「服脱がしたい、お願い」
「いいよ」
もたもたと服を脱がして、ようやくあらわになった素肌に触れる。鎖骨にキスをすると、頭を撫でてくれた。
「涼くん、後ろから抱きしめたい」
「う、うん・・・好き・・・」
後ろに回り、優しく抱きしめられる。甘えるように頭を擦り付けると、顎を固定された。ハッとした。前に、大きな鏡がある。和多流くんの足がおれの足に絡んで固定され、開かされた。
「あっ!」
「よく見てごらん。とろけた顔・・・。いつもこんな顔でおれを誘惑するんだよ。他の人に見せてたらどうしようって、気が気じゃない」
「や、!」
「ちんちんも丸見えだね。可愛い。ほら、大好きな乳首、可愛がってあげるよ」
指先が触れる。それだけで腰が跳ねた。
「ほら、ゆっくり撫でて・・・」
「あ、あ、あぁ、ぅうん、」
「ゆーっくり・・・」
「あー・・・!」
「前見て」
「ふ、んんーっ・・・!」
鏡越しで目が合った。ぅあ・・・気持ち、いい・・・。好き、好き・・・大好き!
「好き・・・!大しゅき・・・!」
「おれも大好きだよ」
「あ、あぁっ、あぁんっ、あー、あー、」
「大きな乳首がぷっくりしてきたね」
「きもち、」
「うん。大好きだよね?おれに乳首、犯されるの」
「好き・・・!もっと、」
「気持ちいいってたくさん言ってごらん。すごく良くなるから」
「う、う、う、ぅ~・・・!」
「キスしよ?可愛い・・・たくさん甘やかしたいな」
「ん、ん!」
必死に唇を押し付ける。
舌で撫でられるの、気持ちいい。頭、溶ける。
「ふむっ、む、む、・・・んぅう~・・・!」
「ははっ、おれの顔、好き?キスしてる時もずーっと見つめてくれてるね」
「す、き・・・あぅ、あ、あぁ、乳首、らめ、」
膝を擦り合わせる。
胸が熱い。迫り上がってくる。
「あ゛、あ゛、あ゛ぁぁあ!いぐ、いぐ!」
「かわい。好き・・・」
「いく!いくの!や、や!声やだ!きごえちゃうゔ!」
「それはダメ。ん、」
「はむっ、ん!」
ガブっとキスをして、激しく達した。
ビクビク震えながらぼんやりとキスをしていると、和多流くんが離れた。何故か少しだけ寂しそうに笑う。
のろのろ動いて首に手を回し、抱きついて顔を寄せる。
「どうしたの?なんで、そんな顔、するの?」
「・・・涼くんが、来てくれるとは思わなかったから・・・」
「うん」
「ゴムもローションも無いから、抱けない・・・すごくしたいのに・・・包まれたいのに、悔しいな」
すごく寂しそうに笑うから、胸が苦しくなった。
包んであげたい。全部受け止めたい。
「和多流くん、」
「ん・・・」
優しくキスをして腰を押し付ける。ペニスが重なって、和多流くんの大きくて骨ばった手が包んだ。その手を止めて、首を横に振る。
「疲れた?」
「少し、待って」
「やだ。止めたくない」
「いい子だから、ね?お願い」
「・・・分かった」
不満そうに手を離す。和多流くんから離れると、不貞腐れたようにベッドに寝転がってしまった。
カバンを開けて財布を出す。
「和多流くん」
「何」
「あったよ、コンドーム」
「え!?」
ほら、と連なったパウチを見せると、和多流くんは嬉しそうな顔をした。
ベッドから降りておれの隣に腰を下ろす。
「なんであるの?」
「だって、前に、マナーだよって言ってたじゃん。入れておきなって」
「うそ、律儀に入れといてくれたの?嬉しい」
「え、嘘だったの?」
「マナーでは無いけど入れてあると便利だよ。おれも入れてたけど、ほら、前に我慢できなくて車でしてくれた時に使い切っちゃって・・・」
「・・・入っててよかったね」
「嬉しすぎて叫んじゃった。・・・あ、あの、違うからね?体目当てなんじゃなくて、涼くんと気持ちいいことしたくて、」
「もぉ、分かってるよ。焦らなくていいよ」
「・・・ん」
「・・・あと、これ、はい」
ポーチから小さなボトルを出し、大きな手に握らせる。
恥ずかしい・・・。
「・・・持ってきてくれたの!?」
「う、うん・・・。おれだって、したかったんだもん・・・」
