一から百まで

渡辺 佐倉

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百目鬼の起立は、碌に触れてやることができなかったのに、興奮しているらしくてらてらと濡れている。

自分のした選択を間違ってるとは思っていない。
百目鬼が何がそうなったのかは分からないけれどひどく後ろ向きになるのも一部分でだけは分かっている。
だけど、多分この瞬間の事を俺は絶対に後悔はしないだろう。

「いれるぞ。」

切先を宛がいながら百目鬼が言う。
こういう時には力を抜くより、力を入れたほうがいいと知った。

脱力はずっと小さいころ武道の基本だと教わった。そんなことを唐突に思い出す。

少しいきむようにすると、百目鬼がぬぷぷぷと音を立てながら入ってくる。
違和感と圧迫感がすごい。

こういう時息を止めていた方がいいのか、意識して呼吸をした方がいいのかもよく分からない。
百目鬼が恐らく圧迫が強すぎて呻く。

全く格好の悪い初体験になっているのに二人とも興奮しきっていて、百目鬼の体からポタリポタリと汗が垂れる。

もう少しいきむとそれがちょうどよかったらしく、ぬぷんと百目鬼の太いやつが俺の中に納まった。
ただ、残念だけどどう考えても今日根元まで入れるのは無理だ。尻が壊れる。

だけどなかに百目鬼のが入ったってだけで、ちょっとした感動だ。
嬉しくて百目鬼に手を伸ばして彼を抱きしめる。

前からの挿入にしてよかった。こうやって彼の事を抱きしめられる。
お互いに体が汗で湿っている。

百目鬼が俺の事を抱きしめ返す。
体が熱い。
一番近いところにお互いがいるのが分かる。

覆いかぶさるように抱きしめている百目鬼の顔が俺の耳元にある。

「ひととせ……。」

名前を呼ばれて髪を撫でられる。
百目鬼の髪の毛は汗だろうしずくがいくつかついている。

擦ることができないのが辛いのは同じ男だから知っている。
なのに、百目鬼は何も言わず中がなじむのを待っているみたいだった。

「春秋《ひととせ》、ありがとう、好きだ。」

お礼を言われるようなことは何もしていないし、何で好かれているかいまだによく分かってない。
だけど、同じ気持ちだった。

なんでこの人の事好きになったのか自分でも訳分かんねえし、なんかよく分かんないけど同じ気持ちなのだ。

「信夫《しのぶ》さん、俺も好きですよ。」

精一杯の甘さを声に乗せて答えると、中の一物が今まで以上に膨らんだ。
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