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お風呂に入りましょう

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ここはどこなのでしょうか。

目を覚ますと、見たことのないお部屋にいました。ベットが一つだけ置かれてある、わたくしの自室の4分の1以下の広さのお部屋にはまったく見覚えがありませんでした。

わたくしはそのベットにネグリジェ姿で寝かせられていました。

いつ着替えたのでしょうか。わたくしは外出用のドレスをクロードに着つけてもらってから馬車に乗ったはずです。脱いだ記憶が全くありません。

それにこの部屋にはわたくし一人です。クロードはどこに行ってしまったのでしょうか。

彼に聞きたいことが山ほどあるのです。本当にわたくしは弟の子を宿してしまったのでしょうか。男女の交わりのないまま、懐妊することはできるのでしょうか。わからないことがいっぱいです。頭を悩ませていましたら、なんだか胃が気持ち悪くなってきました。最近よくある症状です。

咄嗟にお手洗いを探します。

あ、あのドアでしょうか。木製のドアをそっと開けましたら全裸のクロードが立っていました。ここはお風呂だったようです。部屋に戻るべきなのでしょうが胃のムカムカが最高潮で、どうしたらいいのかわかりません。競り上がってくるものを、せめてクロードには見られないように手で隠しながら吐き出します。涙がぽろぽろと出てしまうくらいに苦しみましたが、しばらく吐き気は治まってくませんでした。

そんな最中、人の動く気配がいたしました。クロードがわたくしの背中に手を置き、撫でてくれたのです。でも正面から心配そうにわたくしの顔を覗き込んでいる為、吐き出しているものがかかってしまいます。わたくしは、とても申し訳ない気持ちになりました。

しばらくして、やっと吐き気が治まりました。


「かかってしまったわね。ごめんなさい。」

しょんぼりしてクロードを見ると、彼まで泣きそうな顔をしています。お風呂に入ったばかりなのに汚されては、そんな顔にもなるでしょう。わたくしはまた謝ろうと思いました。けれどクロードはわたくしに更に近付き、抱き締めてきたのです。

吐瀉物まみれのわたくしをです。

「姉さま、謝らないでください。僕のせいなのですから。」

お手洗いに間に合わなかったのは、クロードのせいではありません。

わたくしも彼の背中に手を回そうとしましたが、手が汚れているのでやめました。

「わたくしも、湯浴みをしたいのだけれど、その前にクロードが先に汚れを落とした方がいいですわね。」

「では一緒に入りましょう。汚れたのは僕のせいなのですから、姉さまの湯浴みもお手伝いします。」

ですから、彼のせいではありません。何より恥ずかしいので、お断りさせていただきたいです。

しかも、わたくしはちらりと見てしまったのです。彼の股間にあるものが大きくなって天を向いているのを。

多分あれは通常の状態ではないはずです。どうしてそういう状態になっているかわかりませんが、少しだけクロードが怖くなりました。一緒にお風呂に入るのは避けるべきです。

「ひ、一人でも入れますわ。」

メイドの手があれば一番いいけれど、わたくしだって体くらい自分で洗えるのです。

「姉さまが、風呂場で転んでは危ないですので、せめて見守らせてほしいのです。一人のお体ではないのですから。」

――やはり、そうなのですね。

「……わたくしは、本当にクロードの子を身籠っているのですか。」

お腹に手を置いてみても膨らみは無く、何の実感も湧きません。

「はい。そうです。」

クロードは、わたくしのお腹に置いた手の上に、自分の手を重ねてきました。

「ここに、姉さまと僕の子がいます。」

慈しむように手の上からそこを撫でられて、なんとも言えない不思議な気持ちになります。

わたくしは怒るべきなのでしょうか。でも怒りは湧いて来ないのです。そもそも可愛いクロードを怒ったことなど、今まで一度だってないのです。怒り方がわかりません。

「……でも、本当にそんなことが可能なのかしら?」

わたくしは疑問を口にしました。

するとクロードはわたくしの手を引き、バスタブに連れて行きます。

「お湯に浸かりながら聞いてください。姉さまに、僕たちの初めて記念日のお話をして差し上げますから。」

クロードは照れ臭そうに笑いました。

……あら、わたくし、そんなことを聞きたいと言ったかしら?方法を聞いた筈なのですけれど。

頭を捻りながらも促されるまま、背を向けてもらい服を脱ぎタオルで体を隠しバスタブに浸かりました。

クロードは一緒に湯の中に入ってきました。狭いですし何より恥ずかしいのですが、悲しそうな顔で『姉さまになにかあったら』と言われてしまい、しぶしぶ了承してしまいました。昔から心配性で、姉想いの弟でした。

二人で向かい合って入れるほどには大きくないバスタブなので、同じ方向を向くように座りました。わたくしはクロードの足の間にいます。
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