いつも使っているローション。和多流くんはパーッと顔を明るくさせると、腕を掴んでベッドに乗り上げた。素直に倒れると、またまたキスの嵐。
「んはっ。ははっ。キスしすぎて唇腫れたらどーしよ」
「ふふっ。和多流くんのたらこ唇見たいかも」
「好き、好き。ほんとに、愛おしい。おれとしたいと思ってくれて、ありがとう。嬉しい」
「おれも、だよ。体目当てなんて思わないよ。ていうか、おれこそ体目当てみたいだもん・・・」
「それでいいよ。おれのこと、求めてくれるなら・・・なんだって嬉しい。あぁ、ちょっと待ってね。下にタオル敷くね」
「ん」
「うーん、あんまり音を立てると苦情が来そうだから・・・寝バックでも、いいかな。本当は顔を見てしたいところなんだけど・・・」
「うん。す、好き、それ・・・」
「バック好き?気持ちいい?」
「くっついてくれるし、重みが気持ちいいから・・・」
「おれも好き。おれから逃げられない涼くんを見ると興奮するんだ」
「帰ったら、その、好き勝手、しよーね・・・」
「・・・いいの?本当に?好き勝手して、いいの?」
「うん・・・」
「じゃぁ!じゃぁ!顔面騎乗位!」
「何それ?」
「涼くんのお尻を顔に、下ろしてほしい」
「・・・やだ」
「え!?何で!?してよ!おれ出張頑張ってる!ご褒美欲しい!」
「ていうか、そんなことされて嫌じゃないの?お尻だよ?お尻が顔に乗るんだよ?」
「最高だよ。お尻ぺろぺろしてふやかせたい」
あ、これ、本気だな・・・。
断ったらすごく執念深く記憶して後々ネチネチ言われそうだな・・・。
渋々、いいよ、と返事をすると、小さくガッツポーズをした。
付き合う前はあんなに格好良かったのにねぇ・・・。今じゃ駄々をこねる子供みたい。まぁ、今の方が好きなんだけどさ。
駄々をこねられるとキュンとする。
「あの、じゃあお尻触っていい?」
「う、うん・・・あの、恥ずかしいからあんまり見ないでね。明るいし・・・」
「朝日に照らされるお尻なんて最高にエッチで最高に可愛いから見るに決まってる。あ、ローションローション・・・。ゴムつけておこ。すぐ入れるように」
ワクワクした顔でコンドームをつけた。か、可愛い・・・。来てよかった・・・。
和多流くんはおれの足を開かせると、じーっとペニスを見つめた。う、大した大きさじゃないし立派なものでもないから恥ずかしい・・・。
「・・・綺麗な形だねぇ」
「え?」
「ずーっと思ってたんだ。綺麗だね。本当に・・・。もうおれしか見れないと思うとすごく満たされる。可愛い。綺麗だよ。すごく、すごく興奮する」
ちゅ、ちゅ、と満遍なくキスをされる。ペニスが揺れて先走りが溢れた。
お尻がむずむずする。早く、触ってほしい。
太い指がローションを絡めてゆっくり入ってきた。久しぶりの和多流くん。目がチカチカする。気持ちいい・・・。
「あ、そこ・・・」
慌てて口を塞ぐ。恥ずかしい。焦って、早く触って欲しくて欲張ってしまった。
和多流くんは口の端を上げると、トントンっと指の腹でノックした。
「っ!!っ・・・!」
「久々だからたくさん声を聞きたいけど、これは家に帰ってからのお楽しみだね」
「くぅ、・・・!ん!」
「他の部屋に聞かせたくないもん。辛いと思うけど、少し我慢ね」
コリコリと引っ掻かれて腰が跳ねる。和多流くんの指、気持ちいい。あ、指輪、つけてくれてる・・・。仕事中もつけてたのかな。どうしよう、すごく、嬉しい・・・!
きゅーっと中が締まった。
「早いね。いきそう?」
口を塞いだまま頷く。ちゅ、と音を立てて指が抜かれた。
「あ、」
「まだいかせないよ」
「ん、う、」
「・・・可愛い。パクパクしてるね。・・・動画撮りたい。いい?」
「え!?」
「嬉しすぎて・・・全部撮っておきたい。今のとろけた涼くんがほしい」
携帯を向けられる。もう撮影しているようだった。枕を抱きしめて顔を隠す。和多流くんは何も言わなかった。じっくりと撮影し、お尻を割る。あ、そんな、ところ・・・!
