一から百まで

渡辺 佐倉

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昼休みに百目鬼がうちのクラスに来るのはいつもの事だ。

もう、クラスメイトも慣れていたし、何となくそういうものって雰囲気になっている。
それにもう首や項に散らばっていた跡は残っていない。

二学期が始まっても、夏休み前と何も変わらない。

「そう言えば、前百目鬼さんが言ってた冗談、最近聞かないですねー。」

罰ゲーム終わったんですか? と近くの席で集まっていたクラスメイトが百目鬼に聞く。
俺達以外のほとんどの人間の中であれは罰ゲームだったということでかたがついていた。

おい、と怒鳴った方がいいのか、逆に良くないのか悩んでいると百目鬼がにっこりと笑う。

「もう、必要ないから。」

そう言うと、弁当を食べるのを再開している。

その言葉を聞いて、前同じようなことを言っていたことを思い出す。

あの告白は破滅願望の一種のような、とにかく確実に振られるための言葉だったと聞いた。
もう知っている。

破局も失恋も望んでいないから、もう必要ない。
そういう意味なのだとすぐに気がついた。


それに、あの時言ったしたい事なら、俺が付き合う。

「まあ、必要ないよな。」

まだ、いくつかの告白の言葉の内容は未達成だけれど、したけりゃすればいい。

俺が同じように言うと、百目鬼は少し驚いた様子にみえた。
その顔を見て、勝ったという気持ちに近い優越感がわく。

「それ、一口貰うぞ。」

百目鬼はそう言って俺の持っていたパンを一口かじられる。


そういう事は今まで正直あまりなかった。
いつも、百目鬼のものを貰ってばかりだった気がする。
俺が半ば強引に百目鬼のものを食べることはあったけれど逆はなかった。

そんなに好きなものだったのか? と百目鬼を見る。
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