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番外・友人の苦悩①
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長谷川 中と俺、高島 修吾は幼なじみである。
家が近所で同じ幼稚園にも通い、付き合いは16年にもなる。親友、と言って差し支えない関係だろう。
なので奴、アタルのことは何でも良く知っている。食べ物の好き嫌いはもちろん、奴のあまり一般的ではない名前の由来までも把握している。
中、と言う名は奴の父親が付けた。その由来を本人が居ない場で親父さんが教えてくれた。
俺は家族ぐるみで付き合いをさせてもらっていて、奴の親父さんとも普通に仲が良い。だから何気ない会話の中で聞いたことがあったのだ。
『平凡な中くらいの人生を』
奴の名前にはそんな想いが込められているらしい。
それを聞いた時にはなんとネガティブな名前を付けたのだ、と驚いたけれど、続いた言葉に納得した。
『これといった大業を為さなくてもいいから、穏やかで春の日差しのような暖かい人並みの道を歩んで欲しい』
波瀾万丈な人生を歩んだアタルの父親は、そういった願いを名前に込めたのだ。
親父さんは今でこそ会社の社長をしているけれど、若い頃にはそれはそれは大変な目に合ったらしい。
大金を持ち逃げされた話や、たこ部屋に入れられた話、二つある臓器を一つ売ったとか売らなかったとかの話は怖くて詳しくは聞けなかったけれど、確かにそれらは経験しなくていいことだと思った。
話を聞いて、豪傑にも見える奴の親父さんが奴の人生に対してそんな願いを抱いていたのかと感動したものだった。
……ただ、これは余談になるけれど、後々になって奴の二人の兄の名がそれぞれ『白』と『發』だったことを思い出した時には『読みがチュンじゃないだけ親心か…』と心の中で思ったものだった。(※白・發・中はそれぞれ麻雀牌の種類。三つをまとめて三元牌と言う)
そんな親父さんの想いを知ってか知らずか奴は『中くらいの人生』などではなく、華々しい人生を歩んでいた。
頭脳明晰で眉目秀麗、しかも社長令息だ。常に右肩上がり、イージーモードの人生に思われた。
しかし、奴は高校受験に失敗した。
本命高の受験日当日、ノロウイルスの症状が出たのだ。試験どころではなくなり、奴は不本意ながらも自分と同じ公立高校に通うことになった。
奴はしばし脱け殻のようだった。自分の目から見ても奴は努力する天才、だった。モテたけれど恋愛などには目を向けず、ひたすら勉学とクラブ活動に励んだ中学時代だった。
希望した進学高には入れないばかりか、バスケ部もやる気のない顧問とやる気のない生徒が集まったチームで、奴は部活に入るのを諦めた。
どんよりと暗い奴を見て、そりゃショックも受けるよなと同情を禁じ得なかった。
けれど、そんな鉛色の高校生活に光が差した。奴の前に一人の女の子が現れたのだ。クラスメイトの彼女は奴のことを下の名で呼ばず「長谷川くん」と言った。
『長谷川くんはすごいね』
『長谷川くんは賢いね』
『長谷川くんは努力家だね』
すっかり自信を無くしていた奴は、何気なく紡がれたのであろうその言葉に救われ、そして恋に落ちた。
そんな誰だって言うだろう言葉が心に沁みたのは、それだけ自尊心が損なわれていた時期だったからなのか、珍しく名字で呼ばれたせいなのか。はたまた単純に一目惚れをしたせいなのかは定かでない。
だが、奴は俺に『天使を見つけた』と熱に浮かされたように言ってきた。
それからである、席が近く俺となんとなく気の合った桜花と、偶然にも桜花と友人同士だった"天使"こと真由ちゃんの4人でつるむようになったのは。
奴は遅く来た初恋に慌てふためき、自分の中で湧き上がってきた想いをうまく処理できずに、初めの頃は真由ちゃんと普通に会話をするのさえままならなかった。でも、それでは駄目だと思った奴は、取り敢えず真由ちゃん好みの男になろうと努力を始めた。