指が入り込み、拡げられた。
「綺麗・・・中がピンクで、とろけてる・・・」
「ふ、うぅ・・・!」
「こんな綺麗なところにおれが入っていいのかな・・・」
「あ、あ、あ、!」
コリコリと刺激される。やだ、いっちゃう、いっちゃう・・・!
音が、響く。
「可愛い・・・」
「んひっ、ひっ、いくのぉ・・・!いっちゃぅ、」
「もっと言ってごらん」
「いくっ、いく、いく、いく、いきたい、あ、いくっ!い、・・・はぁ、ん・・・」
指がぬかれた。力が抜けて脱力する。寸止め、キツイ・・・。腰に熱がまとわりついてる。
「いきたかったね」
「い、いきたい・・・」
「もう少し我慢ね」
「あ、だめ、指入っちゃダメ!いくの、いく、いくぅ、い・・・!く、のぉ・・・!いきたいの・・・!」
「ふふ。ほら」
「ふんっ!あ、いくいくっ、い、・・・!」
「まだだよ。もっと教えて」
「それいくっ、いくいく!いっちゃ、・・・!んぁあ・・・!」
「ほら、頑張れ」
「いくぅ!ひ、ぁあん・・・!いかせて・・・いか、」
「スパンが短くなってきたね。少し休憩しようか?」
「や!やだ!して、してよ・・・いかせて・・・我慢、できないよぉ・・・」
「可愛いね」
携帯を投げて、深く息を吐いた。ぺと、とペニスが押し付けられたので、慌てて首を横に振る。
「今はダメ!声我慢できない!」
「できないじゃなくて、するんだよ」
「や、やだ、・・・!や、」
「ほら、後ろ向いて?」
「優しくしてぇ・・・!」
「え?」
「や、やさ、優しく、して・・・!久しぶりなんだから・・・!お願い、」
「・・・そっか。そうだね。じゃあ、帰ったらたくさん意地悪していいかな?首輪つけて、目隠しして、おもちゃ使っていじめぬいていい?約束してくれる?」
「・・・お尻、叩く?」
「もちろん」
「イラマ、する?」
「するよ」
「・・・意地悪、だけど、」
「うん」
「優しく、して、くれる・・・?」
「するよ。・・・あれもつけたいな。貞操帯。いい?」
「うん・・・帰ってくる日、つけて待ってる・・・」
「本当?嬉しい」
嬉しそうに笑うから、つられて笑う。つぷ、と指が入ってきた。
腰が大袈裟に跳ねる。
「んあっ、」
「可愛い」
「は、はひっ、ひっ、いく、いくいくいくっ」
「いっちゃうの?もう少し自分で我慢できる?」
指の動きが強くなる。腰を持ち上げて激しく振ると、ガシッと腰を掴まれた。
「いくの、いくっいくっ、」
「ほら我慢、我慢」
「いぐぅ・・・!い、い、いっ、」
我慢、我慢・・・!
