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【第三章】蓮牙山攻防戦・第二次セトラ村攻防戦
【第五十話】ガンテス視点
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王国軍の七百は歩兵の行軍に合わせているので、すぐに追いつく事が出来た。
蓮牙山から出撃してきた騎馬は、全部で百五十である。
蓮牙山での勝利の後だったので、士気は高い。
不安な顔は、ひとつも無かった。
王国軍は警戒を厳しくしているようで、かなり広範囲に斥候を出していた。
それも進路先だけでなく、後方や側面にも出していた。
やはり迂回は出来そうに無かった。
王国軍の斥候に掛からないように、後方十キロの距離で後を追った。
「このままセトラ村までついて行って、その後はどうする、カイト」
夜になって夜営をすると、ガンテスは決まってカイトと語るようにしていた。
作戦を話し合うだけでなく、個人的な事や、世間話なんかもする。
それに対して、カイトは嫌な顔せずに付き合ってくれていた。
「騎馬隊の機動力を活かして、後方の撹乱が中心になるでしょう」
カイトは武術だけでなく、用兵についても心得があるようだった。
セトラ村に滞在していたドライスから教わったのかもしれない。
「そうなると、敵の騎馬隊が邪魔だな」
敵の騎馬隊は百五十で、我らと同数だ。
「それもそうですが、先日の騎馬戦で、大体の力量は把握出来ました。元々の指揮官も居なくなっているので、蹴散らすことは難しくはないと思います」
カイトの言っている事に、ガンテスも同意見だった。
後はセトラ村がどう動くかということである。
しかしそれは、今ここで考えても仕方のないことだった。
カイトが立ち上がり、篝のそばに座った。
そして荷物から紙と羽根ペンを取り出し、何かを書き始めた。
蓮牙山に滞在している時から、カイトは時々このように何かを書いていた。
「いつも気になってたんだが、何を書いてんだ?」
邪魔かと思いながらも、ガンテスは気になって聞いてみた。
「大したものではないのですが、まぁ、日記のようなものでしょうか」
カイトは、どこか恥ずかしそうにしている。
ただその日に何があったかを書いているだけではないようだ。
「何を書くことがあるんだ?」
カイトは困った様子で、書いていた冊子を手渡してきた。
表題は無い。ただ紙の束がとめられているだけだ。
全てには目を通さなかったが、それは日記というより、カイトの考えている世界の有り様が書かれていた。
人はどのように人と関わり、どのようにして集団を維持していくのか。国は国民に対してどのような有り様であればいいのか。
名付け難い、思想書のような物に近かった。
淡々とした文章で書かれているが、所々でカイトの感情が感じられる所がある。
読み進めると、ガンテスは不思議と胸が熱くなった。
蓮牙山から出撃してきた騎馬は、全部で百五十である。
蓮牙山での勝利の後だったので、士気は高い。
不安な顔は、ひとつも無かった。
王国軍は警戒を厳しくしているようで、かなり広範囲に斥候を出していた。
それも進路先だけでなく、後方や側面にも出していた。
やはり迂回は出来そうに無かった。
王国軍の斥候に掛からないように、後方十キロの距離で後を追った。
「このままセトラ村までついて行って、その後はどうする、カイト」
夜になって夜営をすると、ガンテスは決まってカイトと語るようにしていた。
作戦を話し合うだけでなく、個人的な事や、世間話なんかもする。
それに対して、カイトは嫌な顔せずに付き合ってくれていた。
「騎馬隊の機動力を活かして、後方の撹乱が中心になるでしょう」
カイトは武術だけでなく、用兵についても心得があるようだった。
セトラ村に滞在していたドライスから教わったのかもしれない。
「そうなると、敵の騎馬隊が邪魔だな」
敵の騎馬隊は百五十で、我らと同数だ。
「それもそうですが、先日の騎馬戦で、大体の力量は把握出来ました。元々の指揮官も居なくなっているので、蹴散らすことは難しくはないと思います」
カイトの言っている事に、ガンテスも同意見だった。
後はセトラ村がどう動くかということである。
しかしそれは、今ここで考えても仕方のないことだった。
カイトが立ち上がり、篝のそばに座った。
そして荷物から紙と羽根ペンを取り出し、何かを書き始めた。
蓮牙山に滞在している時から、カイトは時々このように何かを書いていた。
「いつも気になってたんだが、何を書いてんだ?」
邪魔かと思いながらも、ガンテスは気になって聞いてみた。
「大したものではないのですが、まぁ、日記のようなものでしょうか」
カイトは、どこか恥ずかしそうにしている。
ただその日に何があったかを書いているだけではないようだ。
「何を書くことがあるんだ?」
カイトは困った様子で、書いていた冊子を手渡してきた。
表題は無い。ただ紙の束がとめられているだけだ。
全てには目を通さなかったが、それは日記というより、カイトの考えている世界の有り様が書かれていた。
人はどのように人と関わり、どのようにして集団を維持していくのか。国は国民に対してどのような有り様であればいいのか。
名付け難い、思想書のような物に近かった。
淡々とした文章で書かれているが、所々でカイトの感情が感じられる所がある。
読み進めると、ガンテスは不思議と胸が熱くなった。
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