【R18】1LDK、イケメン悪魔憑きアパートに引っ越しました。

さかい 濱

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元住人の捜索

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悪魔を呼び出した、元住人に方法を教えてもらってアザリ君を呼び出せれば、青山くんの幻覚をきっと解いてもらえる。

――そして、私はもう一度アザリ君に会える。

どんな顔して会えばいいのかは、やっぱりわからないけど、とにかく一目会いたい。
自分で遠ざけたくせに、また会いたいなんて本当に自分勝手な話だとは思う。
けれど、元気なのか、今はどういう暮らしをしているのか、気になって仕方がないのだ。
話せなくてもいいから、一方的に見るだけでもいいから、会いたい。

「あの、青山さん、何年前からそこに住んでいるんですか。」

「えーと、大学生の時から住んでるから、7年くらい前かな。どうしたの?」

「2年半から3年くらい前に、私のいた部屋に住んでた人のことって覚えていますか?」

私が続けて元住人の特徴を言うと、彼は覚えていた。

「そういえば、あの人がいなくなってから、幽霊が出るって噂になったんだよね。」

青山くんは、知っていることを全部話してくれた。
元住人は、年齢不詳な見た目だけれど、当時三十代くらいで、≪Sハイツ≫には1年くらい住んでいたらしい。
名前は、うろ覚えで、伊藤もしくは加藤といった藤の付く名字で、名前が『拓夫たくお』と言う人らしい。

「隣人宛の小包の誤配達があって、宛名を見て記憶に残ってたんだ。見た目通りの名前だなって。」

見た目通り。

たくおたくおた…、おたく。

なるほど。

その他には、その住人がいる時に、床をガリガリと擦るような音がうるさくて、苦情を言いに行ったこと、退去時にクリーニングだけでなくリフォーム会社が工事をしていったことなどを教えてくれた。

ひょっとして、悪魔を呼び出す魔法陣でも床に刻んでいたのだろうか。
でも工事をしてしまったのなら、もう残っていないはずだ。私が住んでいても見つけられなかったのだから、きっと床自体を替えてしまったのだろう。

直接会ってお願いするしかないのだろうか。

「あ、そう言えば、誤配達の小包はI県から来てたな。差出人の名字が一緒だった気がするから、実家かもね。」

それが情報の全てだった。

不動産屋に聞いたところで、個人情報は教えてはくれないだろう。

○藤 拓夫
三十代~四十代?
I県出身?
≪Sハイツ≫には二年半前まで1年程住んでいた。
長髪、メガネ、色白、ぽっちゃり。
幻覚のぺらぺらサーニャたんと今も一緒にいる可能性がある。

拓夫さんの幻覚が現在は解けているなら、どうやって解いたのか聞けばいいのかもしれない。

「そんなこと聞いてどうするの?」

私が頭の中で情報を整理していていると、青山くんは焦れたように聞いてきた。

「その人なら、青山さんの幻覚を解けるかもしれないんです。」

「……探すつもり?」

「はい。」

「じゃあ、俺も協力する。」

「そんな手間を掛けさせられません。」

「俺自身のことなんだから、把握しておきたいんだ。」

そう言われてしまえば、断れなかった。とりあえず、私が一通り調べてみて、都度状況を説明するということで、長電話はお開きになった。

「今日は爽子ちゃんと、いっぱい会話できて嬉しかった。」

甘く囁かれ、罪悪感が募る。
一刻も早くどうにかしなければ。



私はさっそく、元住人の拓夫さんの情報を集めることにした。が、やはり、予想通り不動産屋は元住人のことを教えてくれなかった。ただ、当時あの部屋をリフォームした業者の会社名だけは『それくらいなら』と言って教えてもらえた。なので、そちらから探ってみることにした。



「お兄さん、多分病気だったんじゃないかな。」

私は、溜まりまくっていた有給休暇を使い、リフォーム業者の事務所を訪ねていた。
行方不明の兄を探していると嘘を吐き、工事した時の部屋の様子を教えてほしいと頼み込んだのだ。

