Evergreen

和栗

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ぽやっとした顔でいつもの駐車場に現れた涼くんは、車に乗り込んだ瞬間脱力した。
「お帰り・・・どうしたの?」
「・・・ん・・あの、」
あ、様子がおかしい。
手を伸ばして首筋に触れる。
「熱いね」
「うん・・・」
なんか、唇も赤っぽいし、目が、ウルウルしてる。
「熱かな」
「なんかね・・・仕事終わったら、急に・・・なんか・・・」
「うん、うん。仕事中は平気だったの?」
「うん・・・。マスク、一応、してた・・・でも、でも、」
「今はしなくていいよ。苦しいでしょ。シート倒そうね」
「起きれなく、なるから・・このまま・・。それか、後ろに、」
「ここでいいよ。揺れが少ないから。解熱剤が残ってたはずだからそれを飲んで、寝ようね」
「シャワー・・・」
「うん、危ないからおれがやるから、目を閉じてていいよ」
急いで帰宅する。涼くんはスーツを脱いでアンダーシャツとパンツ一枚になった。いつもなら大興奮だけどそれどころじゃない。
シャワーを浴びてベッドに寝かせて、暖かくする。しまった。冷却シートがない。解熱剤、どこだっけ。
とりあえず買いに行かなきゃ。
自転車を漕いでドラッグストアに駆け込む。スポーツドリンク、解熱剤、冷却シート、おかゆ、ゼリーと、あとは・・・。
とりあえず目に付くものをすべて買って、家に戻る。
おかゆを温めている間に熱を測ると、39℃まで上がっていた。イ、インフルエンザ・・・?一気に不安になる。
涼くんのことだから罪悪感にさいなまれそう・・・!できることなら過労で合ってくれ!!頼む!!本当は嫌だけど!!そっちの方が幾分かマシだから!!
「わたるくん・・・」
「大丈夫?今色々買ってきたからね。みかんとか食べる?」
「・・・え?みかん?」
「え?」
「あ、あははっ・・!初めて言われた・・。おかゆとかじゃないんだ・・」
あ、笑ってる・・・。ほっとする。笑える元気はまだ残ってた。よかった・・。
「おかゆもあるよ。レトルトだけど・・・」
「ん・・・」
「他に食べたいもの、ある?」
「・・いいにおい、した。何か作ってくれたの?」
「あぁ・・ほら、電気調理器でなんか・・・よくわかんないけど魚のやつ、見ながら・・・」
「・・食べたいな。いいにおいだもん・・・」
「いやでも、体調が悪いのにおれの作った奴なんか食べたら・・・」
「治るかもね。えへへ」
もぉ・・・もぉお~~~・・・。嬉しいことばっかり言ってくれる・・。
恐る恐る持って行くと、涼くんは静かに食べ始めた。おいしい、と笑ってくれる。食欲があってよかったけど、不安しかない。大丈夫かな。お腹壊さないかな。
「眠くなってきた・・・」
「うん、寝て寝て。ほら、ちゃんと布団かけて」
「うん・・・ありがと・・・ごめんね・・部屋、ありがと・・・いーにおい・・・」
横になると、涼くんは少し苦しそうに寝息を立て始めた。
本当は隣で寝たいけど、起きた時に怒られそうだし何より涼くんがのびのび寝られないと回復できないだろうから、泣く泣く自分の部屋で寝ることにした。でも、心配すぎて寝られない。辛くないかな。あ、そっか。
起き上がってこの前購入した最新の携帯を起動する。これで監視すればいいんだ。天井につるしてある俯瞰撮影ができるスティックに携帯をセットする。よし、これでおれのタブレットを起動させてカメラを起動して・・・。
よし、涼くんが見える。
これで安心。
タブレットの音量を最大に上げて枕元に置いて目を閉じる。眠れる気がしないけど、とりあえず目を閉じておかないと。
時々寝返りを打つ音が聞こえて、涼くんがちゃんと動いていることが確認できて、少しだけ安心した。