したいのに、できない。目の前が弾ける。慌てて口を塞いで声を押し込んだ。
腰が痙攣する。お尻が熱い。気持ちいい。
「ん゛ん゛ん~~~っっっ!」
「ほらほら。我慢だよ」
指が止まらない。いってる。すごい、たくさん、いく。
ガクガクと体を揺らすと指が抜けた。
ドサ、とベッドに落ちる。ヤバい、今ので、かなりいった。
気持ちいい・・・。
「・・・いれたらいきっぱなしになっちゃうかな?」
コロン、とうつ伏せにされた。
ぐったりしていると手を握ってくれた。和多流くんの体が重なって、しっとりと肌が馴染んで気持ちいい。
チロチロと耳の淵を舐める。
「ふ、ん・・・」
「はいるね」
「奥、きて・・・」
「好き?」
「好き・・・和多流くん、好き・・・」
「おれも大好きだよ」
指先を口に入れて吸い付くと、舌を撫でてくれる。ずぐ、とペニスが入ってきた。
中をえぐるように進んでくる。
「あ゛っ・・・!あ、あ、」
「すっご・・・絡みつくね・・・」
「いっちゃぅう・・・!」
「いいよ」
捲れる感覚が気持ちよくて、軽く達した。
トンっと奥に当たった瞬間、全身が震えた。
「あ゛・・・!!」
「上手・・・よく声、我慢できたね」
「い、いっひゃぅ、いっちゃ、いっ、いっ、あ、」
「ん、」
優しく腰が動く。気持ちいい。ねっとりと和多流くんのペニスがおれを絶頂へ追い立てる。
「いっ、くぅうっ・・・!んぉ、あ!いって、いっ、いっ、」
「そう、そう。いっていいんだよ。気持ちいい・・・」
「い、いき、しゅぎ、いきしゅぎ、あぅ、あっあっあ、いく、いくっ」
「ずっといってるね。可愛いね。気持ちいいって言って、頭の中でもずっと言っててごらん。すごくよくなるよ」
「きもちい、きもちいっ、いぐっ、い、ぐぅ~・・・!」
腰、止めて。止めないで。気持ちいい。もうやだ。いきたくない。いく。出る。全部出る。気持ちいい。気持ちいい。気持ちよくて、死んじゃう。
「涼くん、おれ腰動かしてないよ。可愛いね。擦り付けてる」
「とめ、とめて、いくの、いくっ、またいく、きもぢいぃ、いくのっいくっ、」
「うん。すごい痙攣してる」
「しゅごいのぉ・・・」
「うん・・・すごいね・・・」
「あぅ・・・止めてぇ・・・!いくぅう~・・・」
「上手・・・好き・・・しばらくこのままでいようね・・・気持ちいいままでいようね・・・」
和多流くんが抱きしめてくれる。気持ちよくてたまらなくて、また達した。



********************



「・・・疲れた」
「だよね。いきまくってたもん」
2人でシャワーを浴びる。クタクタになるまでしても、結局和多流くんは最後までいかなかった。口でしたらすぐにいっちゃったけど。
「口の方が気持ちよかった?」
「どっちも気持ちよくて好きなんだけど、さっきは自分勝手に動けなかったからね・・・。音とか気にしちゃって。口でしてくれた時は満遍なく舐めてくれてし咥えてくれたし、顔がもうエッチすぎていっちゃった」
「・・・なら、よかった」
「ふふっ。それにしても、すごくたくさんいったね。可愛かったよ」
「・・・和多流くんが止めてくれないから、」
「おれ、腰動かしてないよ?最初だけだもん」
「え、うそだ」
「本当だよ。涼くんが腰動かして床オナまでしてたんだよ」
カーッと全身が熱くなる。シャワーを和多流くんの顔に当てると、ケラケラと笑った。
「そ、そゆこと言わないでよ!ばか!」
「可愛かったな。ずーっとおれに止めてって言ってるんだけど、実際腰動かしてるの涼くんなの。気持ちいいんだなーって嬉しくなっちゃった」
「さ、さ、最低・・・!和多流くんの、バカ、おればっかり・・・!」
「家に帰ったら、今度はおれが、おればっかりになるよ」
「っ、」
「楽しみ。・・・ふふっ。ねぇ、お腹すいたね」
お腹を撫でられる。頷くと、何か食べようと言われた。
お風呂から出て服を着る。
ホテルから出て街を歩いた。知らない土地で、知らないお店で、知らないご飯を和多流くんと食べた。
なんだか不思議。
ホテルに戻るとベッドが綺麗になっていて、気恥ずかしかった。
ベッドで和多流くんにもたれ掛かり、テレビを観る。
「夜はお鍋でも食べに行こうか」
「うん」
「何鍋がいいかな」
