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婚約破棄されたなら
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はあ、とリヒトは息を吐きだした。
「ねえ、覚えてる?」
私に向かって昔の様な口調で話しかけられて、ドキリとする。
足元に綺麗な魔方陣が浮かびあがる。
それがリヒトの魔法だと気が付くのは一瞬だった。
彼が、変人と呼ばれても、それでも学園に通えていて、家族からも注意すらされない理由を私はよく知っている。
有り余る魔法の才能。
許嫁を作ることを頑なに拒否しても、学園での言動も何もかも許される天賦の才。
彼は彼自身を切り札にできる。
誰かとの関係を手札にしなければならない私と違って、彼は、自分の能力を手札にできる貴族なのだ。
彼が覚えてる? と聞いたとき最初に思い浮かんだのは、幼い時のごっこ遊びでのプロポーズだった。
けれどそのことかしら、と聞き返すのは違ったときに恥ずかしすぎるのでできない。
「クラリス、君が婚約破棄されたって聞いたときの俺の気持ち、分かる?」
突然変わってしまった話に思わずきょとんとしてしまう。
何故今それを聞くのかの意味がよく分からない。
ふふっ、と面白そうにリヒトが笑う。
「婚約破棄されたなら俺にもチャンスがあるって事だよな」
面白そうに笑うリヒトを見てはいるけれど、事態を上手く理解できない。
この人は何を言っているのだろう。
まるで私のために許嫁も作らず一人でいたみたいな言い方だ。
「あの時の約束を果たそうか」
リヒトがこちらをじっと見つめる。
「……ゼラニウムの思い出」
ぽつりと呟いた言葉にリヒトはさらに双眸を緩める。
とても、とても嬉しそうに彼は「覚えていたんだね」と言った。それから、「じゃあその続きも覚えているかい?」と言った。
この話に続きはあったかしら。
何か、忘れてしまっていることがあるかのようにリヒトに言われるて首を傾げた。
じわじわと顔が熱い。
この人も同じ思い出をずっと心に持っていたことの喜びとそれから気恥ずかしさと自分の想い。
それが重なって頬が紅潮してしまっている気がする。
「ねえ、覚えてる?」
私に向かって昔の様な口調で話しかけられて、ドキリとする。
足元に綺麗な魔方陣が浮かびあがる。
それがリヒトの魔法だと気が付くのは一瞬だった。
彼が、変人と呼ばれても、それでも学園に通えていて、家族からも注意すらされない理由を私はよく知っている。
有り余る魔法の才能。
許嫁を作ることを頑なに拒否しても、学園での言動も何もかも許される天賦の才。
彼は彼自身を切り札にできる。
誰かとの関係を手札にしなければならない私と違って、彼は、自分の能力を手札にできる貴族なのだ。
彼が覚えてる? と聞いたとき最初に思い浮かんだのは、幼い時のごっこ遊びでのプロポーズだった。
けれどそのことかしら、と聞き返すのは違ったときに恥ずかしすぎるのでできない。
「クラリス、君が婚約破棄されたって聞いたときの俺の気持ち、分かる?」
突然変わってしまった話に思わずきょとんとしてしまう。
何故今それを聞くのかの意味がよく分からない。
ふふっ、と面白そうにリヒトが笑う。
「婚約破棄されたなら俺にもチャンスがあるって事だよな」
面白そうに笑うリヒトを見てはいるけれど、事態を上手く理解できない。
この人は何を言っているのだろう。
まるで私のために許嫁も作らず一人でいたみたいな言い方だ。
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「……ゼラニウムの思い出」
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とても、とても嬉しそうに彼は「覚えていたんだね」と言った。それから、「じゃあその続きも覚えているかい?」と言った。
この話に続きはあったかしら。
何か、忘れてしまっていることがあるかのようにリヒトに言われるて首を傾げた。
じわじわと顔が熱い。
この人も同じ思い出をずっと心に持っていたことの喜びとそれから気恥ずかしさと自分の想い。
それが重なって頬が紅潮してしまっている気がする。
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