25 / 99
【1章】引きこもり魔女、森を出る
帰路
しおりを挟む
「さてと」
ミシェルを含めた一行は、町の入口にいた。そこにはルカと彼の従者と同じ人数分の馬が繋がれていた。畑を出てすぐのため、まだ太陽は高い位置にある。
「我々は馬車や荷物の手配ができたら帰ります。御心配なさらずともすぐに後を追いますので」
そう話したのはクリスだ。
クリスとミシェルがこの町に着いたのは二週間前。今回撤収を命じられたのは急なことのため、当然何も準備が出来ていないのだ。
「…………」
ルカはしばらく無言で佇んでいた。ミシェルがそっと、気づかれない程度に顔を上げてルカを見る。
忙しい日々が続いているのか、ルカはまた少し痩せた印象だった。これまで一定の短さに切りそろえられていた後ろ髪が、少しだけ長くなっている。
「ミシェル」
視線はこちらを向かないまま、ルカが唐突にミシェルを呼ぶ。
「はっ……はい!」
思わず声を上ずらせながら、ミシェルが返事をした。ミシェルの動きに合わせて、トネールがキリリと姿勢を正す。緊張がミシェルの背筋を駆け巡った。
「乗馬はできるな?」
「へ? はっ……まぁ、一応は」
「だったら問題ない。ミシェル、その猫はアランに。クリスは二人分の荷物を纏めて、後から帰るように」
トネールを抱きかかえながらルカが言う。クリスは不服そうに唇を尖らせつつも、こくりと頷いた。肝心なミシェルはというと。
「えぇっと……それで、私は?」
冷や汗を流しながら表情を曇らせていた。
(もしかして、このままお役御免⁉)
不穏な考えがミシェルの頭を過る。
もしかしたら、ミシェルが王都を離れている間に沙汰が下ったのかもしれない。そう思うと足がすくんだ。
「ミシェル……おまえは私と一緒に帰るんだ」
ルカはそう言って、ようやくミシェルの方を見た。それは驚くほどに穏やかで優しい笑みだった。
馬はきっかり人数分。ミシェルが一緒では計算が合わない。
「けっ、けれどルカ様の後ではミシェルも委縮してしまうのでは? 騎馬で帰るにしても、せめて私と一緒の方が」
「もう決めたことだ。まったく、便りも寄こさず二週間もミシェルを独占していた癖に」
颯爽と馬に跨りながらルカがため息を吐く。
「それはあなたが期間も特に設けずにぼや~~っとした指令を出すからでしょう!」
クリスは眉間に深々と皺を刻むと、顔を真っ赤にしてそう言った。
ミシェルは言葉を失ったまま、二人のやり取りをじっと眺めている。
(帰る?)
ルカは久しぶりのクリスとの応酬で楽しそうに笑っている。けれどミシェルの視線に気づいたのだろう。再び穏やかに笑いながらミシェルに向かって手を差し伸べた。
「帰ろう? ミシェル」
再び発せられた言葉は、はっきりとミシェルを捕えた。
(良いのでしょうか)
親が犯罪者だからというだけではない。ルカを拒み、傷つけたミシェルに、彼の側に戻る資格があるのだろうか。ミシェルの帰る場所がルカの元だと、そう思っても良いのだろうか。そんな風に迷う癖に、ミシェルの手は自然ルカへと向かって伸びる。そっと指先が触れ合っただけで、心が震え、瞳から涙が込み上げた。
クリスはため息を吐きながら、困ったように笑った。それからミシェルがルカの後ろへと座るのを手助けしてやる。
「ありがとうございます、クリス」
ミシェルはクリスを見つめながら微笑んだ。
結局クリスはこの二週間、ミシェルとルカとの間にあったことも、自分があの日打ち明けた思いの話も、何もしなかった。
本当は気になっただろう。尋ねたかっただろう。けれどそうしなかったのは、クリスの優しさなのだとミシェルは十分理解している。
