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おかえり
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アルフレートが久しぶりにまともな時間に帰ってくる。
そう使用人に聞かされたのは、週末の事だった。
出迎え用の召し物を。と言って渡されたものを見つめる。相変わらず貴族の習慣は馴染めないものも多い。
それでも、かなりの部分で使用人達が歩み寄ってくれていることも知っている。
それが、アフレートの尽力によるものだということも。
灯りのついたエントランスでぼんやりとアルフレートを待つ。
自分が騎士であった時分、家に帰る時間を誰かが知っていただろうかと思う。
けれど、このぼんやりと伴侶の事を待っている時間は嫌いではなかった。
「ただいま帰りました。」
アルフレートが帰ってきた。
「お帰りなさい。」
俺がそういうとアルフレートは嬉しそうに笑顔を浮かべた。
それから、抱きしめる様に俺の事を引き寄せると、俺の腰に手をまわした。
アルフレートの方が俺よりも少し背が高い。
だから、俺の肩は別に彼にとってそれほどいい高さだとは思えないけれど、アルフレートは俺の肩に顔を埋める。
「あー、癒される。」
アルフレートが俺の肩と首の境に顔を埋めてそんなことを言う。
相変わらず碌でもないことを引き受けているらしいことは、何となく知ってはいる。
けれど、アルフレートも何も言わないし、自分から聞いたことも無い。
別にそれでよかった。
けれど、きちんと婚姻関係を結んでしばらくしてから、こうやって時々甘えの様な態度を取ることがある。
そのためか、使用人は出迎える準備を確認すると自分たちの視界に入らないよう控えてしまう。
それがアルフレートの指示なのか、それとも貴族の使用人というのはそういうものなのかも平民であったグレンには分からない事だ。
けれど、時折見せる、切羽詰まった時のアルフレートとは別の甘えを見る度に、胸の奥のあたりが切なく疼く。
「偉い、偉い。」
まるでシャーリーに言うように褒めてやると、アルフレートが吐息だけで笑った。
アルフレートの金髪を優しくすいてやると、アルフレートが少しだけ俺に体重を預けたのが分かる。
「愛してます。」
どんな関連があったのかは知らないがアルフレートが言う。
俺もだ、と返そうかと思った時、階段の上から大きな叫び声が聞こえた。
「あー、お父様だけずるい!!」
ふわりとしたスカートを揺らしてシャーリーが飛び跳ねる様に降りてくる。
アルフレートはゆっくりと顔をあげてシャーリーに微笑みかける。
「お父様お帰りなさい。」
「シャーリーただいま。」
アルフレートが手を広げるとシャーリーが抱きつく。
残念ながら返せなかった言葉を飲み込むけれど、自分の愛する子供が愛する人と幸せそうにしているのを見るとそれだけで、目じりが下がる。
「そうだ。お父様ご本、この前の続きを読んでください。」
「ああ、いいとも。魔法使いが泉を発見したことろからだったか?」
「ええ、私続きを読んでもらうの楽しみにしていたの。」
シャーリーを抱きしめていた手を離すと彼女の小さな手をアルフレートはそっと握った。
それから反対の手を俺に向って、差し出した。
「そこは、俺はシャーリーの手を握るところだろ。」
思わず出てしまったツッコミに笑ったのはシャーリーだった。
「あら、グレン父様、私は大丈夫ですよ。」
そう言われてしまった事が、少し寂しい。
「そうだ!お父様、私のねこちゃんがね。」
頬を薔薇色にしながらシャーリーがアルフレートに話しかける。
アルフレートの指先が俺の手の甲をそっと撫でる。
その指はたこができてしまっていて少し硬い。
その撫で方は二人きりの時にしかしない様な撫で方だった。
そっと撫でた後、アルフレートは俺の手を握る。
思わず震えてしまわなかった自分を褒めてやりたい。
二人きりの時の様に「アホ。」と言ってやりたいけれど子供の前で言える言葉じゃない。
俺が睨みつける前に、アルフレートがこちらをみて、微笑む。
それで、睨むことすらできなくなってしまって、ただアルフレートと手をつないで娘の部屋にむかった。
途中でシャーリーに「グレン父様、嬉しそうね。」と言われてなんと答えたらいいのか分からなかった。