**********************

『もぉー・・なんだよこれぇ・・・』
いきなり不機嫌そうな声がこだました。朝になっていた。タブレットを見ると怒った顔の涼くんが画面を睨みつけていた。
「おはよう!どう?熱測ろうね!」
部屋に滑り込むと、天井にぶら下がる携帯を指さし、外して!!と叫んだ。
慌てて外して電源を落とすと、ムスーッとした顔。
「一晩中監視してたわけ?」
「だって、不安で・・・。ちゃんと寝たよ?音量を最大にしておいて何かあったときに、」
「いらないよ、バカ!おれ、もう大人だよ?」
「だから何?心配だったんだよ。心配しちゃいけないの?」
「やってることが過剰なの!!」
「だって」
「だってじゃないでしょ。もぉ・・疲れた・・・」
辛そうに目を閉じる。
冷却シートを取り換えると、小さく、ありがと、と言った。か細いな・・・。
「病院行く?」
「嫌・・」
「検査だけでもしておこうよ。あ、成瀬さんに電話しておいたよ。明日も休めって言ってた」
「え!?な、何で勝手に電話するの!?」
いきなりガバッと起き上がった。はーはーと肩で息をして、おれを睨む。
「え?なんでって、」
「平気だもん!もう少し寝れば、今日だって行けるもん!」
「・・・あの、何言ってるの?少し冷静になりな?」
「だって、」
「おれ、風邪ひいてる先生に教わるの嫌だよ」
少しきつい言い方をすると、涼くんは小さくかく、と肩を落として俯いた。
「病院、行こう。財布持ってくる。着替えも。検査してもらおう」
「・・・違うもん、」
「うん、違うと思うけど必要でしょ。教育者として、しないといけないと思うよ」
無理やり着替えさせて車に乗せる。病院は混んでいた。2時間ほど待って涼くんは検査をした。陰性だったけど休むことは必須。のろのろと病院から出てくると、処方箋を持ったまま俯いた。
「薬もらいに行こう。行きつけの調剤薬局が無ければドラッグストアで受け取ろうよ」
「・・・・」
「・・・何か食べたいもの、ある?」
「・・・帰る」
「うん」
ドラッグストアで薬をもらって、帰宅した。
涼くんは玄関でうずくまると、ふーふーと呼吸を荒くして更に丸まった。
「涼くん!」
「頭、」
「痛いんだね。着替えて横になろう?おいで」
手早く着替えさせてベッドに寝かせる。苦しそうに顔をゆがめて壁際により、丸くなった。
おかゆを温めていると携帯が鳴ったので電話に出る。成瀬さんからだった。
『今大丈夫か』
「うん。今病院行ってきたけど、陰性だったよ」
『春日部が主に受け持っているクラスで、インフルエンザが流行しているみたいだ。数名休んでいたんだが、今日はさらに欠席者が多い』
「え!?そうなの?」
『念のため明日も休んだ方がいい。中途半端に出てくると悪循環だから。他の学生にも伝えてある』
「分かった。言っておく。・・・結構落ち込んでるんだよね」
『・・・まぁ、分からんでもないな』
やっぱり同じ受験生を受け持つ立場として、生徒が一番心配なのだろう。ましてや自分のせいで他の子にも風邪が移ったらと思うと、気が気じゃないだろう。
電話を終えて部屋に戻ると、涼くんが震えていた。慌てて布団に手を入れて背中をさする。
「大丈夫?背中痛い?」
「ふぇ、え、えぇん・・!」
「苦しい?今飲み物持ってくるね」
「ひ、ひとりに、して・・!うぇ、え、」
「あ・・うん。飲み物とおかゆ持ってくるね。そしたらおれ、仕事するね。何かあったら声かけて・・。携帯を鳴らすんでもいいからね」
ちゃちゃっと準備をして寝室のドアを閉じる。
どうしよう・・・。おれが余計なことを言ったから泣いてるのかも・・・。
でも、しょうがない。だって、強く言わないと今日、仕事に行こうとしていた。
受験生のために一日も休んでいられないのは分かる。去年だって相当根詰めていた。今年は自分の休みの日はちゃんと休んでほしいと、何度も何度も伝えてようやく理解してくれて、無理に出勤することはあまりなかった。だからこそ悔しいのかもしれない。もっと目をかけたかったのかもしれない。もっと寄り添ってあげたかったのかもしれない。
おれ、涼くんの仕事に対して口を出しすぎたかな・・・。
やりがいを、奪ってたのかな・・・。
仕事を進めていると、携帯が鳴った。見ると、涼くん。慌てて部屋に走る。
「はい!どうかした!?」
「え・・・なんで部屋にくるの?」
「え!?電話が鳴ったから・・・。何かあった?何か欲しい?」
「・・・アイス」
「アイスね!バニラでいい?」
「うん・・・」
走ってとりに行き、走って持って行く。途中で足をぶつけた。痛い。
涼くんは起き上がってアイスを食べ始めた。顔が腫れている。結構泣いたのかな。
「・・・うつるよ?」
「いいよ。一緒にいさせてよ」
「・・・さっき、ありがと」
「え?」
「・・・行くの、止めてくれたから。なんか、おれが行かなきゃダメなんだって、勝手に思ってて・・・。あはは、自意識過剰・・・」
「ううん。大事だよ。そう思ってくれる先生に教わる生徒さんが羨ましいよ。あのね、おれなんかいなくても大丈夫って思うよりずーっといい。本当に。でも、言い方がきつかったね。ごめんね」
「・・・うん。大丈夫。恥ずかしくて泣いちゃった。ダサいね」
