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しおりを挟む涼くんが、ぶーってしてます。
うつむいて、唇を突き出してます。
めっちゃくちゃ可愛い!!
でも、それを言ったらめちゃくちゃ怒られる状況だから、口をつぐむ。
「楽しみにしてたのに・・・」
「ごめんなさい・・・」
「・・・楽しみにしてたのに!」
「ご、ごめんなさい・・・」
「・・・もういいもん」
「い、行こうよ。ね?」
「行かない」
ぷんっとそっぽを向いて部屋に入ってしまった。
わー!!
やっちまったーーー!!
だって仕方ないじゃん!!
打ち合わせに指定されたのが涼くんが行きたがっていたカフェで、一緒に行こうねって言われてたけど仕事とは言え先に行ってしまったから申し訳なくて、せめてと思ってお土産を買ってきたのに・・・!
「涼くん~・・・」
何度ノックしても返事はない。鍵、かけられてるし!うわー!
「涼くん!あの、不可抗力だったんです!仕事で、あの、」
『黙っててくれたらよかったのに!』
「いや、そんな、嘘つきみたいなことできないし、」
『もういいもん』
「次のお休みに行こう!?ね!?」
何度説得を試みても、無反応。
正直、こんなことで!?って思ってしまったけど、すごく行きたかったんだよね。
しばらくするとガチャガチャと鍵が開いて、ドアも開いた。
涼くんはタプタプとスマホをいじりながらおれを見て、ニコッと笑う。
「犬飼さんと行ってくるね」
「・・・おぉ、そう、きましたか・・・!」
「楽しみー」
「・・・あの、お土産、」
「明日食べる」
「・・・しょ、しょうがなくない?仕事だったんだし。仕事だよ?」
「うん、そうだね」
「・・・お、怒るのは、違うと思うんだけど?」
「・・・ふん」
ツンっとしてお風呂へ入っていく。
さっきの、ぶーってした顔は可愛かったのに・・・。
仕事で仕方なかったのに・・・。
うーー!モヤモヤする!
************************
「いってきまーす」
「帰り、迎えにいくよ」
「いらないよ?車で行くもん」
「ん!!?だれの車!?」
「犬飼さんの」
「・・・あ、そぉ・・・」
「いってきます」
あの日からちょっとギスギスしてます。
お互いに譲らなかったので険悪です。一緒に寝てくれません。お風呂も入ってくれません。
迎えに行きがてらご機嫌取り、しようと思ったのに・・・!先手を打たれた気分だ・・・!
「ば、晩御飯までには、戻るよね?」
「分かんない」
「え!?」
「カフェの後、気になるお店があるからリサーチしたいって言ってたからついていくんだ」
「は!?聞いてない!!」
「おれも聞いてなかったよ。バレンタインに和多流くんにケーキを渡してきた取引先の女性の人だなんて」
あ・・・!?
そ、それに、怒って・・・!?
「じゃね」
ばたん、と無慈悲にドアが閉まる。
な、なんで、なんで気づかなかったんだ、おれ・・・!!
気づいてたら、仲直りだってできてたはず・・・!
今日だって一緒に行ったのはおれだったはず・・・!
うぅうぅうううぅっ・・・!!
・・・え、あれ?て、いうか、なんで知ってんの・・・??
おれ、言ってないよね・・・?
なんで知ってるの・・・!?
悩みまくっていたら結局夕方になった。
何もしなかった。ていうか気力が出なかった。
あーあ・・・。マジで帰ってこないし・・・。
ベッドでゴロゴロしながら涼くんの動画を見ていると、メッセージが届いた。犬飼さんからだった。
『今店に戻ってきました。春日部さんと一緒です。お迎えよろしくお願いします』
・・・なんか、この前のプチ家出(玲さんのところ)の時といい、今といい、涼くんて・・・おれのこと信じすぎじゃない?迎えに来ると思ってるんだよね?
だから帰ってこないんだよね?