「んー、お肉」
「あはは、可愛い。鶏?豚?牛?」
「鶏がいい」
「おれも好き」
「ねー。和多流くん、鶏好きだよね」
「お酒飲む?」
「少し飲む」
「おれも飲もう」
「へへへ」
楽しいな・・・。
くしゃくしゃと頭を撫でてくれる。その手を握って指先にキスをする。
和多流くんが少し笑っておれの左手を取り、薬指にキスをした。
「指輪、似合ってるよ」
「そ、そりゃそうだよ。和多流くんが買ってくれたんだもん」
「ふふっ。そうだね」
「・・・明日の朝、さ、仕事行く前にご飯とか・・・」
「駅の喫茶店でも入ろうか。ごめんね、明日はいかなくちゃ」
「うん。じゃあおれそのまま、」
顎を優しく掴まれて、キスをされた。
少し寂しそうな目が目の前にあった。
「まだ言わないで。寂しいから」
「・・・うん」
「・・・ここにいて欲しい」
「・・・ん、」
「・・・嘘。ごめんね」
「・・・嘘なの?」
和多流くんはすぐに首を横に振った。とす、とベッドの上に倒されて、覆い被さってくる。
「帰ったら、たくさんキスして」
「うん、」
「たくさん抱きしめて」
「うんっ」
「たくさん抱かせて」
「おれも、キスして」
「うん」
「たくさん抱きしめて」
「うん」
「たくさん、抱いて」
「嫌だって言っても、止まんないよ」
「止めないで、んむっ、」
顔を固定されて深くキスをされた。息もできなくなるくらい、してほしかった。
2人で呼吸を乱しながら、目を合わせて少し笑う。
「好き」
「おれも好き」
「・・・はー。いい匂い。涼くん、大好き」
「あ、そうだ」
起き上がってバッグを漁る。1番下から大きな保存袋を取り出して、和多流くんに差し出す。不思議そうに首を傾げて受け取ると、目をくわっと開いた。
「これはもしかして涼くんの部屋着!?」
「うん。色違いのやつ。和多流くんが持ってるの返して」
「もしかして、もしかして、わざわざ着たのを持ってきてくれたの?」
「さ、寂しいって、言ってたから・・・」
「・・・嬉しくて泣きそう」
ぎゅーっと袋を抱きしめて、大事そうに枕の横に置いた。前の部屋着を回収する。
「ごめん、いつまで着てたやつ?」
「え?今朝」
「・・・最高です。ありがとうございます」
「・・・パンツは無理だったけど、アンダーシャツが、入ってるから・・・」
「ゔぞ!!?マジで!?涼くん~・・・!優しすぎる・・・!」
おれも、和多流くんのぎゅーってして寝てるし・・・。罪滅ぼしではないけど、何となく申し訳ないから喜びそうなものを入れておいた。
大喜びしてくれてよかった。何となく安心。
「涼くん」
「ん?」
「早く戻っておいで」
「あ、うん。わぁ!」
腕を引っ張られた。和多流くんの上に倒れ込むけど、しっかり抱き止めてくれる。
「夜もしたいな」
「あ、ぅ・・・ふ、普通のがいい、」
「うん・・・。あー、可愛いなぁ・・・」
「ま、前から、したい」
「ん・・・可愛い・・・大好き・・・」
服を捲られ、乳首に吸いつかれた。
すぐに反応してしまう。
そこからまた、乳首でいかされた。
お尻もたくさん揉まれた。背中を撫で、頭を撫で、トロトロに溶かされていつの間にか和多流くんに跨って腰を振っていた。優しく、静かに、声を殺して。
ちゅこちゅこと柔らかな音を立ててペニスをしごいてくれる。
「ふ、ふぅ、ふぅっ、」
「いきそう?教えて」
「だめ、和多流くんに、かかっちゃう、」
「たくさんかけて」
「ぃうっ、い、あぅう~・・・!ひゃんっ!」
乳首を摘まれて高い声が出た。口を塞いで和多流くんを見下ろす。
奥、トントンされてる。乳首も優しくこねられて、ペニス、大きな手で扱かれて、もう、頭が真っ白に、なる。
「涼くん・・・」
「ひぐっ、ゔくっ、ん゛ん゛っ」
「ずーっと奥にキスしてるの、分かる?ほら」
腰が緩く突き上げられ、ゴツ、と奥がえぐられた。気持ちいい・・・!きゅーっと締め付ける。和多流くんのが中で跳ねる。
「はん゛ん~・・・!!」
「涼くん」
「待って待って、まってぇ・・・!きしゅ、らめ、」
「嫌い?」
強く首を横に振る。好き。大好き。
「好き・・・」
「ほら、ちゅ、ちゅ、」
「お゛あっ!?」
腰を押さえつけられ、下から突き上げられた。天井に向かって吠える。だめ、声、・・・!
