幸福の神様

渡辺 佐倉

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期限

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留学の期限は一年と決まっていた。

ただ、学期のスタートの関係でこちらのほうが一ヶ月程早く講義が終わったため、一ヶ月程の休みがある。
その間にすべてを片付けて地元に帰る予定だった。


アルバイトももう辞める予定だった。


「ツバメ、悪いんだけどもう数日だけここにいてくれないかな?」

土地神様に名前を呼ばれると不思議な気持ちになる。
あまり好きではなかった自分の名前が特別なものの様に思える。

まだ、休み期間中だ。
数日帰るのが遅れても問題は別に無い。

実家には連絡を入れればいいだけだし、最後にもう一度この街をよく見てもいいかもしれないと思った。


「いいですよ」

僕がそう言うと、土地神様は嬉しそうに笑った。
来年は別の人がこの人の世話係として働くのかと思ったら少しだけ寂しいような気持ちになる。

この人は来月から別の人に僕に対してと同じ様にわがままを言うのだろうか。

この街に子供の頃からいない所為か、この人が他の人と何かをしているところがまるで想像できない。


けれど、僕が住む街がここでないことはちゃんとわかっている。
最後にこの人がどんなわがままを言うのか少しだけ気になるだけだ。


「じゃあ、準備をしておくから明日またここに来て」


準備というのがよく分からなかったけれど「はい」と答えた。
この人に限ってお別れ会をしてくれるとは思えなかった。


実際、翌日土地神様はお別れ会の準備をしていたわけではなかった。
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