超嬉しいよ。
ギスギスモヤモヤしていたけど、嬉しさの方が強くてついついオシャレ着を身につけて外に出てしまう。
無意識に速くなる歩調。少し荒くなる呼吸。
早く顔が見たくて勢いよくお店のドアを開けると、テーブル席にいた涼くんが驚いた顔をした。
「え」
「はぁ、はぁ、お、おかえり、」
「・・・あ、うん、ただいま・・・なんで分かったの?」
「え?犬飼さんから連絡がきたから・・・お迎え・・・」
「いいのに。ご飯食べたらちゃんと帰る予定だったよ」
「・・・そ、そこはさ!一緒に食べようとか、言ってほしい!」
「おれ、まだモヤモヤしてるからなぁ」
「お、おれだって・・・」
「カマかけただけだったけど、当たってたみたいだし」
「え?」
「バレンタインの時の人、だったんでしょ?いつもなら絶対にしないミスしてたもん」
「ミ、ミス?」
「打ち合わせの連絡がなかった、わざわざお土産を買ってきた、言わなくていいのに先にカフェに行ってきちゃったっておちゃらけて話してた、お土産を無理やり受け取らせようとした。以上」
「・・・う、浮気した人がすること、してるね・・・」
「へー。浮気したんだ」
「してないしてないしてないしてないしてない!!するくらいならおれ、ちょん切る!!」
「へぇー。本当に?」
「うん!て、いうか・・・涼くんといたいし・・・浮気とか、絶対できない・・・」
「ここお店」
「あ、は、はい」
「・・・ケーキ、美味しかったな。和多流くんと食べるの、楽しみにしてたんだぁ」
寂しげな顔でいうから、チクチクと胸が痛んだ。
おれも涼くんと行きたかった。涼くんとケーキが食べたかったよ。
「・・・ごめんね、仕事とはいえ・・・黙っておくべきだったね」
「その方がイライラしなくて済んだかな、今回は」
「・・・おれ、隠すの下手になっちゃったな・・・」
「・・・そうだね。前はもっと上手かったよね」
「だって、涼くんのこと傷つけたくないんだもん。全部曝け出して涼くんのこと、安心させたいんだもん。裏目に出過ぎちゃったけどさ・・・」
「・・・」
「・・・何もないよ。仕事の話だけ。本当に、本当。・・・信じて」
「・・・信じてるから、ムッとしてんの」
「えぇ??」
「信じてなかったら何も感じないし、何とも思わないよ。バカ」
「・・・難しい」
「ずーっと悩んでれば」
「・・・もうそろそろ、お風呂に一緒に入りたいから、仲直りしてほしいです」
涼くんの顔が真っ赤に染まる。慌てたように辺りを見渡すと、何言ってるの、と小声で怒った。
あ、やっとこっち、見てくれた。可愛いな。嬉しいな。もっと見ていたいよ。
「一緒に寝たいです」
「ちょ、」
「仕事だから、受け入れてほしいです。・・・次からは、もし、もしまた似たようなことになっちゃったら・・・変に誤魔化さないで、小細工しないで、ちゃんと言うから・・・」
「・・・仕事だって、分かってるよ。バカ。おれだって働いてるんだから、それくらい理解して受け入れてるよ。バカバカ」
「うん・・・」
「いつも、急に打ち合わせが入ると連絡入れてたくせに、何もないから・・・別に、いつもないなら分かるけど、あるのに、今回はなかったから、」
「ごめん。そうだよね。ごめんなさい」
「・・・今度、連れてってくれるなら、許してあげます」
「え?カフェ?もちろん何度だって連れていくよ。もちろんだよ」
「じゃあ、うん・・・はい」
テーブルの上に手のひらが置かれた。即座に重ねて握ると、すりすりと手の甲を撫でてくれる。
嬉しい・・・やっと触れたよー・・・!
温かくててしっとりしてて、気持ちいい・・・。
大好きだー・・・。
「お待たせしました」
犬飼さんがプレートを持ってやってきた。
「あ、あの、連絡ありがとうございました」
「いえ。今日は春日部さんをお借りしてしまってすみませんでした」
「おれが犬飼さんと行きたかったんです」
グサーっと槍が刺さる。
ダ、ダメージ、でかい・・・!!
おれじゃなくて、犬飼さんと行きたかったのか・・・!!
おれは涼くんといきたかったよ・・・!
「また行きましょうね」
「えぇ。さっき話していたお店にも、ぜひ」
ニコニコと2人で楽しそう。
お、おれだって、おれだってーー・・・!!
ついハンバーグを切る手に力が入る。
無言で食べていると、こつんと足を蹴られた。
「口、ついてるよ」
「え?ん、むっ・・・」
「赤ちゃんみたいだね」
細い指先で口を拭って、そのままぷっくりした唇の中に吸い込まれていく。
おれも吸い込まれたい。
「ありがと・・・」
「ん」
「・・・」
「・・・おれだって寂しかったんだよ」
「えっ、」
「だってギスギスしてたし、モヤモヤしてたし、ぎこちないもん。あんなに怒るんじゃなかったって、ずっと思ってた」
「・・・うん、おれも・・・」
「明日もお休みだし、ご飯、好きなの作るよ」
「・・・うんっ、ありがと・・・」
「帰ったら、録画したやつみよう。アイス特集のやつ」
顔を見合わせて笑う。
明日、挽回する!
涼くんに、やっぱりおれと出かけるのは楽しいって思わせる!
思ってもらいたい!
必死に頭の中でプランを練りながら、涼くんの笑顔を見て安堵した。
笑った顔が1番いいよね。
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