終始アルフレートは幸せそうな笑みを浮かべていて、まあ仕方が無いかという気分になった。
了
お題:夫婦のいちゃいちゃ
そう使用人に聞かされたのは、週末の事だった。
出迎え用の召し物を。と言って渡されたものを見つめる。相変わらず貴族の習慣は馴染めないものも多い。
それでも、かなりの部分で使用人達が歩み寄ってくれていることも知っている。
それが、アフレートの尽力によるものだということも。
灯りのついたエントランスでぼんやりとアルフレートを待つ。
自分が騎士であった時分、家に帰る時間を誰かが知っていただろうかと思う。
けれど、このぼんやりと伴侶の事を待っている時間は嫌いではなかった。
「ただいま帰りました。」
アルフレートが帰ってきた。
「お帰りなさい。」
俺がそういうとアルフレートは嬉しそうに笑顔を浮かべた。
それから、抱きしめる様に俺の事を引き寄せると、俺の腰に手をまわした。
アルフレートの方が俺よりも少し背が高い。
だから、俺の肩は別に彼にとってそれほどいい高さだとは思えないけれど、アルフレートは俺の肩に顔を埋める。
「あー、癒される。」
アルフレートが俺の肩と首の境に顔を埋めてそんなことを言う。
相変わらず碌でもないことを引き受けているらしいことは、何となく知ってはいる。
けれど、アルフレートも何も言わないし、自分から聞いたことも無い。
別にそれでよかった。
けれど、きちんと婚姻関係を結んでしばらくしてから、こうやって時々甘えの様な態度を取ることがある。
そのためか、使用人は出迎える準備を確認すると自分たちの視界に入らないよう控えてしまう。
それがアルフレートの指示なのか、それとも貴族の使用人というのはそういうものなのかも平民であったグレンには分からない事だ。
けれど、時折見せる、切羽詰まった時のアルフレートとは別の甘えを見る度に、胸の奥のあたりが切なく疼く。
「偉い、偉い。」
まるでシャーリーに言うように褒めてやると、アルフレートが吐息だけで笑った。
アルフレートの金髪を優しくすいてやると、アルフレートが少しだけ俺に体重を預けたのが分かる。
「愛してます。」
どんな関連があったのかは知らないがアルフレートが言う。
俺もだ、と返そうかと思った時、階段の上から大きな叫び声が聞こえた。
「あー、お父様だけずるい!!」
ふわりとしたスカートを揺らしてシャーリーが飛び跳ねる様に降りてくる。
アルフレートはゆっくりと顔をあげてシャーリーに微笑みかける。
「お父様お帰りなさい。」
「シャーリーただいま。」
アルフレートが手を広げるとシャーリーが抱きつく。
残念ながら返せなかった言葉を飲み込むけれど、自分の愛する子供が愛する人と幸せそうにしているのを見るとそれだけで、目じりが下がる。
「そうだ。お父様ご本、この前の続きを読んでください。」
「ああ、いいとも。魔法使いが泉を発見したことろからだったか?」
「ええ、私続きを読んでもらうの楽しみにしていたの。」
シャーリーを抱きしめていた手を離すと彼女の小さな手をアルフレートはそっと握った。
それから反対の手を俺に向って、差し出した。
「そこは、俺はシャーリーの手を握るところだろ。」
思わず出てしまったツッコミに笑ったのはシャーリーだった。
「あら、グレン父様、私は大丈夫ですよ。」
そう言われてしまった事が、少し寂しい。
「そうだ!お父様、私のねこちゃんがね。」
頬を薔薇色にしながらシャーリーがアルフレートに話しかける。
アルフレートの指先が俺の手の甲をそっと撫でる。
その指はたこができてしまっていて少し硬い。
その撫で方は二人きりの時にしかしない様な撫で方だった。
そっと撫でた後、アルフレートは俺の手を握る。
思わず震えてしまわなかった自分を褒めてやりたい。
二人きりの時の様に「アホ。」と言ってやりたいけれど子供の前で言える言葉じゃない。
俺が睨みつける前に、アルフレートがこちらをみて、微笑む。
それで、睨むことすらできなくなってしまって、ただアルフレートと手をつないで娘の部屋にむかった。
途中でシャーリーに「グレン父様、嬉しそうね。」と言われてなんと答えたらいいのか分からなかった。
終始アルフレートは幸せそうな笑みを浮かべていて、まあ仕方が無いかという気分になった。
了
お題:夫婦のいちゃいちゃ
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