「道中お気をつけて。決して無理はしないでくださいね。私も、すぐに後を追いますから」
「ありがとうございます」
ルカは二人のやり取りを横目で眺めながら、満足気に笑う。それから、アランを含めた従者たちの準備が整ったことを確認してから手綱を引いた。
蹄の音が軽快に響く。ルカの従者たちは、前方と後方に分かれ、警護をしながら走っていた。吹き抜ける風が強いため、二人の声は警備のメンバーには聞こえそうにない。
(とはいえ、久々にお会いして、何をお話すべきやら……)
「ミシェル」
「はっ、はい!」
うだうだ考えるような時間はミシェルには殆ど与えられなかった。何を言われるのか、戸惑いながらもミシェルはルカの次の言葉を待つ。バクバクと心臓が鳴り響いていたが、顔が見えないのは幸いだった。
「その……元気そうでよかった」
「へ? は……はい。ありがとうございます」
ポツリと呟くようにルカが言う。何と答えるのが正解か分からないまま、ミシェルは返事をした。
「少し、日焼けしたな」
「はい。帽子はかぶっていたのですが、さすがに日差しが強かったみたいです」
ミシェルの白い肌は、日に焼けてほんのりと紅く染まっている。それとは対照的にどんどん真っ白になっていくルカが、ミシェルは心配だった。
「ルカ様は……少し痩せられましたね? ちゃんとお食事はなさっていますか?」
「いや。最近は事務仕事ばかりだったから大分疎かにしていた。身体もなまってしまったし、そろそろ生活を戻さないとな」
「……お仕事、未だに忙しいのですか?」
会談から向こう、ルカが忙しいことは知っていた。それは、しばらく遠征に出て溜まってしまった仕事の弊害だと聞いていたのだが。
(それだけじゃなかったのでしょうか)
ミシェルは唐突に不安と心配に駆られた。
「あぁ。だが大分マシになった。ディーナに補助に入ってもらうようにしたし、ひとまずはうまく仕事が捌けていくように仕組みを作った。だから、今後は執務室に籠りきりの生活とはおさらばだ」
ルカの物言いにはよどみがない。恐らくは本当に大丈夫なのだろう。ミシェルはほっと胸を撫でおろした。
「何でもかんでも王家に決裁が回ってくる今のシステムはさっさと見直さないと。おかげでミシェルにひと月近くも会えなかったんだ」
ミシェルはルカにしがみ付いたまま、そっと首を傾げた。
ディーナの話では、王族というのは自分に権力を集めたがるものだという。そうすることで国内外の均衡を保っているらしいのだが、ルカは違うのだろうか。
「ミシェル……俺はミシェルが思っているほど完璧な人間ではないよ」
ポツリとルカがそう漏らした。思わぬことに、ミシェルはひっそりと息を呑む。
「何事も、その道に精通したものの方が良い決定が下せると思うし、スピードも速いと思っている。民意だって、俺だけでは十分に汲むことができないし、それでは良い国は作れないだろう。だから今は、それを補うための仕組みを作るために色々と動いているんだ」
「そう……なんですね」
意外な話だった。けれど、ルカらしい考えだともミシェルは思った。この構想があればこそルカは、魔女試験の時にディーナを採用したり、クリスを側近として呼び寄せたのだろう。
「俺は決して、完璧じゃないんだ」
「…………」
ルカはもう一度、言葉を重ねた。それはあの夜、ミシェルがルカに伝えたのと真逆の言葉だ。
「……私は、ご自身の足りない所を素直に認められたり、他の方の良いところを活かせる部分も含めて、ルカ様は完璧だと私は思います」
本当はルカに足りない所など見つからない。けれど、そう伝えたところでルカは納得しないだろう。ミシェルはそっと、祈るようにルカの言葉を待った。けれどルカは無言のままだ。
