幸福の神様

渡辺 佐倉

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土地神様

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道祖神の石碑をみたら、そこからがその土地神様の領域だ。

子供の頃両親にそう教わった。

実際、土地神様のいない場所はこのあきつ洲でも数える位しか無い。
どこにでも神様がいて、それが祀られている。

僕が留学先に選んだここも、とてもとても美しい神様がいらっしゃった。


青い目に黒い髪、それに腕からチラリと見える金の文様は神代の言葉だろうか。キラキラと輝いていて美しい。
服装は古風な和服を着ているけれど、この街の人間はいつでも、うっとりとその土地神様のことを見ているようにさえ思える。

この街に来た時も、「もう神様は見たか?」と口々に言われた。
街の住人達は皆、この美しい土地神様が自慢の種に見えた。

* * *

「ツバメ、つーばーめ!!」

その美しい神様が僕のことを呼びつける。

別の土地から来た人間にできるアルバイトは限られている。
その中にあった土地神様のお世話というのは、いかにもこの場所でなければできなさそうなことで惹かれてしまった。

けれど、実態はよくわからない駄々っ子の面倒を見る仕事というのが一番近いかもしれない。

今だって、仕事用の和服をもたつかせながら土地神様に近づくと「わらび餅が食べたいんだけど」という緊急性も必要性もよくわからないお願いだった。

そもそも、神様に食べ物は必ずしも必要ない。

ただ単に、食べてみたいという気持ちだけで人を呼びつけてそんなことを言うのは人でも珍しい。
神様だと普通のコトなのかは、他の神様を知らないのでわからない。

「一応探してみますけど、無くても怒らないでくださいね」
「はあい」

僕が言うと、土地神様は期限が良さそうに返事をした。

土地神様はこの土地を守護している。
守ってもらっていて、栄えるための協力もしてもらっている。

そういう存在だ。

だから、雇用主には基本的に相当無茶なお願いでなければ叶える様にと言われている。
わらび餅、という世の中に存在をする食べ物が食べたいというお願いはいくら唐突でも『相当無茶』にはならない。

「じゃあ、ちょっと探しに行ってきますね」
「はい、はーい」

返事だけはしっかりとする神様を見て、なんでこの仕事を選んでしまったのだろう。と少しだけ後悔する。

けれど、美しい、美しいと言われていた容姿はこれだけ近くで見ても粗というものが全く見つけられないことだけは事実だった。

この街の神様は、この街で暮らす人達の言うとおり、とてもとても綺麗だった。
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