【R18】1LDK、イケメン悪魔憑きアパートに引っ越しました。

さかい 濱

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知りたい。
知りたいに決まってる。
だからこんないわく付きの部屋にまで引っ越してきたわけだし。

でも自称悪魔の話を鵜呑みにも出来ない。
……もしも、アザリ君が本物の悪魔だったとしたら?
駄目だ。
本物だったら、悪魔なんだから私を騙して、フェアな契約なんてしないだろう。
そんな風には見えないけど、君子危うきに近寄らずだ。
きっぱりお断りして、それとは別にアザリ君に出ていってもらう方法を考えるべきだろう。

「お断――」

「あー、隣の人、シャワー浴びてるよ。今、髪の毛洗い始めたっ。」

アザリ君は青山くんの部屋の方を、指差しながら言った。

青山くんが、シャワー。
全裸で。
あのサラサラの髪の毛を今、洗っている…。

まずい。
リアルに想像して、血圧が上がってしまいそうだ。

「しゃ、シャンプーは?シャンプーは何使ってるっ?」

私は欲望に抗えなかった。

尾行した時に、ドラッグストアに入る彼を見たことはあるけど、その店のレジ袋の色が濃くて中身までは把握できなかった。
是非とも知りたい!
青山くんから仄かに香るあの爽やかな匂い、私も同じものを手に入れて、抱き枕をその匂いにしたい!
抱き枕相手にやっている色々な妄想が、少しでもリアルになるような気がする。

「じゃあ、お試しってことでいいんだよね?期間は一週間くらいでいいかな?」

私は首を縦に振ってしまった。
だって、お試しだし。シャンプー、何使ってるか絶対知りたいし。

契約は何だかんだ理由を付けて断ればいいだけだ。

そのお試し期間内に、アザリ君の脱童貞を、私じゃない誰かにしてもらう方法を考えつけば、そもそも契約なんかしなくてもいい訳だし。

「言っておくけど、お試しだから隣の人の情報しか与えられないよ。契約すれば多分、即、付き合えるってことを忘れないでね。」

私はシャンプーのメーカーと種類を書いたメモを、隠し撮り写真の張ってある壁にペタッと張った。

「明日買いに行こっと。」

私は上機嫌だった。

私は青山くんの抱き枕と向き合い想像した。
明日、買ったばかりのシャンプーの入った袋を持ってカフェに寄ったら、青山くんに『それ、俺も使ってるんです』なんて話し掛けてもらえるかもしれない。そこで私は『あら、店員さん、お隣さんじゃないですか。凄い偶然ですね』と言う、そして彼に『運命を感じますね』なんて言わ――

「あの、僕寝ますね。」

「はいはい。」

私は妄想に水を差され現実に戻った。
アザリ君は、フローリングの部屋には似つかわしくない、押し入れの戸を開け中に入っていった。

「おやすみなさい。」

音もなくスッと戸は閉まった。
押し入れで寝るつもりなのだろうか。
確かに私は実家から引っ越して来たので荷物もほぼない。だから押し入れには何も入っていないけど、そんなところで寝られるものなのだろうか。アザリ君は身長が高い。足を伸ばしては寝られないかもしれない。それに今はまだ4月だ。布団もなしでは寒くないのだろうか。

私は押し入れの戸を開けた。

「きゃっ。」

アザリ君は女の子のような叫び声を上げて私を見上げた。
彼は膝を抱え丸くなり自分の羽を布団のように体に巻き付けて横になっていた。

やっぱり窮屈で寒そう。

「……余ってる布団、使う?」

私はリビングに布団を敷いた。

風邪でもひかれたら厄介だし。
悪魔が風邪をひくかどうかは知らないけど、この部屋から出られないのに病気になられたらお医者さんにも診せられないし。

私が布団を敷くのを黙って見ていたアザリ君は、興奮した様子で言った。

「僕、布団で寝るの初めてなんです。お姉さん、ありがとう。」

あら、天使のような笑顔。(自称)悪魔だけど。

……弟だと、思って接すればいいのかな。

きっと彼は私を無理やり襲う気はないはずだ。それなら契約に拘らなくてもいいはずだから。
彼はこのアパートから今は出られない。だから一緒に生活するのは受け入れようと思う。だったら二人とも快適に過ごせる方がいいに決まってる。

「私、爽子そうこ、って言うの。」

「爽子、さん?」

「うん。じゃ、おやすみ。」

私はリビングの電気を消した。


***********

やっぱり現実は甘くない。

会社帰りにシャンプーを買い、ウキウキでカフェに行ったものの、青山くんと話せないばかりか他の女性の常連客と仲良く話す姿を目撃してしまった。
青山くんの楽しそうな顔を見て落ち込んだ。どうして私は話し掛けられないのだろう。半年もただ見ていただけだ。だから、彼の印象にも残らない。
へこみ過ぎて日課の尾行もせずに早々と帰ってきてしまった。

「おかえりなさい。」

「ひっ。」

そうか、家にはアザリ君がいるんだった。

「どうしたの?シャンプー買えなかった?」

わかり易く落ち込んでいる、私の顔を彼は覗き込んできた。

「ばっちり、買えた。」

私は無理やり笑顔を作った。
落ち込んでいたって仕方がない。今日も抱き枕相手に、シミュレーションと言う名の妄想をしよう。しかも今日はシャンプーの匂い付きだ。さぞ、捗るだろう。

「ば、爆弾ロケット、…おっぱい巡り紀行」

――ん?

「…あばれ乳、ちょ、調教」

「は?」

「爆乳、しぼり牧場、物語」

「ちょっと!何言ってんの?」

アザリ君は真っ赤な顔をしている。
私は、脈絡もなく卑猥な事を言われて唖然としてしまった。

「これ、お隣さんの本棚にあったDVDのタイトル。」
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