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彼の香り
しおりを挟む青山くん、まさかのおっぱい星人。
あんな三食野菜サラダしか食べないような顔をしているのに、巨乳好きとは想像もしていなかった。
しかもタイトルが古めかしくて結構えぐい。
「……爽子さん、なんでそれいつも隠してるの?」
アザリ君の突然の問いかけに、私は『それ』に該当するものを咄嗟に両腕で隠した。
「見たの!?」
すっかり、油断してた。
アザリ君は透視が出来る。
透視が出来るってことは私の体だって見えるに違いないのだ。
「みっ、見てない!それは見てないから!」
アザリ君は、顔を私から背けた。黒髪の間から少し見えている形のいい耳は赤くなっている。
嘘を吐いているようには見えない。
「ほんと?」
「ホントに、見えない。信じて、ほしい。」
私は、胸が大きい。
でも胸が大きくていいことなんて、一つもない。
痴漢には遭うし、出会う男性に、何故かセックス好きの厭らしい女だと思われることがある。私が厭らしいかどうかは別問題として、女性としてその評価はいかがなものかと思う。
そして、スラッとしたシルエットの洋服が格好良く着られない。
挙げ句に、一部の同性には『ちょっと触っていいですか』と言われ胸を揉まれる。私はあれが苦手だ。でも胸の大きい人は同性に触らせるのが、当然の義務、とばかりに触ってくる。私はその人に聞きたい。自分が陰茎の大きな男だったら、同性に触られて当然と受け入れるの?私は揉まれる度にそうやって心の中でモヤモヤしていた。
だから、隠しているのだ。
数年前に開発された『胸の小さく見えるブラ』の登場に私は歓喜した。着けてみると、劇的に小さくなるわけではないが、確かに効果はあった。更にきつめのキャミソールを着てボリュームを押え、着る服も胸が目立たないデザイン、柄のものを選んできた。
だから今は、Cカップくらいの見た目に仕上がっているはずだ。
信じて、と言うアザリ君を信じたい気持ちはあるが、隠していることを暴かれたのだ、納得のいく説明をしてもらいたい。
両腕を外さないまま、アザリ君を睨んでいると、彼はそれに気が付いたのか、完全に後ろを向いた。
「無理なんだ。壁くらいの厚みの物を避けて透視をするなら容易いけど、服を一枚一枚剥がすような透視なんて、僕には出来ない。」
「じゃあ、何で知ってるのよ。」
「一昨日とか、爽子さんが寝てる時に見えちゃって。あっ、ふ、パジャマ越しだよ?ふくらみが見えただけ、デス。」
私はホッとして、両腕を胸から離した。
「アザリ君、座ろうか。」
振り向いた彼に、ダイニングセットの椅子を指差した。
彼は素直に椅子に座る。
やはり、捨て犬のようにしょぼんとして、俯いている。
イケメンが台無しだ。
「アザリ君、えっと、ありがと、ね。」
私の言葉が意外だったのか彼は顔を上げた。
「青山くんのこと、教えてくれて、凄く助かる。」
アザリ君は、青山くんのDVDを見て、私が胸を隠してるのが勿体ないと思ってアドバイスとして言ってくれたのだ。他意はなかったのだと思う。
お試し期間とは言え、私に指示された訳でもなく役に立とうとしてくれた。そのことは感謝しなくてはいけない。
胸のことを指摘されたのは、かなり恥ずかしかったけど。
「ハーブティー飲む?」
アザリ君は、安堵した顔をして頷いた。
その後、私はもう一度アザリ君に、DVDのタイトルを言わせるという羞恥プレイをして、部屋の壁に青山くんの情報を追加した。
その壁を見ながらぼんやりと思う。
胸を強調した格好でカフェに行けば、彼は私を意識してくれるのだろうか。
ハーブティを飲みおっぱい騒動が落ち着き、私は今日のメインイベントの準備に取りかかった。
『青山くん抱き枕』の中身のクッション部分のウレタンを取り出す。そこに、薄めたコンディショナー液を霧吹きを使って吹き付ける。
ああ、いい香り。
間違いなく青山くんの匂いだ。
「自分でシャンプー、使うんじゃないの?」
マグカップを洗ってくれたアザリ君は、いつの間にか私の側に来ていた。
彼は不思議そうに私を見ている。
これだから素人は困る。
私自身が青山くんの匂いになってどうする。抱き枕に匂いをつけることによって、枕を抱き締めた時に、逆に青山くんに抱き締められたかのように、その香りに包まれるのがいいんじゃないか。
私がそれを説明してもアザリ君は『でもそれただの枕だよ』と、ちっとも理解できないようだった。
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