当時彼女が読んでいた女の子向けの恋愛小説を何冊も購入し、熟読して主人公の相手から女の子の扱いを学んだ。芸能人の誰それがかっこいい、と真由ちゃんが言っているのを聞けばヘアスタイルや服装をその芸能人から学んだ。
もともと、努力のできる天才は見事、理想の王子様になることができた。
しかし、外見や物腰を学ぶことができても、精神面までは鍛えることができず、――真由ちゃんをあまりにも好き過ぎてという理由もあったのだろうが――ここは押すべき、という場面でも強く出られないでいた。
そのことを本人は、自分はジェントルマンなのだと言い張っていたが、桜花に『ヘタレ王子』とバッサリ斬られていた。
肝心の真由ちゃんの気持ちも、おそらくアタルに向いていたと思うのだが、奴が理想の王子様に近付くにつれその態度は遠慮がちになっていった。4人で話している時は普通でも二人きりになると、どこか余所余所しいのだと奴は悲しそうに言っていた。それがアタルのヘタレを加速させた。
桜花に協力してやった方がいいんじゃないのかと相談したら『やりたいならアンタが一人でやりなさいよ。恋は自分で掴み取るものよ』と男前な発言をされた。惚れた。
……まぁ、俺の恋愛話は置いておくとして、そんな訳で二人のアシストはせずに黙って見守るだけにしておいた。
しかし思ってた以上にアタルはジェントルマン(笑)で、一向に二人の仲は発展しなかった。少しだけ気を利かせて4人で星を見に行った時に二人きりにさせたのに(自分が桜花と二人きりになりたかった下心があったのも否定しない)ただぼやっと真由ちゃんと空を眺めていただけだったのにはガックリした。
そんな感じで発展の無いまま、別々の大学に進学して、しかも桜花と俺が付き合いだしたのもあって、流石に尻に火が着いた奴は勇気を出し、遊びに行こうと真由ちゃんに連絡を取った。しかし何度も続けて断られてしまい『俺、振られた』と奴は暗い顔をするようになった。もう少し積極的にすれば?と高校の時から何度となく言ってきたことを言うと『これ以上しつこくして、怖い想いをさせたくない』とジェントルマンな発言をした。
その後、奴は真由ちゃんを諦めることも出来ず、かと言ってストーカーになることも(当たり前だけど)出来ず、他の女に目を向けることも出来なかった。
奴が唯一出来たのは『真由ちゃんと付き合っているという妄想をする』という悲しい一人遊びをすることだけだった。
ちなみに、これを期に桜花のアタルへの評価が『ヘタレ王子』から『残念王子』にレベルダウンした。
しかし、そのうち自己嫌悪に陥って止めるだろうと思われた一人遊びは、真由ちゃんに彼氏が出来たことで加速した。俺は真由ちゃんの情報を奴に教えてしまったことを後悔した。
そしてある日、俺はもうこれ以上放って置けないと、桜花に泣きついた。『恋は自分で掴み取るもの』というポリシーを持っている桜花に、俺は手を合わせて頭を下げてお願いした。
『アイツ、マジでやべーんだ。久々にアタルのアパートに行ったら、やったらファンシーな感じの部屋になっててさ、いや、前々から兆候はあったんだけど、つい耐えられなくなって聞いちゃって、そしたらさ、妄想の真由ちゃんと同棲し始めたって言ったんだよ、アイツ。ほんっと、やべーよ。バレンタイン用に自分に贈るマフラーも編んでたし、多分このままだと精神に異常をきたしちまうよ。だから頼むっ、桜花っ。真由ちゃんとアタルの橋渡しをしてやってくんねーか』
真由ちゃんが大学で知り合ったらしい彼氏と、あまりうまくいっていないということは、アタルを抜いた3人で会う機会がありその時に聞いていた。
だから、もし付け入る隙があって、その彼氏よりもアタルの方が真由ちゃんにとって、よい男だと思うのならば協力してやってほしいとお願いしたのだ。
桜花と俺が付き合ったことによって、アタルと真由ちゃんの関係が微妙になってしまったのかもしれないという罪悪感があったのもあり、奴の為に桜花に頭を下げたのだった。
桜花は『無理やりくっつけることはしないわよ。ちょっとアシストするだけだからね?』と引き受けてくれた。優しい。抱きたい。