「~~~っっっ・・・!!」
「かわい・・・」
「れ、ちゃ、う・・・れちゃ、れちゃうぅ・・・!」
「何が?潮?」
「こ、こ、こえ、こえ、やら、和多流くんだけ、和多流くんだけに、」
「潮は?吹いてほしいな」
「だめっ!おねが、おねがい、ここ、ビジネスホテル、だし、声聞かれちゃうし、絶対我慢できないし、おれ、おれ、起きれなくなっちゃうし、和多流くんと、また後でおでかけ、したい、か、・・・あんっ・・・」
腰をくすぐられた。唇を噛んで耐える。和多流くんはニコッと笑うと、じゃあどうする?と首を傾げた。
「おれは見たいよ」
「だめ、」
「ダメなんだ?」
「こ、ここは、だめ・・・!っっ!?」
また下から思い切り突き上げられた。
体が痙攣する。やばい、もう、いく・・・!体を丸めて耐えていると、抱き寄せられた。倒れ込み、震える体を撫でてもらう。
「よく耐えたね。偉かったね」
「は、ぁあ・・・も、・・・」
「どこならいいの?」
「へ・・・?え?」
「どこなら好き勝手していいの?」
「い、家っ、家なら、」
「誰の家?」
「え?・・・和多流くんの、」
「ん?」
ガシッと顔を掴まれて目が合う。あ、間違え、・・・。
言い直そうとした時、お尻に衝撃が走った。
パンッ!と乾いた音。痺れた。
「ひぃっ!!?」
「何て言ったの?」
「ゔっ!ゔぅっ!」
何度も叩かれた。必死に声を抑えて目を閉じる。痛い、よぉ・・・!でも、でも、・・・なんで、気持ちいいの・・・!
「涼くん、もう一度聞くね?誰の家?」
「は、はひっ、い、ごめんなさい、ごめ、」
バチンッと叩かれた。振り切られた。痛みが勝る。
「い゛だいぃ!」
「・・・今のは、ごめんね。・・・ごめん。ごめんね」
優しく撫でられる。ヒリヒリ、する。
「は、は・・・和多流くんと、おれの、家・・・」
「・・・うん」
「2人の家・・・おれ、頑張るから・・・。ダイニングでも、しよ・・・?おれの部屋も、和多流くんの部屋も・・・しよ?ね?ね?和多流くんも頑張ってくれる・・・?」
「うん。・・・今、結構寂しいから・・・あんまり寂しくなるようなこと、言わないでね」
「寂しいの?一緒にいるのに・・・」
「・・・帰っちゃうの分かってるもん。寂しいよ」
「でも、家にいるよ?2人の家で、待ってるよ。部屋も綺麗にしておくね。コンドームも足しておくし、・・・貞操帯着けて迎えに行くから、おれ、明日から着けて過ごすから、1人でしないから・・・和多流くん、可愛がってね・・・?和多流くんが外して?ね?」
「・・・じゃあ、お迎えの時に鍵、もってきて」
「うん」
「・・・休みもとってほしい」
「へへ。ちょうど次の日が休みだよ」
「本当?」
「うん。・・・て、貞操帯つけたところ、毎日、写真、送ろうか・・・?」
「うん!欲しい!」
「コスプレも、してあげるよ・・・。寂しくなってる暇、ないよ」
「うん!うん!おれの部屋にあるから!何でもいいから!」
「・・・和多流くんもなんか、写真送ってね」
「うん」
「・・・ちょっと萎えちゃった?」
「ちょっとね。寂しかったから」
「・・・一回抜いていい?」
「え?」
「す、寸止めのまま・・・ご飯、行こうよ」
「・・・ヤバいな。すげー興奮する。戻ってきたら舐めてくれる?」
「うん、」
「涼くんも寸止め?」
「うん・・・」
「後でたくさん突いてあげる」
ずる、と和多流くんのが抜けた。
そのまま少しだけ触れ合いながら絶頂へ登り詰めて止めて、おしゃべりして、また登り詰めて、止めて、そんな遊びを繰り返した。
和多流くんは額に汗をかいて、キツイ、と笑った。おれも、と言うとキスをされた。
夜は結局お鍋は食べなかった。
個室の居酒屋に入って、ひとしきり頼んで隣に座り、ずっと甘えていた。
くっついて、布越しで触って、くすくす笑って、楽しかった。
和多流くんは、普段もこうしてくれたらいいのに、と少しだけ唇を突き出して笑った。
昔のおれが見たらびっくりするだろうな。こんなに和多流くんにベタベタくっついて、甘えまくって、ついでにご飯食べさせてもらって。