「何故ですか?」

「……言いにくいんだけど、部屋が異様な感じで…。お兄さん、精神に異常があったんじゃないだろうか。行方不明者ってそういう人が少なくないらしいから。」

「異様、ですか?」

おそらく、それは魔法陣だろう。

「部屋の畳がめちゃくちゃで、何か模様のようなものが書かれていて、さらに畳を剥がすとその下にも同じような模様が書かれていてさ、しかも血のような赤黒いものがべったりと床にも壁にもついてて、それはそれは異様な雰囲気の部屋だったよ。殺人があった部屋なのかって、不動産屋に確認したくらいだったから。」

気のいいオジサンといった感じの業者の人は、タバコを取り出すと口に咥えた。

「他には何か、行き先がわかるようなものはありませんでしたか?」

「うーん、…そうだね、あっ、おーい、下田くん、あの≪Sハイツ≫の工事お前も行ってたよな?」

下田くん、と呼ばれた男は顔を上げ嫌そうな顔をした。

「あ、はい。大変でしたよねアレ。」

「このお嬢さん、あの部屋の住人の妹さんなんだって。何か覚えてること、教えたげて。」

そう言って業者の人は下田さんと席を代わった。

「あの、オタクのお兄さんですよね。」
「はい。……えっと、何故オタクだと思われました?」

「部屋に美少女アニメのポスターがいっぱいあったから。確か『コスモ★らびっと』っていうアニメだったはず。」

サーニャたんはそのアニメの登場人物なのだろうか。

「後は、すんません、何も覚えてないっス。」

私は二人にお礼を言い、リフォーム業者の事務所を出た。

結局アニメの情報しか得られなかったけど、かなりの有力情報だと思う。これから拓夫さんとコンタクトが取れるかもしれない。
すぐさま、スマホで『コスモ★らびっと』を調べる。

やはり『サーニャ』は、そのアニメの何人かいるヒロインのうちの一人だった。

『コスモ★らびっと』は漫画がヒットしアニメ化したもののようで、漫画の方の連載が続いているせいもあって、まだ人気のあるアニメのようだった。


拓夫さんが反応しそうな情報を盛り込んで、ネット上の掲示板、SNSなどで呼び掛けてみることにした。

『○トウタ○オさん、ペラペラの、あなたのサーニャたんについて重大なお知らせがあります。お話がしたいので連絡ください #コスモ★らびっと #Sハイツ #悪魔 #サーニャ』


数日後には反応があった。
誰も知り得るはずのない情報を出したのだから、拓夫さんが目にさえすれば連絡が来るだろうという確信があった。

直接連絡を取る了承を得て電話をかけた。

「あの、ペラペラサーニャたんとは今も一緒にいるんですか?」

私は自己紹介を簡単に済ませ、本題に入った。

『ペラペラって言わなくていいから。…隣に、いる。』

幻覚は、解けていなかった。

元住人の伊藤拓夫さんは、初めは警戒心丸出しだったけど、悪魔の話をし出した所で私に不安げに聞いてきた。

『重大なお知らせって何?俺、悪魔に殺されるのかな』

封印したまま逃げてきて、その悪魔が自由になったのだから拓夫さんが不安に思うのは当たり前だろう。

だけど、アザリ君はそんなことしない、と思う。

「大丈夫じゃないでしょうか、多分。重大なお知らせと言ったのは拓夫さんとコンタクトを取りたいが為の嘘ですし。」

事情を話し、悪魔の呼び出し方を聞いたのだけれど、それには色々と用意が必要らしい。費用は私が出すと言うと、引き受けてもらえた。

『呼び出したら、俺を恨まないように、アンタからも悪魔に言ってもらえるんだよな?』
「それは、もちろん。」
『じゃあ用意できたら連絡するから、こっちまで来てくれるか』

私は了承し、住所を聞いた。

「I県○市×××――。はい。わかりました。」
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