「ダサくないよ。あの、成瀬さんから連絡が来てね、涼くんの教室、インフルが流行ってるんだって?また何人か欠席してるって言ってたよ。だから無理しないでちゃんと治せって言ってた」
「うん。先週から何人か・・。他の子、大丈夫かな・・。おれは陰性だったけど・・」
「まずは自分の体を優先しよう。ね?」
「・・・・ん」
おれをじっと見つめて、小さくうなずいた。
何か、言いたげ・・・。
少し待ってみたけど、涼くんはアイスを食べるだけだった。おかゆも半分くらい減っていた。
食器を下げて寝室に戻ると、寝転んでいた涼くんは少し驚いた顔をした。
「え、もう大丈夫だよ」
「え?!あ、そ、そうか・・。なんか癖で来ちゃうな」
「・・・ちゃんと寝るから安心してよ」
「うん・・」
「・・もぉ、じゃぁ、タブレット持ってきて」
「ん?うん」
「カメラ繋げて」
「え!いいの?じゃぁおれのパソコンで繋げていい?」
「うん。気になるんでしょ?おれ、風邪をうつしたくないから・・・」
「う、はい・・・じゃぁ、あの、遠慮なく」
いそいそとタブレットをセットして、仕事部屋に戻って接続する。手を振ると、寝転がった涼くんが小さく手を振り返してくれた。
咳とかは出てないな。それは安心。
時々ちらちらと涼くんを確認しながら仕事をしていると、目が合った。ぽやーっとした顔で画面を見ていた。
「大丈夫?気が散るなら、やめるよ」
『・・・んー・・眠い・・』
「ゆっくり眠ってね。夜になったら一回声かけるね。ご飯作っておくね」
『・・・もー少し・・見てる・・・』
ゆっくり瞬きしながら、眠たそうにこちらを見る。つい見つめ返すと、ふにゃっと笑った。
『仕事してよぉ・・・。かっこいいから・・』
「え?」
『仕事してる顔・・正面から見るの・・レア・・。見せて』
「・・・じゃぁ、ちゃんと寝るんだよ?」
『うん』
画面を小さくして、仕事に集中する。いつの間にか眠っていた。少し苦しそうな寝息が聞こえてくる。
急いで仕事を終わらせて、夜ご飯はうどんにした。
体調が良くなってきたのか、ぺろりと平らげて少し腫れた目をこすって、よく寝た、と笑った。
「よかったよ。ご飯が食べられるなら、安心・・・。あ、でもお風呂はダメだよ。汗を拭くだけにしようね」
「はみがきしたい」
「持ってくるね」
歯磨き粉をつけて持って行く。シャコシャコと丁寧に洗うと、ふらふらしながらキッチンでうがいをし、マスクを持って戻ってきた。
自分につけて、更におれにもつける。
「涼くん・・・?あ、」
顔が近づいて、そっと重なった。涼くんの唇の感触はないけど、形が分かる。熱が伝わる。目を閉じると、そっと手を握られた。強く握り返すと顔が離れていく。追いかけて無理やり唇を押し付けると、ふふ、と笑った。
「ごめんなさい。キスが、したかったんだ」
「いっぱいしよう?」
「もう、だめ。風邪が移っちゃうよ。熱が下がったら・・・治ったら、いっぱいしよ・・・・?」
「うん!しよう!」
「・・・叱ってくれてありがとう。へへ」
「・・・涼くんの、やりがいとか、奪ってないかなぁ・・・」
「え?」
「だってさ、無理に働くなって、しつこく言ってたし・・・休みの日はちゃんと休んでって、うるさかったよね・・・」
「なんで?うるさくなんかないよ。当たり前のこと、言ってくれてるんだもん。自分の体を大事にしないと、人に優しくできないよね。和多流くんが教えてくれたんだよ。だからね、ちゃんと休んで、和多流くんとも楽しく過ごして、おれの生活って、すごく豊かになったんだ。風邪、引いちゃったけどね」
「・・・本当?」
「本当。おれね・・・休んでいいんだって言われて・・・ようやく落ち着けたかもしれない。ずーっと動いてないと不安だったから。ありがと。大好きだよ」
まだ火照った顔で、ニコニコ笑って、おれの手を握ってくれる。
なんだか泣きそう。
この子、本当にずーっと立ち止まることなく生きてきた人だから、おれのところで休めているなら、こんなに嬉しいことはない。
いつだって休んでいいんだよ。いつだっておれが支えるんだから。
「ゆっくり、寝てね」
「うん。こんなに寝たの久しぶりだ。えへへ・・・。寂しいけど、寝よーっと」
「寂しい?なんで?」
「・・・だって隣にいないもん」
照れたように小さく言って、ベッドの海に潜っていく。だめだ。もう我慢できない!!
「わぁ!?あ、ちょっと、何で入ってくるの!?」
「おれだいぶ我慢したよ!?もういいでしょ!!一緒に寝よう!!」
「うつるから!!」
「いーようつったって!!絶対離さないんだから!!」
「ちょ、っとぉ・・!も、や、」
「変なことしないし!!寝るだけだから!!離さないから!!」
しばらくじたばたもがきながら攻防が続いたけど・・・涼くんが諦めたように力を抜いたので、嬉しくてさらに抱きしめる。
背中を撫でているとさきほどよりも穏やかな寝息が聞こえてきて、安心してしまった。そしてうっかりおれも寝てしまった。


涼くんは熱が引いて快調。で、あんなにくっついて寝ていたおれもなぜか快調。
バカは風邪をひかないって証明されたので、2人で笑った。



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