繋がる指先

渡辺 佐倉

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生徒会室にて

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※高校時代

一緒に食事をと以前から言われていたし、それをあの人も望んでいることも知っていた。
だから断る理由は何もない。
けれど、自分自身の気持ちとしては少し違っている部分はあった。




生徒会室に入ったのはこれが最初で最後だった。

あの人曰く、他校との交流のために大人数で食事をするテーブルなどが備品として準備されているらしい。
結局食堂にしろどこにしろ生徒会役員は目立ちすぎるし、場所がここである事には何もいうつもりもない。

値踏みするようにこちらを見る生徒会長と、ニコニコと笑顔を浮かべる副会長。それから興味がなさそうに既に席についている書記。唯一の救いは五十嵐君も同席するという点だけだった。

「本当に、平凡そうなやつだな。」

何故わざわざ、そう生徒会長はあの人に言った。
当たり前だと思った。

見た目を含めて特に秀でた部分は何もない自分と生徒会役員に選ばれるくらい能力のあるあの人。つりあわないと思われて当然だ。

「ちょっと。俊介に失礼な事言うのやめてくれない。」

あの人がかばってくれる。
けれど、申し訳ないような気持ちはやっぱり膨らむ一方だ。

「じゃあ、そいつのどこがいいのか教えてくれよ。」

まるで挑発するようにあの人に聞いた。まあ答えられないだろうなと思った。

「君自身はどう思いますか?」

副会長が俺に聞いた。ニコニコと優しげな笑顔を浮かべるが値踏みしているのはこの人も同じなのだろう。
この学園にいれば少しは想像できる。この人たちがどのくらい自分の利益のためだけの人に群がられているかなんて。
だから友人である小西先輩を守ろうとして聞いていること位ちゃんと分かっている。

男同士という以前にこの学園で生徒会の役員が特別すぎる存在だという事は分かっているつもりだった。

「さあ?」

答えられる内容はなかった。

「俺がこの人を好きだって事ならいくらでも言えるんですが、俺にもいまだに何で小西先輩がわざわざ俺を選んだのかはわかんないですね。」

偽ってもどうしようも無いと思った。
これから大人になったときに、別れてしまった時も一方的に俺から言い寄ったという事にしてもらってかまわないとも思っている。
将来この人の重荷にだけはなりたくなかった。

だから、誰にも言わない関係で充分だったし、あの人が紹介したいといわなければこの人たちにも会わなかった。

「へえ。」

生徒会長が面白そうに笑った。

それは、全校集会のときの不敵な笑みとも、五十嵐君に向けていた恋情のこもったものでもなく、犬がボールを見つけたときの様な笑顔だった。

ギクリとして、あの人の方を見る。

「あー。やめてよ。俊介は俺のなんだからね!」

小西先輩は言うが、生徒会長は「別にとって食うわけじゃないからいいだろ。」と言っている。
意味が分からないし、何がそんなに面白かったのかも分からない。

「俊介は、何もかもが可愛いんだから、そんなの一々説明したら皆俊介の事好きになるだろ。
分かりきっているのに、教えてやるわけ無いだろ。」

五十嵐君がふき出す。

「……でも、分かります。亘理さんって可愛いですよね。」
「佐紀が一番危ないんだよ!やめてよ。何度でも言うけど、俊介は渡さないからね。」

何故あの人がこんなに必死に言うのかは理解できなかった。逆はありえるだろうけど俺が他を見ることはありえないのに。
だけど、あの人は俺がそう思ってしまうのを嫌がっている事はよく知っていた。


「佐紀、俊介こっち。」

書記の人が話しを遮るようにテーブルに呼んだ。

「ここのパンとバターとっても美味しいよ?」

場の空気を和ませるためだろうか、書記の人がそんな事を言う。
五十嵐君は「座りましょう。」と言ってくれた。

ちらりとあの人を確認すると、俺の好きな柔らかな笑みを浮かべて「大丈夫。」と言った。

「ホント、俊介さんは大地先輩の事好きですよね。」
「え?」

顔ですよ。顔。
五十嵐君はそんな事を言った。
自分では良く分からない。

「相思相愛って感じなんですね。良かった。」

副会長は俺たちのテーブルを挟んで向かい側に座りながら言った。
副会長はふわりと笑顔を浮かべたが、先ほどまでより緊張感が抜けて柔らかく感じられる。

あの人はあの人を大事に思っている人たちに囲まれている。それが分かるのだ。
だから嬉しくて思わず笑みがこぼれた。

「あー、なんか分かった気がします。」

副会長がそんな事を言った。

「だから、なるべく俊介を会わせたく無かったんだよ。絶対気に入るって分かってたから。
ちょっかい出さないって約束したじゃんか!」

あの人がそんな事を言うが、別にそんな事になるはずが無い。
糸の影響もあったものの、それこそ五十嵐君であればどうこうあるのかも知れないけれど俺との間に何かが起きる筈が無いのだ。

「俊介なんにも分かってないでしょ?」

あの人が俺の顔を見てひそひそと言った。

「アンタはありもしない仮定を心配しすぎだと思います。」
「えー、そんな事無いと思うけどね。」

人前なのにあの人が横の席に座る俺の頭をくしゃりと撫でた。

その手は相変わらず優しくて、人目があることも忘れて思わず目を細めると、副会長がわざとらしい咳払いをするのが聞こえた。




お題:生徒会での紹介、亘理メンバーに気に入られて小西がモヤモヤ
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