(気分を害されたのでしょうか)
それでも、先程ルカに伝えた言葉はミシェルの本心だった。
出会った時から、ミシェルにとってルカは太陽のような存在だ。森を出てからようやく始まったばかりのミシェルの人生を、道を、明るく照らしてくれた。そんな彼を少しでも支えることができたら嬉しいし、役に立てたら良いと、今でもそう願っている。
やがて、二人を乗せた馬はスピードを落としたかと思うと、ゆっくりと停止した。後ろでアランが焦ったように手綱を引く。
「すまない、アラン」
ルカが振り返りながら、申し訳なさげに呟いた。トネールを胸に抱え、アランは不思議そうに首を傾げる。
「構いませんが、一体どうなさったのですか?」
「ミシェルときちんと話がしたかった。少し離れた所で待機していてくれ」
「……御意」
ルカが付いてきていないことに気づいたらしい前方の従者たちも、こちらへと戻ってくる。アランは従者たちを一所に集めると、何やら指令を与えていた。どうやら休憩を取ると伝えているらしい。従者たちはいざとなればすぐに駆け付けられる程度に離れた木陰へと移動していった。
「ミシェル」
ルカが先に馬から降り、ミシェルへと手を差し出す。ミシェルは戸惑いながらも、そっとルカの手を取った。
ミシェルを含めた一行は、町の入口にいた。そこにはルカと彼の従者と同じ人数分の馬が繋がれていた。畑を出てすぐのため、まだ太陽は高い位置にある。
「我々は馬車や荷物の手配ができたら帰ります。御心配なさらずともすぐに後を追いますので」
そう話したのはクリスだ。
クリスとミシェルがこの町に着いたのは二週間前。今回撤収を命じられたのは急なことのため、当然何も準備が出来ていないのだ。
「…………」
ルカはしばらく無言で佇んでいた。ミシェルがそっと、気づかれない程度に顔を上げてルカを見る。
忙しい日々が続いているのか、ルカはまた少し痩せた印象だった。これまで一定の短さに切りそろえられていた後ろ髪が、少しだけ長くなっている。
「ミシェル」
視線はこちらを向かないまま、ルカが唐突にミシェルを呼ぶ。
「はっ……はい!」
思わず声を上ずらせながら、ミシェルが返事をした。ミシェルの動きに合わせて、トネールがキリリと姿勢を正す。緊張がミシェルの背筋を駆け巡った。
「乗馬はできるな?」
「へ? はっ……まぁ、一応は」
「だったら問題ない。ミシェル、その猫はアランに。クリスは二人分の荷物を纏めて、後から帰るように」
トネールを抱きかかえながらルカが言う。クリスは不服そうに唇を尖らせつつも、こくりと頷いた。肝心なミシェルはというと。
「えぇっと……それで、私は?」
冷や汗を流しながら表情を曇らせていた。
(もしかして、このままお役御免⁉)
不穏な考えがミシェルの頭を過る。
もしかしたら、ミシェルが王都を離れている間に沙汰が下ったのかもしれない。そう思うと足がすくんだ。
「ミシェル……おまえは私と一緒に帰るんだ」
ルカはそう言って、ようやくミシェルの方を見た。それは驚くほどに穏やかで優しい笑みだった。
馬はきっかり人数分。ミシェルが一緒では計算が合わない。
「けっ、けれどルカ様の後ではミシェルも委縮してしまうのでは? 騎馬で帰るにしても、せめて私と一緒の方が」
「もう決めたことだ。まったく、便りも寄こさず二週間もミシェルを独占していた癖に」
颯爽と馬に跨りながらルカがため息を吐く。
「それはあなたが期間も特に設けずにぼや~~っとした指令を出すからでしょう!」
クリスは眉間に深々と皺を刻むと、顔を真っ赤にしてそう言った。
ミシェルは言葉を失ったまま、二人のやり取りをじっと眺めている。
(帰る?)
