46 / 61
王の条件、英雄の条件1
しおりを挟む
それから、レオニードは劉祜にこう尋ねた。
「あなたは、何のために王になって、何のために王であり続けるのですか?」
レオニードは劉祜が友のために王となって、友のために王であり続けていることを知っていた。
それに、レオニードが目覚めた時疲弊しきった顔をしていたことも知っている。
だから、これは酷な問いかけだとレオニード自身よく分かっている。
劉祜ではなく、晃の肩がぎくりと震える。
彼は誰のために王であり続けるのだろうか。
「魔獣の王を倒すのに、手勢は何人必要だと見積もった?」
劉祜が返事をしなかったため質問を重ねる。
大きな組織を動かさねば勝てぬという話なのか、それとも。
組織だった動きがあるのであれば、もっと早くに、少なくとも軍にいたレオニードも知っていた筈なのだ。
それであれば。
自分の頭に浮かんだ案をありえないと打ち消しながらレオニードは劉祜を見つめる。
劉祜は相変わらず何も答えない。
晃が馬鹿にするような笑いの乗った声で口を開いた。
「それほどの数はいらないはずや。
それこそ俺が王になれば自分の近衛で充分こと足りる。」
レオニードはこれからする提案を口に出すべきか最後まで悩んでいた。
政治にも貴族というものにもさほど詳しくないのだ。
もうすでに目の前の二人が考えに考えて、他の手段がないためこんな風になってしまったのかもしれない。
けれど、鼻で笑われるのであればそれでいいと思った。
「国として動けないのであれば、個人として動けばいい。」
それが出来たら苦労はないんや。と吐き捨てる様に晃は言う。
「精鋭が必要だってこと位、お馬鹿さんでもわかるやろ。」
晃は言う。
「なら、俺と劉祜でやればいいだろ。」
「それこそ、何を言ってるんだ? 自分ならできるって? 国の仕組みを少しは勉強したはずやろ!」
鼻で笑われるどころの話では無かったけれど、少なくともその案の検証をしたことがない事は分かった。
「悪逆非道の皇帝と王妃は処刑されてしまいます。
その後は悪を倒した将軍が良き国を作りました。」
めでたしめでたし。
レオニードが静かに言う。
「劉祜と俺が殺されたとして、それが“暴虐王”を討ったという理由であれば、周辺諸国の反逆の動きはどの程度の期間抑えられる?
……勿論あんたが次の王にすぐ即位したとしてだ。」
晃が訝し気にこちらを見る。
「死んだ筈の人間なら、好きに動けるだろ。」
精鋭? 笑わせる。
劉祜の剣の腕は一流だった。目的に見合う実力だろう。
レオニードは晃をみて笑顔を浮かべる。
「彼女はこの石で救う。それから俺と劉祜で魔獣の方は何とかする。
石が本当に奇跡の印なのかは知らないが、何とかそれなりにもたせられればいいんだろ?」
そもそも、この男は劉祜を殺そうとしていた。
自分が玉座についた後の計画はある筈だ。
彼は別に狂ってはいない。
だから、彼が王となった後の準備も進めていた筈だ。
「あなたは、何のために王になって、何のために王であり続けるのですか?」
レオニードは劉祜が友のために王となって、友のために王であり続けていることを知っていた。
それに、レオニードが目覚めた時疲弊しきった顔をしていたことも知っている。
だから、これは酷な問いかけだとレオニード自身よく分かっている。
劉祜ではなく、晃の肩がぎくりと震える。
彼は誰のために王であり続けるのだろうか。
「魔獣の王を倒すのに、手勢は何人必要だと見積もった?」
劉祜が返事をしなかったため質問を重ねる。
大きな組織を動かさねば勝てぬという話なのか、それとも。
組織だった動きがあるのであれば、もっと早くに、少なくとも軍にいたレオニードも知っていた筈なのだ。
それであれば。
自分の頭に浮かんだ案をありえないと打ち消しながらレオニードは劉祜を見つめる。
劉祜は相変わらず何も答えない。
晃が馬鹿にするような笑いの乗った声で口を開いた。
「それほどの数はいらないはずや。
それこそ俺が王になれば自分の近衛で充分こと足りる。」
レオニードはこれからする提案を口に出すべきか最後まで悩んでいた。
政治にも貴族というものにもさほど詳しくないのだ。
もうすでに目の前の二人が考えに考えて、他の手段がないためこんな風になってしまったのかもしれない。
けれど、鼻で笑われるのであればそれでいいと思った。
「国として動けないのであれば、個人として動けばいい。」
それが出来たら苦労はないんや。と吐き捨てる様に晃は言う。
「精鋭が必要だってこと位、お馬鹿さんでもわかるやろ。」
晃は言う。
「なら、俺と劉祜でやればいいだろ。」
「それこそ、何を言ってるんだ? 自分ならできるって? 国の仕組みを少しは勉強したはずやろ!」
鼻で笑われるどころの話では無かったけれど、少なくともその案の検証をしたことがない事は分かった。
「悪逆非道の皇帝と王妃は処刑されてしまいます。
その後は悪を倒した将軍が良き国を作りました。」
めでたしめでたし。
レオニードが静かに言う。
「劉祜と俺が殺されたとして、それが“暴虐王”を討ったという理由であれば、周辺諸国の反逆の動きはどの程度の期間抑えられる?
……勿論あんたが次の王にすぐ即位したとしてだ。」
晃が訝し気にこちらを見る。
「死んだ筈の人間なら、好きに動けるだろ。」
精鋭? 笑わせる。
劉祜の剣の腕は一流だった。目的に見合う実力だろう。
レオニードは晃をみて笑顔を浮かべる。
「彼女はこの石で救う。それから俺と劉祜で魔獣の方は何とかする。
石が本当に奇跡の印なのかは知らないが、何とかそれなりにもたせられればいいんだろ?」
そもそも、この男は劉祜を殺そうとしていた。
自分が玉座についた後の計画はある筈だ。
彼は別に狂ってはいない。
だから、彼が王となった後の準備も進めていた筈だ。
34
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる