思い出レストラン

渡辺 佐倉

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冷たいお茶を渡されて一気に飲み干す。

「塩でもかけた方がいいか?」

あっけらかんと聞かれる。
持ち帰り様に小分けにしたやつあるぞーとのんきなものだ。

春田は大きくため息をついて「お前の横に婆さんがいるんだ。」とだけ言った。

「本当か!へえ、俺には全然分かんないな。」

今までのことから信じていない訳では無いようだ。けれど、どこか他人事というかまるでテレビの中の話をしている様に春田に言う。

「お前、本当に何にも気にしないんだな。」
「そうか?見えなきゃ割と平気だろう。怪我した時に血が出てるのに気が付いてから途端に痛くなるのと変わらないよ。」

もはや、春田の休憩専用になっている来客用のソファーに座っている春田を見下ろして葬儀屋は言った。

「そんなもんか?」
「そんなもんだ。」
「そういう職業なんだし、そろそろ見えるようにはならないのか?」

顔色の悪いままの春田に聞かれ、葬儀屋が笑う。

「何度も言ってるが、葬儀関係者が視える人間だったら精神なんぞとっくにやられてるだろう。」

現にたまに自分の能力を生かしたいと言ってこの業界に来る人間はおおよそ数か月で退職しているんだぞ。
知らないからこそ、誰にでも真摯に対応できることもあるんだ。

葬儀屋はめったに動かない口角を上げて不格好な笑みを作った。
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