ルカは久しぶりのクリスとの応酬で楽しそうに笑っている。けれどミシェルの視線に気づいたのだろう。再び穏やかに笑いながらミシェルに向かって手を差し伸べた。
「帰ろう? ミシェル」
再び発せられた言葉は、はっきりとミシェルを捕えた。
(良いのでしょうか)
親が犯罪者だからというだけではない。ルカを拒み、傷つけたミシェルに、彼の側に戻る資格があるのだろうか。ミシェルの帰る場所がルカの元だと、そう思っても良いのだろうか。そんな風に迷う癖に、ミシェルの手は自然ルカへと向かって伸びる。そっと指先が触れ合っただけで、心が震え、瞳から涙が込み上げた。
クリスはため息を吐きながら、困ったように笑った。それからミシェルがルカの後ろへと座るのを手助けしてやる。
「ありがとうございます、クリス」
ミシェルはクリスを見つめながら微笑んだ。
結局クリスはこの二週間、ミシェルとルカとの間にあったことも、自分があの日打ち明けた思いの話も、何もしなかった。
本当は気になっただろう。尋ねたかっただろう。けれどそうしなかったのは、クリスの優しさなのだとミシェルは十分理解している。
「道中お気をつけて。決して無理はしないでくださいね。私も、すぐに後を追いますから」
「ありがとうございます」
ルカは二人のやり取りを横目で眺めながら、満足気に笑う。それから、アランを含めた従者たちの準備が整ったことを確認してから手綱を引いた。
蹄の音が軽快に響く。ルカの従者たちは、前方と後方に分かれ、警護をしながら走っていた。吹き抜ける風が強いため、二人の声は警備のメンバーには聞こえそうにない。
(とはいえ、久々にお会いして、何をお話すべきやら……)
「ミシェル」
「はっ、はい!」
うだうだ考えるような時間はミシェルには殆ど与えられなかった。何を言われるのか、戸惑いながらもミシェルはルカの次の言葉を待つ。バクバクと心臓が鳴り響いていたが、顔が見えないのは幸いだった。
「その……元気そうでよかった」
「へ? は……はい。ありがとうございます」
ポツリと呟くようにルカが言う。何と答えるのが正解か分からないまま、ミシェルは返事をした。
「少し、日焼けしたな」
「はい。帽子はかぶっていたのですが、さすがに日差しが強かったみたいです」
ミシェルの白い肌は、日に焼けてほんのりと紅く染まっている。それとは対照的にどんどん真っ白になっていくルカが、ミシェルは心配だった。
「ルカ様は……少し痩せられましたね? ちゃんとお食事はなさっていますか?」
「いや。最近は事務仕事ばかりだったから大分疎かにしていた。身体もなまってしまったし、そろそろ生活を戻さないとな」
「……お仕事、未だに忙しいのですか?」
会談から向こう、ルカが忙しいことは知っていた。それは、しばらく遠征に出て溜まってしまった仕事の弊害だと聞いていたのだが。
(それだけじゃなかったのでしょうか)
ミシェルは唐突に不安と心配に駆られた。
「あぁ。だが大分マシになった。ディーナに補助に入ってもらうようにしたし、ひとまずはうまく仕事が捌けていくように仕組みを作った。だから、今後は執務室に籠りきりの生活とはおさらばだ」
ルカの物言いにはよどみがない。恐らくは本当に大丈夫なのだろう。ミシェルはほっと胸を撫でおろした。
「何でもかんでも王家に決裁が回ってくる今のシステムはさっさと見直さないと。おかげでミシェルにひと月近くも会えなかったんだ」
ミシェルはルカにしがみ付いたまま、そっと首を傾げた。
ディーナの話では、王族というのは自分に権力を集めたがるものだという。そうすることで国内外の均衡を保っているらしいのだが、ルカは違うのだろうか。
「ミシェル……俺はミシェルが思っているほど完璧な人間ではないよ」
ポツリとルカがそう漏らした。思わぬことに、ミシェルはひっそりと息を呑む。
「何事も、その道に精通したものの方が良い決定が下せると思うし、スピードも速いと思っている。民意だって、俺だけでは十分に汲むことができないし、それでは良い国は作れないだろう。だから今は、それを補うための仕組みを作るために色々と動いているんだ」
「そう……なんですね」
意外な話だった。けれど、ルカらしい考えだともミシェルは思った。この構想があればこそルカは、魔女試験の時にディーナを採用したり、クリスを側近として呼び寄せたのだろう。
「俺は決して、完璧じゃないんだ」
「…………」
ルカはもう一度、言葉を重ねた。それはあの夜、ミシェルがルカに伝えたのと真逆の言葉だ。
「……私は、ご自身の足りない所を素直に認められたり、他の方の良いところを活かせる部分も含めて、ルカ様は完璧だと私は思います」