アタルはそのアシストによって与えられたチャンスを生かせるのか、バレンタインデーに桜花とイチャイチャしながらも心配になっていた。
家が近所で同じ幼稚園にも通い、付き合いは16年にもなる。親友、と言って差し支えない関係だろう。
なので奴、アタルのことは何でも良く知っている。食べ物の好き嫌いはもちろん、奴のあまり一般的ではない名前の由来までも把握している。
中、と言う名は奴の父親が付けた。その由来を本人が居ない場で親父さんが教えてくれた。
俺は家族ぐるみで付き合いをさせてもらっていて、奴の親父さんとも普通に仲が良い。だから何気ない会話の中で聞いたことがあったのだ。
『平凡な中くらいの人生を』
奴の名前にはそんな想いが込められているらしい。
それを聞いた時にはなんとネガティブな名前を付けたのだ、と驚いたけれど、続いた言葉に納得した。
『これといった大業を為さなくてもいいから、穏やかで春の日差しのような暖かい人並みの道を歩んで欲しい』
波瀾万丈な人生を歩んだアタルの父親は、そういった願いを名前に込めたのだ。
親父さんは今でこそ会社の社長をしているけれど、若い頃にはそれはそれは大変な目に合ったらしい。
大金を持ち逃げされた話や、たこ部屋に入れられた話、二つある臓器を一つ売ったとか売らなかったとかの話は怖くて詳しくは聞けなかったけれど、確かにそれらは経験しなくていいことだと思った。
話を聞いて、豪傑にも見える奴の親父さんが奴の人生に対してそんな願いを抱いていたのかと感動したものだった。
……ただ、これは余談になるけれど、後々になって奴の二人の兄の名がそれぞれ『白』と『發』だったことを思い出した時には『読みがチュンじゃないだけ親心か…』と心の中で思ったものだった。(※白・發・中はそれぞれ麻雀牌の種類。三つをまとめて三元牌と言う)
そんな親父さんの想いを知ってか知らずか奴は『中くらいの人生』などではなく、華々しい人生を歩んでいた。
頭脳明晰で眉目秀麗、しかも社長令息だ。常に右肩上がり、イージーモードの人生に思われた。
しかし、奴は高校受験に失敗した。
本命高の受験日当日、ノロウイルスの症状が出たのだ。試験どころではなくなり、奴は不本意ながらも自分と同じ公立高校に通うことになった。
奴はしばし脱け殻のようだった。自分の目から見ても奴は努力する天才、だった。モテたけれど恋愛などには目を向けず、ひたすら勉学とクラブ活動に励んだ中学時代だった。
希望した進学高には入れないばかりか、バスケ部もやる気のない顧問とやる気のない生徒が集まったチームで、奴は部活に入るのを諦めた。
どんよりと暗い奴を見て、そりゃショックも受けるよなと同情を禁じ得なかった。
けれど、そんな鉛色の高校生活に光が差した。奴の前に一人の女の子が現れたのだ。クラスメイトの彼女は奴のことを下の名で呼ばず「長谷川くん」と言った。
『長谷川くんはすごいね』
『長谷川くんは賢いね』
『長谷川くんは努力家だね』
すっかり自信を無くしていた奴は、何気なく紡がれたのであろうその言葉に救われ、そして恋に落ちた。
そんな誰だって言うだろう言葉が心に沁みたのは、それだけ自尊心が損なわれていた時期だったからなのか、珍しく名字で呼ばれたせいなのか。はたまた単純に一目惚れをしたせいなのかは定かでない。
だが、奴は俺に『天使を見つけた』と熱に浮かされたように言ってきた。
それからである、席が近く俺となんとなく気の合った桜花と、偶然にも桜花と友人同士だった"天使"こと真由ちゃんの4人でつるむようになったのは。
奴は遅く来た初恋に慌てふためき、自分の中で湧き上がってきた想いをうまく処理できずに、初めの頃は真由ちゃんと普通に会話をするのさえままならなかった。でも、それでは駄目だと思った奴は、取り敢えず真由ちゃん好みの男になろうと努力を始めた。
当時彼女が読んでいた女の子向けの恋愛小説を何冊も購入し、熟読して主人公の相手から女の子の扱いを学んだ。芸能人の誰それがかっこいい、と真由ちゃんが言っているのを聞けばヘアスタイルや服装をその芸能人から学んだ。
もともと、努力のできる天才は見事、理想の王子様になることができた。
しかし、外見や物腰を学ぶことができても、精神面までは鍛えることができず、――真由ちゃんをあまりにも好き過ぎてという理由もあったのだろうが――ここは押すべき、という場面でも強く出られないでいた。
そのことを本人は、自分はジェントルマンなのだと言い張っていたが、桜花に『ヘタレ王子』とバッサリ斬られていた。
肝心の真由ちゃんの気持ちも、おそらくアタルに向いていたと思うのだが、奴が理想の王子様に近付くにつれその態度は遠慮がちになっていった。4人で話している時は普通でも二人きりになると、どこか余所余所しいのだと奴は悲しそうに言っていた。それがアタルのヘタレを加速させた。
桜花に協力してやった方がいいんじゃないのかと相談したら『やりたいならアンタが一人でやりなさいよ。恋は自分で掴み取るものよ』と男前な発言をされた。惚れた。
……まぁ、俺の恋愛話は置いておくとして、そんな訳で二人のアシストはせずに黙って見守るだけにしておいた。
しかし思ってた以上にアタルはジェントルマン(笑)で、一向に二人の仲は発展しなかった。少しだけ気を利かせて4人で星を見に行った時に二人きりにさせたのに(自分が桜花と二人きりになりたかった下心があったのも否定しない)ただぼやっと真由ちゃんと空を眺めていただけだったのにはガックリした。
そんな感じで発展の無いまま、別々の大学に進学して、しかも桜花と俺が付き合いだしたのもあって、流石に尻に火が着いた奴は勇気を出し、遊びに行こうと真由ちゃんに連絡を取った。しかし何度も続けて断られてしまい『俺、振られた』と奴は暗い顔をするようになった。もう少し積極的にすれば?と高校の時から何度となく言ってきたことを言うと『これ以上しつこくして、怖い想いをさせたくない』とジェントルマンな発言をした。
その後、奴は真由ちゃんを諦めることも出来ず、かと言ってストーカーになることも(当たり前だけど)出来ず、他の女に目を向けることも出来なかった。
奴が唯一出来たのは『真由ちゃんと付き合っているという妄想をする』という悲しい一人遊びをすることだけだった。
ちなみに、これを期に桜花のアタルへの評価が『ヘタレ王子』から『残念王子』にレベルダウンした。
しかし、そのうち自己嫌悪に陥って止めるだろうと思われた一人遊びは、真由ちゃんに彼氏が出来たことで加速した。俺は真由ちゃんの情報を奴に教えてしまったことを後悔した。
そしてある日、俺はもうこれ以上放って置けないと、桜花に泣きついた。『恋は自分で掴み取るもの』というポリシーを持っている桜花に、俺は手を合わせて頭を下げてお願いした。
『アイツ、マジでやべーんだ。久々にアタルのアパートに行ったら、やったらファンシーな感じの部屋になっててさ、いや、前々から兆候はあったんだけど、つい耐えられなくなって聞いちゃって、そしたらさ、妄想の真由ちゃんと同棲し始めたって言ったんだよ、アイツ。ほんっと、やべーよ。バレンタイン用に自分に贈るマフラーも編んでたし、多分このままだと精神に異常をきたしちまうよ。だから頼むっ、桜花っ。真由ちゃんとアタルの橋渡しをしてやってくんねーか』
真由ちゃんが大学で知り合ったらしい彼氏と、あまりうまくいっていないということは、アタルを抜いた3人で会う機会がありその時に聞いていた。
だから、もし付け入る隙があって、その彼氏よりもアタルの方が真由ちゃんにとって、よい男だと思うのならば協力してやってほしいとお願いしたのだ。
桜花と俺が付き合ったことによって、アタルと真由ちゃんの関係が微妙になってしまったのかもしれないという罪悪感があったのもあり、奴の為に桜花に頭を下げたのだった。
桜花は『無理やりくっつけることはしないわよ。ちょっとアシストするだけだからね?』と引き受けてくれた。優しい。抱きたい。
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