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【第八話】初めての感覚
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突然飛んできた拳を、俺はギリギリの所でかわした。
「ちょ、ちょっと!」
俺はなんとか姿勢を直し、冷静になるように説得しようとした。
「うるせえ! 俺は、お前を殴らなきゃいけねぇんだ」
どうしてそうなるのか、全く分からない。
俺が英雄として召喚されたことが分かっているのなら、なおさらである。
英雄とは、みんなから期待されているものではないのか。
考える間もなく、また拳が飛んでくる。
再び避けた。
「ちっ、ちょこまかと」
相手の兵は苛立っていた。
苛立ってからは、動きを読むのは簡単だと感じた。
数回ほど拳を避けると、今度は相手の息が途切れてきた。
相手とは裏腹に、俺の方は余裕が出てきた。
喧嘩慣れしている訳では決してない。
むしろ、本格的に喧嘩を売られるのは初めてなのだ。
それにしても、不思議だった。
相手が拳を出す瞬間、どう避けたら良いのか咄嗟に分かるのだ。
そしてその通りに身体が動き、思ったように攻撃をかわす。
なんなら、反撃さえ可能だと思えた。
しかし、それはあえてしなかった。
「お前ら、見てねぇで加われ!」
相手が言うと、後ろで見ていた数人が俺を囲んだ。
さすがに囲まれると、避けるのは難しい。
後ろから、拳が来る。
見てもいないのに、それが分かった。
やはり不思議だった。
他の攻撃も、全て避ける。
しばらくそれを続けていると、一人、また一人と息を切らしてその場に倒れだした。
「くそっ、何で当たらねぇんだ」
全員が、地面にへたれこんでいた。
俺は、ほとんど疲れていなかった。
「これが、英雄の力かよ」
兵の一人が息切れながら言った。
「英雄について、何か知ってるんですか」
「はぁ? お前、自分のことだろ」
「俺は、まだ自分が何者なのか分かっていません。喧嘩なんてした事もないのに、向かってくる攻撃が全て分かった。それも、俺が英雄である事に関係があるんですか」
「お前、ほんとに何も知らないのか」
倒れた兵は、次第に息が整い始めていた。
少しでも、何か教えてくれるかもしれない。
そう期待した時だった。
「雪斗様、雪斗様! 何ごとですか」
馬車に乗った忠翔が、大声で言った。
「ちっ、お前たち行くぞ」
喧嘩を売ってきた兵たちは、忠翔の姿を見るなり走って逃げていった。
せっかく、情報を聞き出す機会だったのに。
「俺にも分かりません、突然喧嘩を売られて」
「近衛軍とは言え、血の気が多い兵もいます。気を付けましょう」
「はい・・・」
あれはどう考えても向こうが悪い。
そう思ったが、口には出さなかった。
「お乗り下さい。まだまだ寄るところはありますので」
「ちょ、ちょっと!」
俺はなんとか姿勢を直し、冷静になるように説得しようとした。
「うるせえ! 俺は、お前を殴らなきゃいけねぇんだ」
どうしてそうなるのか、全く分からない。
俺が英雄として召喚されたことが分かっているのなら、なおさらである。
英雄とは、みんなから期待されているものではないのか。
考える間もなく、また拳が飛んでくる。
再び避けた。
「ちっ、ちょこまかと」
相手の兵は苛立っていた。
苛立ってからは、動きを読むのは簡単だと感じた。
数回ほど拳を避けると、今度は相手の息が途切れてきた。
相手とは裏腹に、俺の方は余裕が出てきた。
喧嘩慣れしている訳では決してない。
むしろ、本格的に喧嘩を売られるのは初めてなのだ。
それにしても、不思議だった。
相手が拳を出す瞬間、どう避けたら良いのか咄嗟に分かるのだ。
そしてその通りに身体が動き、思ったように攻撃をかわす。
なんなら、反撃さえ可能だと思えた。
しかし、それはあえてしなかった。
「お前ら、見てねぇで加われ!」
相手が言うと、後ろで見ていた数人が俺を囲んだ。
さすがに囲まれると、避けるのは難しい。
後ろから、拳が来る。
見てもいないのに、それが分かった。
やはり不思議だった。
他の攻撃も、全て避ける。
しばらくそれを続けていると、一人、また一人と息を切らしてその場に倒れだした。
「くそっ、何で当たらねぇんだ」
全員が、地面にへたれこんでいた。
俺は、ほとんど疲れていなかった。
「これが、英雄の力かよ」
兵の一人が息切れながら言った。
「英雄について、何か知ってるんですか」
「はぁ? お前、自分のことだろ」
「俺は、まだ自分が何者なのか分かっていません。喧嘩なんてした事もないのに、向かってくる攻撃が全て分かった。それも、俺が英雄である事に関係があるんですか」
「お前、ほんとに何も知らないのか」
倒れた兵は、次第に息が整い始めていた。
少しでも、何か教えてくれるかもしれない。
そう期待した時だった。
「雪斗様、雪斗様! 何ごとですか」
馬車に乗った忠翔が、大声で言った。
「ちっ、お前たち行くぞ」
喧嘩を売ってきた兵たちは、忠翔の姿を見るなり走って逃げていった。
せっかく、情報を聞き出す機会だったのに。
「俺にも分かりません、突然喧嘩を売られて」
「近衛軍とは言え、血の気が多い兵もいます。気を付けましょう」
「はい・・・」
あれはどう考えても向こうが悪い。
そう思ったが、口には出さなかった。
「お乗り下さい。まだまだ寄るところはありますので」
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