本当はルカに足りない所など見つからない。けれど、そう伝えたところでルカは納得しないだろう。ミシェルはそっと、祈るようにルカの言葉を待った。けれどルカは無言のままだ。
(気分を害されたのでしょうか)
それでも、先程ルカに伝えた言葉はミシェルの本心だった。
出会った時から、ミシェルにとってルカは太陽のような存在だ。森を出てからようやく始まったばかりのミシェルの人生を、道を、明るく照らしてくれた。そんな彼を少しでも支えることができたら嬉しいし、役に立てたら良いと、今でもそう願っている。
やがて、二人を乗せた馬はスピードを落としたかと思うと、ゆっくりと停止した。後ろでアランが焦ったように手綱を引く。
「すまない、アラン」
ルカが振り返りながら、申し訳なさげに呟いた。トネールを胸に抱え、アランは不思議そうに首を傾げる。
「構いませんが、一体どうなさったのですか?」
「ミシェルときちんと話がしたかった。少し離れた所で待機していてくれ」
「……御意」
ルカが付いてきていないことに気づいたらしい前方の従者たちも、こちらへと戻ってくる。アランは従者たちを一所に集めると、何やら指令を与えていた。どうやら休憩を取ると伝えているらしい。従者たちはいざとなればすぐに駆け付けられる程度に離れた木陰へと移動していった。
「ミシェル」
ルカが先に馬から降り、ミシェルへと手を差し出す。ミシェルは戸惑いながらも、そっとルカの手を取った。
0
あなたにおすすめの小説
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』
しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。
どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。
しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、
「女は馬鹿なくらいがいい」
という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。
出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない――
そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、
さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。
王太子は無能さを露呈し、
第二王子は野心のために手段を選ばない。
そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。
ならば――
関わらないために、関わるしかない。
アヴェンタドールは王国を救うため、
政治の最前線に立つことを選ぶ。
だがそれは、権力を欲したからではない。
国を“賢く”して、
自分がいなくても回るようにするため。
有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、
ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、
静かな勝利だった。
---
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
さよなら、悪女に夢中な王子様〜婚約破棄された令嬢は、真の聖女として平和な学園生活を謳歌する〜
平山和人
恋愛
公爵令嬢アイリス・ヴェスペリアは、婚約者である第二王子レオンハルトから、王女のエステルのために理不尽な糾弾を受け、婚約破棄と社交界からの追放を言い渡される。
心身を蝕まれ憔悴しきったその時、アイリスは前世の記憶と、自らの家系が代々受け継いできた『浄化の聖女』の真の力を覚醒させる。自分が陥れられた原因が、エステルの持つ邪悪な魔力に触発されたレオンハルトの歪んだ欲望だったことを知ったアイリスは、力を隠し、追放先の辺境の学園へ進学。
そこで出会ったのは、学園の異端児でありながら、彼女の真の力を見抜く魔術師クライヴと、彼女の過去を知り静かに見守る優秀な生徒会長アシェル。
一方、アイリスを失った王都では、エステルの影響力が増し、国政が混乱を極め始める。アイリスは、愛と権力を失った代わりに手に入れた静かな幸せと、聖女としての使命の間で揺れ動く。
これは、真実の愛と自己肯定を見つけた令嬢が、元婚約者の愚かさに裁きを下し、やがて来る国の危機を救うまでの物語。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる