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【第三章】蓮牙山攻防戦・第二次セトラ村攻防戦

【第四十七話】

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 城門をくぐっていった敵兵が、また戻ってきた。


 山の斜面で地崩れが起きたのは、平原からでも見えていた。


 敵の騎馬隊は、ほとんど相手にならない。


 ガンテスが初めに指揮官を討ち取ったので、統制は皆無だったのだ。


 二百は居たであろう敵の騎馬は、ほとんどが潰走し、残って応戦しようとしていた騎兵は、全員返り討ちにした。


 倒した騎兵は、五十騎以上だろう。


「歩兵共が戻ってきたな。お前ら、蹂躙してやろうじゃないか」


 ガンテスは楽しそうに笑っている。


 敵の返り血を浴びて、全身が不気味に赤く染まっていた。


 ガンテスが駆け出したので、他の騎馬も駆け出す。


 城門から出てきた歩兵は、一応の統率は取れているようだった。


 槍と盾が並べられ、騎馬への対処がしてある。


 多くの犠牲を出したばかりとは思えない程、冷静な判断だった。


 歩兵の指揮官は、なかなかの人物かもしれない。


「ガンテス隊長、攻撃はやめた方が良いのかもしれません」


 ガンテスの横まで追い付き、そう言った。


「どうしてだ、カイト。格好の餌ではないか」


「盾と槍を並べて、騎馬隊に備えているのです。あれにぶつかるのは、自殺行為です」


 ガンテスは残念そうに騎馬の速度を落とした。


 敵の歩兵は六百程度まで減っている。


 地崩れに巻き込まれた兵の救助は諦めたようだ。


「仕方がない。追撃は辞めておく」


 ガンテスは、真っ直ぐ敵軍を見つめていた。


 敵の歩兵は、次第に蓮牙山から離れていく。


「勝ちで良いのか。我々の勝ちで」


 小さく、ガンテスが言った。


「倍の騎馬隊を壊滅させ、指揮官も首も討ち取りました。歩兵もかなり討ち減らして撃退したのです。勝ちでしかありませんよ」


「そうか、それならいい」


 歩兵部隊が見えなくなってから、ようやく騎馬隊は蓮牙山に戻った。


 山寨は歓声に包まれ、ガンテスが討ち取った指揮官の首を掲げると、歓声はより一層大きくなった。


「城門が破られた時は、肝を冷やしたぜ」


 テジムが、近くに来てそう言った。


 地崩れで敵兵を巻き込んだ後、山寨にいた兵達は大声を出しながら斜面を下ったという。


 テジムも、それに参加していたそうだ。


 ガンテスとゼフナクトは、二人して笑顔で話している。


「カイト、お前はどうだったよ?」


「俺はそうだな。六騎ほどしか倒せなかった」


「嫌味な奴だな、お前は。六騎ほどしか、だと。充分すげぇじゃねぇか!」


 テジムが拳でつついてくるので、二人して声を上げて笑った。


 この戦いは、噂として拡がるだろう。


 そうすれば、入山を希望する人が増えるかもしれない。








 今はとにかく、勝ったという実感があるだけだった。
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