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嫁入り2
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ユーリィも何も持っていない人間で、貴族ですらないということを聞いてレオニードは頭を抱えた。
殿には必要最低限しか人が来ない。
食事や部屋の掃除もされないなんていうことは無かったが、逆に言うとそれだけしかされない。
専属の人間すらいなさそうだ。
誰かにこの国のことを聞くことは難しい。
だから、それからは、二人で兎に角勉強をした。
幸い放っておかれているため時間だけはたくさんあった。
帝国からつけられた人間に本が好きだと嘘をついて儀礼関係の本をユーリィに取りに行かせたりもした。
帝国が各地を占領した所為で共用語とされる公用語が世界には広がっていた。
それをレオニードは軍で習ったことがあったことは幸いした。
宮殿に置かれている本も供用語で書かれているものがかなりあったからだ。
レオニードとしては、やれることはやったつもりだ。
他に方法は無かった。少なくとも今ある知識でレオニードとユーリィにできることはそれしかなかったのだ。
いっそのこと暴虐王様と刺し違える方が楽なんじゃなんて思考になった時期もあったけれど、その場合のユーリィのその後の事を考えるととてもじゃないけれど選択肢には入れられなかった。
連座制が皇帝とその関係者にどう認識されているのかさえレオニードには分からなかった。
男でしかも、自国の王族らしさはまるでない。それだけで不興を買いかねないのだ。
それを帝国側も分かっているらしく妙に同情的に見えた。
それでこちらの準備がしやすいのであればどう思われてもいい。そう思っていなければやっていられなかった。
だから、突然暴虐王から呼び出されたときレオニードはついに来てしまったかという気持ちしか無かった。
これから死罪を伝えられるかもしれない。そういう気持ちだった。
初めて見た暴虐王様の印象はおおむね噂どおりだった。
けれど、何故かその背中が寂しげに感じられてしまったのだ。
尊大な態度はまるでこちらが家来といった風情で、明らかに見下している様に見える。
こちらが何も言い返せないことも、抗議出来ないことも知っているといった感じだ。
なのにわずかながら違和感がある。
それが何かをただひたすらレオニードは考えてしまう。
直ぐにその答えは分かった。
レオニードが男であることに対して暴虐王は一言も触れないのだ。
美しき姫君を送ってこなかった事に対してまるで興味が無い。
美しい姫が多いと言われる国のみすぼらしい男の妃だということに対して彼は全く何も言及しないし視線もそういった感じで確認するようなものではない。
まるで、人質でありさえすれば誰でもいい。そんな態度に見えた。
ただ一番の問題が、レオニードが人質としての価値がまるでないということなのだが、そんな事どうでもいいと言わんばかりの傲慢な態度だ。
そもそも視線が全くあわないのだ。
一応レオニードを呼んで話をしているという体のはずなのに目の前の男はレオニードを視界にとどめておくことさえしない。
最初にチラリとこちらを見ただけでその後は全くこちらを見ない。
興味が無いのがありありと分かる。
礼儀作法を間違えたところで咎められそうには無かった。見ていない事を注意出来るとは思えない。
勿論、それ自体がこちらの失敗を誘うためのものでこの場にいる別の人間の忠言によりということもあるのかもしれないが、興味の無い皇帝陛下と儀礼だからと淡々とすぎゆく何かにしか見えなかった。
とんだ茶番に付き合わされている気分にレオニードはなった。
この嫁入り自体が茶番でしかないのだが、その時この暴虐王という男がよくこの茶番に付き合っているとレオニードは思ってしまった。
少しだけれども勉強をしたから、それが最低限の儀礼であるということが分かる言葉を残して暴虐王は立ち上がる。
本当に必要最低限のものでこちらへの気遣いなんてものは一切ないことだけは誰にだってわかった。
けれどレオニードはそんな判断をする余裕もなく、何とか今日は乗り切れるのかそう思いながら皇帝をみる。そのとき何故か、本当にわからないのだけれど、その背中が酷く寂しげに思えた。
だからといって声をかけられるわけでもないし、寂しいはずが無いのだ。欲しいものは土地でも物でも、それこそ人でも何でも手に入るのだ。
レオニードがこの国に嫁ぐ件だって気に入らなければこの姫が欲しいと名指しすれば恐らく手に入る。そんな男が寂しいはずが無いのに何故かそんな風に見えた。
そのまま、レオニードは謁見のための控えの間に待機しているように言われた。
後にして思えばそれはおかしなことなのだけれど、それがレオニードを排除しようとしたものだったとしても、あの出会いを作ってくれたのだから感謝したい。それは運命のいたずらなんていう簡単なものだったのかも知れないし、そうではないのかも知れない。
それでも後から考えるとそのいたずらに感謝したい気持ちしかレオニードにはなかった。
殿には必要最低限しか人が来ない。
食事や部屋の掃除もされないなんていうことは無かったが、逆に言うとそれだけしかされない。
専属の人間すらいなさそうだ。
誰かにこの国のことを聞くことは難しい。
だから、それからは、二人で兎に角勉強をした。
幸い放っておかれているため時間だけはたくさんあった。
帝国からつけられた人間に本が好きだと嘘をついて儀礼関係の本をユーリィに取りに行かせたりもした。
帝国が各地を占領した所為で共用語とされる公用語が世界には広がっていた。
それをレオニードは軍で習ったことがあったことは幸いした。
宮殿に置かれている本も供用語で書かれているものがかなりあったからだ。
レオニードとしては、やれることはやったつもりだ。
他に方法は無かった。少なくとも今ある知識でレオニードとユーリィにできることはそれしかなかったのだ。
いっそのこと暴虐王様と刺し違える方が楽なんじゃなんて思考になった時期もあったけれど、その場合のユーリィのその後の事を考えるととてもじゃないけれど選択肢には入れられなかった。
連座制が皇帝とその関係者にどう認識されているのかさえレオニードには分からなかった。
男でしかも、自国の王族らしさはまるでない。それだけで不興を買いかねないのだ。
それを帝国側も分かっているらしく妙に同情的に見えた。
それでこちらの準備がしやすいのであればどう思われてもいい。そう思っていなければやっていられなかった。
だから、突然暴虐王から呼び出されたときレオニードはついに来てしまったかという気持ちしか無かった。
これから死罪を伝えられるかもしれない。そういう気持ちだった。
初めて見た暴虐王様の印象はおおむね噂どおりだった。
けれど、何故かその背中が寂しげに感じられてしまったのだ。
尊大な態度はまるでこちらが家来といった風情で、明らかに見下している様に見える。
こちらが何も言い返せないことも、抗議出来ないことも知っているといった感じだ。
なのにわずかながら違和感がある。
それが何かをただひたすらレオニードは考えてしまう。
直ぐにその答えは分かった。
レオニードが男であることに対して暴虐王は一言も触れないのだ。
美しき姫君を送ってこなかった事に対してまるで興味が無い。
美しい姫が多いと言われる国のみすぼらしい男の妃だということに対して彼は全く何も言及しないし視線もそういった感じで確認するようなものではない。
まるで、人質でありさえすれば誰でもいい。そんな態度に見えた。
ただ一番の問題が、レオニードが人質としての価値がまるでないということなのだが、そんな事どうでもいいと言わんばかりの傲慢な態度だ。
そもそも視線が全くあわないのだ。
一応レオニードを呼んで話をしているという体のはずなのに目の前の男はレオニードを視界にとどめておくことさえしない。
最初にチラリとこちらを見ただけでその後は全くこちらを見ない。
興味が無いのがありありと分かる。
礼儀作法を間違えたところで咎められそうには無かった。見ていない事を注意出来るとは思えない。
勿論、それ自体がこちらの失敗を誘うためのものでこの場にいる別の人間の忠言によりということもあるのかもしれないが、興味の無い皇帝陛下と儀礼だからと淡々とすぎゆく何かにしか見えなかった。
とんだ茶番に付き合わされている気分にレオニードはなった。
この嫁入り自体が茶番でしかないのだが、その時この暴虐王という男がよくこの茶番に付き合っているとレオニードは思ってしまった。
少しだけれども勉強をしたから、それが最低限の儀礼であるということが分かる言葉を残して暴虐王は立ち上がる。
本当に必要最低限のものでこちらへの気遣いなんてものは一切ないことだけは誰にだってわかった。
けれどレオニードはそんな判断をする余裕もなく、何とか今日は乗り切れるのかそう思いながら皇帝をみる。そのとき何故か、本当にわからないのだけれど、その背中が酷く寂しげに思えた。
だからといって声をかけられるわけでもないし、寂しいはずが無いのだ。欲しいものは土地でも物でも、それこそ人でも何でも手に入るのだ。
レオニードがこの国に嫁ぐ件だって気に入らなければこの姫が欲しいと名指しすれば恐らく手に入る。そんな男が寂しいはずが無いのに何故かそんな風に見えた。
そのまま、レオニードは謁見のための控えの間に待機しているように言われた。
後にして思えばそれはおかしなことなのだけれど、それがレオニードを排除しようとしたものだったとしても、あの出会いを作ってくれたのだから感謝したい。それは運命のいたずらなんていう簡単なものだったのかも知れないし、そうではないのかも知れない。
それでも後から考えるとそのいたずらに感謝したい気持ちしかレオニードにはなかった。
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