「涼くん、これ食べる?」
「うん」
「これは?」
「食べる」
「可愛いな。家でもしたい」
「恥ずかしいからだめ」
「今は?」
「今はいいの」
「ふふっ。可愛い・・・。あー、嬉しいな。おれのなんだもんな。大好き」
「・・・ん」
押し付けるようにキスをすると、和多流くんの目つきが変わった。捕食者みたいな目。ゾワっと背中が震えた。
「あーあ、我慢しなきゃな・・・」
「・・・、」
「家に帰ったら、たくさんしようね。ね」
黙って頷く。
お店を出てホテルに戻ると、壁に押し付けられた。ガチャガチャとベルトを外され、下着ごと下ろされる。足の間に体を捩じ込むと、ぐんっと持ち上げられた。
「あ、!」
「ちゃんとゴム、あるから。もう入れたい」
呼吸を乱しながら和多流くんはスラックスを下ろした。おれにパウチを咥えさせると勢いよく破き、シャツのボタン外して、と小さく言った。和多流くんのシャツのボタンを外す。
「肩、噛んで」
「え、」
「早くっ」
慌てて肩を噛む。和多流くんが入ってきた。
目が、チカチカ、する。
顎に力が入る。
「ゔぅーーー!」
「あ゛っ!はぁー・・・ヤバい、もういく、」
「ん゛!ゔ!」
「はぁ、はぁ、涼くん、大好き、可愛い・・・気持ちいい・・・」
「ふ、ふぅっ、ふぅっ!」
「もっと噛んで。動くよ」
ガツガツと腰を打ち付けられた。
野蛮で、欲望だけの動き。気持ちいい。大好き。もっとして。おれのこと離さないで。
抱きついて、肩を強く噛む。鉄の味がした。こぼさないように吸う。
「あ゛、やばい、いくっ、はぁ!」
「んぁっ!わたぅくん、!」
むしゃぶりつくようにキスをする。ペニスが激しく跳ねた。嬉しかった。
和多流くんはぜーぜーと息を切らしながら笑い、いっちゃった、と言った。たまらない気持ちになって、またキスをした。



********************



「フレンチトーストどうだった?」
「おいしかった。お店探してくれてありがとう」
朝は喫茶店でモーニングを食べた。
フレンチトーストがあるお店を探してくれて、2人で食べた。
新幹線はもう来ている。なかなか乗ることができなかった。
和多流くんはニコッと笑うと、そろそろだねと言う。慌てて口を開く。
「・・・あの、おれ、明日ね、仕事早いんだ」
「うん、早く帰ってのんびりしてね」
「撮り溜めたドラマ、観ようかな」
「うん」
「・・・ば、晩御飯、」
「大丈夫だよ。大丈夫。後少しで、帰るからね」
ギュッと手を握られた。
最後の別れじゃない。すぐ帰ってくる。帰ってくるのに。なんで泣きたくなるんだろう。
今だけは、わがままを言っても許されるかな。
「・・・しぃ・・・」
「ん?」
「れ、連絡、ほしい、たくさん、ほしい、」
「する」
「・・・写真、」
「送るよ」
「で、」
「電話もする」
「・・・か、・・・帰りたくな、」
ベルが鳴った。あ、もう、バイバイだ。
寂しい。寂しい。グッと堪えて乗り込むと、和多流くんは小さく手を振った。
「涼くん、大好き。早く帰るね」
「一緒に、」
ぐんっと首元を引っ張られ、キスをされた。
すぐに離れて、トンっと胸を押される。
「愛してるよ。帰ったら、たくさんキスして」
和多流くんがそう言った時、ドアが閉まった。窓に手をついて顔を見る。寂しそうに笑っていた。
ゆっくりと走り出す。和多流くんは動かなかった。でも、顔がくしゃっと歪んだ。
ダメ。涙、出てくるな。
手を振って笑う。和多流くんが見えなくなった。
ボロボロと涙が落ちた。
寂しい。
一緒にいたかった。
何でこんなに寂しいの。
理由はわかってる。和多流くんがいることが、当たり前だからだ。こんなに長く離れたことが無かったからだ。
バイバイするのが寂しくて、一緒に暮らし始めたんだ。
いつもいつもずーっとずーっと、そばにいてくれたんだ。離れてみてようやくわかった。
しばらくドアのそばから離れられなかった。ただただ、過ぎ去る景色を見ていた。

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