【R18】1LDK、イケメン悪魔憑きアパートに引っ越しました。

さかい 濱

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契約をしないで

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――アザリ君の魔女。

それが意味することは、悪魔アザリ君と体の関係を持つ、ということだ。

私は顔が真っ赤になってしまった。

きっとまだまだ先の話だ。
キスもまともに出来てないのに。

でもキスをしてしまったら歯止めが効かなくなって、あっという間に体の関係を持つことになるのだろうか。

私は想像してしまった。

アザリ君とは筆おろしはしたけど、あの時は自分の気持ちが良くわかっていかなかったし、なにより私は幻覚を見ていた。だからアザリ君との初めてと言っていいだろう。今度こそアザリ君の理想のシチュエーションでしてあげたいし、してみたい。

妄想の世界に浸っていると、ディルは心配そうに私を見た。

「お嬢ちゃん、どうしたら人間が魔女になるか知らないの?」

「し、しし知ってますけど。そういうのは、まだ、あの…。」

私が頭から湯気が出そうなくらい赤くなり、しどろもどろになっているのをみたディルは少し驚いたようだった。

「アザリシェルムが、お金を稼ぎたいってアタシに言ってきたから、てっきりそういうことかと思ったんだけど、違うのかしら?」

お金を稼ぐ?

私がアザリ君を見ると彼は少しばつが悪そうに視線を逸らした。

「4日間出かけていたのはお金を稼ぐ為だったの?でも何に使うお金?」

「それは……後で説明する。とにかく爽子は魔女にはならないから。ディル、今日は帰って。」

事態を掴めていない私と、気まずい顔をしたアザリ君を残し、ディルは帰っていった。

「アザリ君、どういうこと?」

彼はディルが言っていたお金のことをぼそぼそと話してくれた。

アザリ君は、前回ディルがこの部屋に来た時に、食材を買った代金を彼が支払ったと聞いて、生活にはお金が掛かっていることに気が付いたのだと言う。今までに生活費を一円も払っていないことに焦り、私に渡すために『契約』でお金を稼いで来たということのようだった。

「もちろん、人の死に関わるような契約はしてない。でも、胸を張って言えることでも、ない、かも。」

そう言ってアザリ君は部屋の隅から紙袋を持ってきた。それには大量のお札の束が入っていた。
朝まではそんなものは無かったので、ディルが届けてくれたものだろう。

私は何と言っていいか分からなかった。契約として稼いできたお金に私は何も文句はない。アザリ君のことだから酷い契約をしたわけじゃないのは分かってる。
でもなんだかモヤモヤして『わぁ。すごい』とは言えない気分なのだ。

微妙な顔をしている私に気が付いたアザリ君は不安げな顔になった。

「僕、何か間違ったかな。」

間違ってはいない。

彼が私の為にやってくれたことなのだから喜ばしいことなのかもしれない。
けど、私と交わした『契約』とお金を対価にした『契約』それが一緒にされたようで嫌だった。

――違う。

一緒にされたのが嫌なんじゃなくて、アザリ君が誰かと契約をするのが、私は嫌なんだ。
だからこのモヤモヤの正体は、焼きもちだ。

「お金はいらないから、この先、誰とも契約しないで、ほしい。悪魔は他にもいるんだから、アザリくんが行かなくてもいいし、契約は必ずしなければならないものじゃないよね?」

アザリ君を誰かが呼び出して、契約をするなんて耐えられなかった。その人が女の人で私のように『一緒に住んで』なんて、もし言ったとしたら…?
私はその場面を想像して、胸が締め付けられた。

「確かに契約は悪魔の義務ではないから、必ずしなくちゃならないものではないよ。……でも、ただのなんてことない願いを、僕は叶えてきただけだよ。それが、爽子は嫌なの?」

「うん。嫌。心配だし、やめてほしい。」

人間との契約とは義務ではなくても、仕事とか趣味に値するものなのかもしれない。それをするなと言うのだから傲慢な願いだ。
でも、してほしくない。

「……分かった。でもこのお金は受け取ってほしい。」

アザリくんは押し付けるように紙袋を私の方へと寄越した。

こんな大金受け取れない。
私は固辞したけれど、アザリ君も引き下がらず、結局、毎月の家賃分、彼にお金を出してもらうことで落ち着いた。

少し気まずい雰囲気が漂う中、私はもう一つ気になっていたことを聞いた。

「あの、魔女になるとどうしてディルに会えないの?」

「……爽子は、知らなくていいよ。」

「どう、して?」

突き放されたようで、不安になった。

「爽子を魔女には、しないから。僕は、爽子と体の関係を持つつもりはない。」

今日はキスが出来て素敵な日になるはずだった。

一日中ウキウキして仕事に集中するのが大変だった。でも早く帰りたいからやる気を出した。
アザリ君に今朝『早く帰ってきてね』と言われて、彼も私のことが好きになってくれたのだと思って浮かれていた。

だから、まさか彼にこんな形で振られるなんて、思ってもみなかった。
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