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1章
14-3
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「最近さ、お前機嫌いいよな。なに、上手くいってんの?アオちゃんと」
「……お前がアオの名前を呼ぶな。というか、なんで俺がお前と飯を食わなきゃならない」
満席御礼のザワつく店内。
常連である俺とギルバートは、いつも通り隅の窓際の席を陣取っていた。
「いいじゃねーか、たまにはよォ。お前最近付き合い悪すぎんだよ。ちゃーんと部下を大切にしないと、いつか痛い目見るぞぉ?」
……なんだこの酔っ払いは。
ギルバートが飲んでいるビールは今で3杯目。酒豪で有名な彼がそれだけで酔っ払う筈ないんだがな。
「煩い、余計なお世話だ。……で、わざわざ俺をこの店に呼び付けた理由は? くだらねぇ理由なら容赦しねぇぞ」
本来ならこの時間、いつもの様にアオの診療所に行くつもりだった。仕事が終われば、2階で飯を作り一緒に食べる。明日、診療所は休みの筈だから朝まで彼を可愛がるつもり……だったのだが見事、この男に予定を台無しにされた。
俺は不機嫌を隠すこと無く、飲んでいたカクテルの氷を口に含み、ガリっと奥歯で噛み砕いた。
「……天子信仰の奴らが、アオに目を付けてる」
それ迄の浮かれた様子のギルバートの顔が一転、戦場で見せる真剣なそれに変わった。
「は? 天子信仰って、天子フタバを崇拝する……あの? 確か最近一部が過激派になったとかでお前が担当していたよな」
『天子信仰』
それは天子フタバを信仰する宗教団体。彼らはフタバを『神』だと信じ、崇拝している。
別に違法行為をしているわけではないが、一部の狂信者達が暴徒化している報告が上がり、それをギルバートが担当していた。
「そ。……どうやら、天子フタバのお眼鏡にかなったのはお前のようなんだよ、イーサン」
「あ? どういう事だよそれ」
奥歯にものが挟まったような言い方に、俺は思わず眉を寄せる。
「鈍いよなぁお前。どうやらフタバはお前の事が気に入り、結婚相手にと考えているようでな」
「なんだそのクソ迷惑な話、どこから湧いた」
確かにアオが本部に初めて来たあの日を境に、フタバが俺に面会を求める頻度は増えた。だがその度に理由を付けて断っている。
「まぁ聞けって。だが、当のお前は一向に靡く気配がない。そんな時、信者の1人が『どうやらイーサンがある診療所に入り浸っている』という情報を得た」
「……それで?」
「お前がフタバ様に見向きもしないのは、その診療所の医者の『アオ』が原因なのではないか、と。そのアオは堕天使でお前を誑かしている、排除すべきだ。とな」
その言葉に、反射で俺の口から舌打ちが漏れる。
「んだと?……今からぶっ潰しに行くか、天子信仰とやらをよォ」
ギルバートの言葉を聞くやいなや、握っていたグラスがパリンッと音を立てて砕け散った。
「ちょっと、イーサンなにやってんだい! 怪我は!?」
音を聞きつけたセクシーな身体を惜しみなく披露している店員が、慌てて台拭きやタオルを持ってそう訊ねているが、瞳孔が開き切った俺の耳には一切入って来ない。
「こっわ。俺にそんな殺気向けてもしかたねーだろ?……という訳でまぁ、一応伝えておこうと思ってな。本部だと、何処に耳があるか分からんからな」
「分かった。引き続き、何かあれば即俺に伝えろ」
「了解。……あ、お姉さんありがとねぇ! 悪いけど、コイツに同じモン持ってきてやってくれるー?」
話が終わると、再びギルバートはおどけた様子を取り戻し、濡れたテーブルを片付けてくれた店員に頭を下げていた。
――アオに手を出す奴は、神だろうが天子だろうが宗教団体だろうが全員ぶっ殺してやる。
心にドス黒い炎が燃え上がった時、覚えのある声が入口の方から聞こえた。
「いたいた。店主さん、教えてくれてありがとっす! だんちょーー!! ご馳走されに来たっすよぉ」
入口でブンブンと恥ずかしげもなく手を振る部下の背後から、ひょっこり現れた人物に俺は大きく目を開いた。
「最近さ、お前機嫌いいよな。なに、上手くいってんの?アオちゃんと」
「……お前がアオの名前を呼ぶな。というか、なんで俺がお前と飯を食わなきゃならない」
満席御礼のザワつく店内。
常連である俺とギルバートは、いつも通り隅の窓際の席を陣取っていた。
「いいじゃねーか、たまにはよォ。お前最近付き合い悪すぎんだよ。ちゃーんと部下を大切にしないと、いつか痛い目見るぞぉ?」
……なんだこの酔っ払いは。
ギルバートが飲んでいるビールは今で3杯目。酒豪で有名な彼がそれだけで酔っ払う筈ないんだがな。
「煩い、余計なお世話だ。……で、わざわざ俺をこの店に呼び付けた理由は? くだらねぇ理由なら容赦しねぇぞ」
本来ならこの時間、いつもの様にアオの診療所に行くつもりだった。仕事が終われば、2階で飯を作り一緒に食べる。明日、診療所は休みの筈だから朝まで彼を可愛がるつもり……だったのだが見事、この男に予定を台無しにされた。
俺は不機嫌を隠すこと無く、飲んでいたカクテルの氷を口に含み、ガリっと奥歯で噛み砕いた。
「……天子信仰の奴らが、アオに目を付けてる」
それ迄の浮かれた様子のギルバートの顔が一転、戦場で見せる真剣なそれに変わった。
「は? 天子信仰って、天子フタバを崇拝する……あの? 確か最近一部が過激派になったとかでお前が担当していたよな」
『天子信仰』
それは天子フタバを信仰する宗教団体。彼らはフタバを『神』だと信じ、崇拝している。
別に違法行為をしているわけではないが、一部の狂信者達が暴徒化している報告が上がり、それをギルバートが担当していた。
「そ。……どうやら、天子フタバのお眼鏡にかなったのはお前のようなんだよ、イーサン」
「あ? どういう事だよそれ」
奥歯にものが挟まったような言い方に、俺は思わず眉を寄せる。
「鈍いよなぁお前。どうやらフタバはお前の事が気に入り、結婚相手にと考えているようでな」
「なんだそのクソ迷惑な話、どこから湧いた」
確かにアオが本部に初めて来たあの日を境に、フタバが俺に面会を求める頻度は増えた。だがその度に理由を付けて断っている。
「まぁ聞けって。だが、当のお前は一向に靡く気配がない。そんな時、信者の1人が『どうやらイーサンがある診療所に入り浸っている』という情報を得た」
「……それで?」
「お前がフタバ様に見向きもしないのは、その診療所の医者の『アオ』が原因なのではないか、と。そのアオは堕天使でお前を誑かしている、排除すべきだ。とな」
その言葉に、反射で俺の口から舌打ちが漏れる。
「んだと?……今からぶっ潰しに行くか、天子信仰とやらをよォ」
ギルバートの言葉を聞くやいなや、握っていたグラスがパリンッと音を立てて砕け散った。
「ちょっと、イーサンなにやってんだい! 怪我は!?」
音を聞きつけたセクシーな身体を惜しみなく披露している店員が、慌てて台拭きやタオルを持ってそう訊ねているが、瞳孔が開き切った俺の耳には一切入って来ない。
「こっわ。俺にそんな殺気向けてもしかたねーだろ?……という訳でまぁ、一応伝えておこうと思ってな。本部だと、何処に耳があるか分からんからな」
「分かった。引き続き、何かあれば即俺に伝えろ」
「了解。……あ、お姉さんありがとねぇ! 悪いけど、コイツに同じモン持ってきてやってくれるー?」
話が終わると、再びギルバートはおどけた様子を取り戻し、濡れたテーブルを片付けてくれた店員に頭を下げていた。
――アオに手を出す奴は、神だろうが天子だろうが宗教団体だろうが全員ぶっ殺してやる。
心にドス黒い炎が燃え上がった時、覚えのある声が入口の方から聞こえた。
「いたいた。店主さん、教えてくれてありがとっす! だんちょーー!! ご馳走されに来たっすよぉ」
入口でブンブンと恥ずかしげもなく手を振る部下の背後から、ひょっこり現れた人物に俺は大きく目を開いた。
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