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ルベル王国編
閑話:獣王アルベルトからの手紙
しおりを挟む――一国の国王からの突然の手紙に、君はきっと驚愕し、困惑し、緊張していることだろう。
しかし、これは私文書だ。公式文書では無いので、あまり身構えずに読んで欲しい。
レイモンド・ベイリー。君のことは我が友、アドルフから聞いている。彼は君のことについて、あらゆる意味で面白い男だ。もっと早くに会いたかった、と評していた。
彼が出会って間もない相手に対して、ここまで好意的になることは非常に珍しい。我が友はとにかく用心深く、警戒心が強い男だ。そして、昔は重度の人間嫌いだった。
今は多少改善したものの、人間とは必要以上に関わりたくないと言っていたあの男が、君の話になると途端に無邪気になる。
一体どんな魔法を使ったのか、是非とも教えてもらいたいところだ。
と、半分は本気だが冗談はさておき。単刀直入に用件を述べよう。
――ルベル王国を出て、我が国へ来ないか?
今度は冗談ではなく、本気だ。レイモンドには獣人族の味方になって欲しい。アドルフを筆頭に、第一旅団の幹部達が強くそれを望んでいる。
無論、私もそう思っている。獣人族の頂点である私が勧誘しているのだから、他の同胞達も否とは言うまい。正しくは、言わせない。
よって、もし反対の声が聞こえたとしても、気にする必要は無い。
君の外交官としての能力の高さ。獣人族への理解。優れた補助魔法使いであること。新たに領主となった獣人達の悩みを解決する、柔軟な思考力。……これらは全て、得難い才能だ。
私は、君という貴重な人材を、心から欲している。
この話に応じてくれるのであれば、レイモンドを我らの新たな同胞として迎え入れたい。
君が次にオリソンテに訪れた時、ヴェーラにその旨を伝えてくれ。
彼女にはその時点で君を我々の同胞と見なし、責任を持って保護するよう命じている。その後は彼女の言葉に従って欲しい。
何事もなく順調に進めば、君は王国側からの返答が記された文書を携えて、再びオリソンテを訪れるだろう。
しかし万が一、私の直筆の文書を届けた先で君の身に何かが起こり、再び訪れることが不可能となった場合。この手紙と共に渡された魔法玉を使用してくれ。
使い方はロッコからから聞いているはずだが、念のために私からも簡単に説明しよう。
その魔法玉にはテレポートの魔法が籠められており、飲み込むことで一度だけテレポートを使うことができる。
ただし。魔法玉に籠められている魔法が高難易度の魔法だった場合、その魔法玉を使っても限られた効果しか得られない。
テレポートは、本来なら一度に数人を転移させることができ、発動者が転移する場所に一度でも訪れていれば使用可能だが、この魔法玉はそうはいかない。
一度に転移できる対象は、たった一人。発動者が一度行ったことのある場所なら転移可能である点は変わらないが、転移する対象の名前と、転移する場所を具体的に言葉にしてから発動しなければならない。
その対象が自分であっても、他人であっても同じことだ。
つまり。名前を知らない相手を転移させることはできない。だからこそ、一度しか使えない魔法玉を自分の身を守るために使ってくれ。
私はレイモンドの無事を祈って、魔法玉を君に託した。……その気持ちを、どうか理解して欲しい。
最後に。君が我々の同胞となった暁には、我が軍の第一旅団に所属してもらおうと考えている。
本当は私の直属の文官として雇いたいと思っていたが、アドルフが我が儘を言ってな。
他の補助魔法使いよりも、レイモンドの方が戦闘で百倍は役に立つ。あいつは絶対に第一旅団が貰う。……その一点張りで言うことを聞かなかったから、仕方なく許可した。
彼の本音は十中八九、君を自分の側に置きたい、もしくは自分が君の側にいたい……そんなところだろう。懐かれているな、羨ましいほどに。
できることなら、そんな我が友の気持ちも汲んでやって欲しい。
――良い返事を期待しているぞ、レイモンド。
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