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【第一章】 新生活編

【第十六話】 クエスト探し

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 冒険者の登録を無事に終えた僕は、早速クエストボードでクエストを探すことにした。
 
 
 クエストボードを覆い尽くすほどのクエストが貼られており、壁一面どころか、二面、三面、ついには後から設置したであろう衝立ついたてにもクエストが貼られている始末だ。
 
 
 この街を拠点に活動している冒険者が何人いるのかは分からないけれど、流石にこれだけ大量のクエストを消化するのは不可能だろう。
 
 
 逆を言えばそれだけ冒険者は仕事を選べるという事でもある。
 
 
 これだけのクエストがあれば、僕にも出来そうな物がありそうだ。
 
 
「えーと、モンスター討伐、これもモンスター討伐、こっちも討伐、あれも討伐、討伐、討伐・・・・・・」
 
 
 早速クエストを見つくろってみたものの、そのほとんどがモンスター討伐系のクエストだった。
 
 
 それぞれ討伐対象のモンスター名が記載されているけれど、一体どんなモンスターなのか、僕には分からなかった。
 
 
 それよりも・・・・・・。
 
 
「なぁおい、あんな子供で、冒険者やってるのかな?」
 
「そうも見えねぇよな。武器なんてほら、短剣だぜ」
 
「あんなのでどうやってモンスターと戦うんだろうな」
 
 
 さっきから、他の冒険者からの視線を感じる・・・・・・。
 
 
 そんなにも僕が子供に見えてしまうのか。
 
 
 一言言ってやろうと、ヒソヒソ話している冒険者を振り返ったが、僕の何倍もたくましい体つきのムキムキ冒険者ばかりだった。
 
 
「おい、こっち見たぞ。やっぱり子供だぜ、ありぁ」
 
「もしかしたら、強豪パーティの支援職かもしれねぇな」
 
「もしそうなら、相当のやり手だぞ」
 
 
 冒険者からの視線は、一層強くなる。
 
 
 なんだか嫌な注目のされ方をしている。
 
 
 しかし、何かクエストを探さなければ。
 
 
 そう思っても、あるのはモンスター討伐だけ。
 
 
 この状況も、ある意味では「前門の虎、後門の狼」と言えるのではないだろうか。
 
 
 一旦冒険者ギルドから出て、人が少なくなったくらいにまた来ようかとも考えていると、一人の冒険者が近付いてきた。
 
 
「やぁ、君は新人かい?」
 
 
 まさか話し掛けられるとは思わなくて、目が合っても返事が遅れた。
 
 
 その冒険者は空色の髪をしていて、色を合わせたかのように見事な空色の防具。
 
 
 爽やかな雰囲気を漂わせた、若い冒険者だった。
 
 
 若いと言っても、さすがに僕よりは歳上だろう。
 
 多分、二十代前半。
 
 
「あ、はい、そうです。さっき登録が済んだばかりなんです」
 
 
 驚きながらそういうと、空色の冒険者は歯を見せながら優しく微笑む。
 
 
「ここ、上級冒険者向けのクエストボードだよ」
 
 
 えっ。
 
 
 上級冒険者だって。
 
 
 どおりで討伐系のクエストばかりあると思った。
 
 
 だってほら、【深蜘蛛龍しんくもりゅうアトラク・ナクア】の討伐とか、【虚月狼きょげつろうマーナガルム】とか、名前からして強そうなモンスターばかりだもん。
 
 
 
 
「初心者向けのクエストボードは、あっちだよ」
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