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1.エピローグ。はじまり。
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身に降りかかる不幸というのは、当事者となるか、
ただの関係者となるかで
受け取り方のかわるものであろう。
母の躯を乗せた馬車は、キングダムの商業エリアを走っている。
ピーターも、親族の手配した馬車にのり、のろのろと後ろを
進んでいた。
王族でもないものの死を、この国では、振り返ったりもしない。
ピーターが感じる悲しみ、喪失感に同情を寄せるものもいない。
母、アリスの急死をしらされてから、ピーターの心は動揺していた。
心のよりどころを奪われた・・・そんな不安定さを感じていた。
『伝染型緑熱病』という病名を宮廷勤務の医師から聞かされたときも、
ただただ呆然とこの現実、悲しみに押し流されていた。
アリスの急変をきいたアタゴ国の親戚たちが、かけつけ、葬儀やら
関係者への挨拶はとりしきってくれていた。
先進魔法学を学ぶ、大学生であるピーターは、親族からは
頼りなくみえたことであろう。
ピーターは、魔法学の教員をしてた母、アリスを尊敬していた。
どんなことにも前向きで、物事に肯定的であった母は、
教員という肩書以上にまぶしくみえた。
アリスが眠る棺に花をつめたとき、思わず涙が流れ出た。
それは、過去にアリスが与えてくれたことを思い出させる、つながりの証明ともいうものだった。魔法で、死んだものを生き返らすことを禁ず。これはキングダムの掟のひとつである。
やがて、棺の蓋がしめられ、花にかこまれた母アリスの躯は、
うめられた。
それがピーターが母をみた最後のときであった。
『ピーター君か?』
テーブルのむこうから、白髪まじりの中年の男性が話しかけてきた。
『しばらくぶりだね。大きくなったな』
と言いながら、キングダムタイムズ記者のデイブが話しかけてきた。
『今はは魔法学の学生だっけ?』
『はい』
『専門は?』
『水の魔法を応用した、合成魔法の研究です』
ピーターは答えた。
ピーターは、どうもデイブが苦手だったので、会話を打ち切りたい気持ちで
ぶっきらぼうに答えた。
『具体的にはどんなことやっているの?』
『水の魔法にエレメントを組み合わせて、
今までに世の中にない存在を
合成できないか、そんなことを研究しています』
『キングダムの役に立つ研究だね』
『そうだといいですね』
ささやかなお世辞も、ピーターには届かなかった。
『このたびは残念なことになったね。お母上は、大変有能でまだまだ働きさかりだったのに』
『今日は遠方から母のため、ありがとうございます』
デーブと母がどういう関係であったかは知らない。
しかし、昔からの友人ではあったようである。
ピーターは、テーブルの近くにある紅茶をデーブにも差し出した。
ふたりはひとしきり、故人の思い出を話した。話題もつきたかというところで
デーブが不思議な質問をしてきた。
『ピーターくんは、『予言の書』について、お母さまから聞いていなかったかな』
『なんですか、その『予言の書』って。』
『聞いたことはないですね』
『そうか、お母上から、調べるように依頼されていてね。キングダムの都市伝説の
ひとつと思われている書物だよ。今から50年前に、研究機関が、
キングダムの脅威となるものについて記したといわれている書物なんだが。』
『私は学生なので、そいうったものには疎くて』
デーブは残念そうにピーターをみつつ
『そうか、わかったと引き下がった』
その後、母を見送る法要も済み、ピーターは天涯孤独の身となった。
22歳の夏であった。
ただの関係者となるかで
受け取り方のかわるものであろう。
母の躯を乗せた馬車は、キングダムの商業エリアを走っている。
ピーターも、親族の手配した馬車にのり、のろのろと後ろを
進んでいた。
王族でもないものの死を、この国では、振り返ったりもしない。
ピーターが感じる悲しみ、喪失感に同情を寄せるものもいない。
母、アリスの急死をしらされてから、ピーターの心は動揺していた。
心のよりどころを奪われた・・・そんな不安定さを感じていた。
『伝染型緑熱病』という病名を宮廷勤務の医師から聞かされたときも、
ただただ呆然とこの現実、悲しみに押し流されていた。
アリスの急変をきいたアタゴ国の親戚たちが、かけつけ、葬儀やら
関係者への挨拶はとりしきってくれていた。
先進魔法学を学ぶ、大学生であるピーターは、親族からは
頼りなくみえたことであろう。
ピーターは、魔法学の教員をしてた母、アリスを尊敬していた。
どんなことにも前向きで、物事に肯定的であった母は、
教員という肩書以上にまぶしくみえた。
アリスが眠る棺に花をつめたとき、思わず涙が流れ出た。
それは、過去にアリスが与えてくれたことを思い出させる、つながりの証明ともいうものだった。魔法で、死んだものを生き返らすことを禁ず。これはキングダムの掟のひとつである。
やがて、棺の蓋がしめられ、花にかこまれた母アリスの躯は、
うめられた。
それがピーターが母をみた最後のときであった。
『ピーター君か?』
テーブルのむこうから、白髪まじりの中年の男性が話しかけてきた。
『しばらくぶりだね。大きくなったな』
と言いながら、キングダムタイムズ記者のデイブが話しかけてきた。
『今はは魔法学の学生だっけ?』
『はい』
『専門は?』
『水の魔法を応用した、合成魔法の研究です』
ピーターは答えた。
ピーターは、どうもデイブが苦手だったので、会話を打ち切りたい気持ちで
ぶっきらぼうに答えた。
『具体的にはどんなことやっているの?』
『水の魔法にエレメントを組み合わせて、
今までに世の中にない存在を
合成できないか、そんなことを研究しています』
『キングダムの役に立つ研究だね』
『そうだといいですね』
ささやかなお世辞も、ピーターには届かなかった。
『このたびは残念なことになったね。お母上は、大変有能でまだまだ働きさかりだったのに』
『今日は遠方から母のため、ありがとうございます』
デーブと母がどういう関係であったかは知らない。
しかし、昔からの友人ではあったようである。
ピーターは、テーブルの近くにある紅茶をデーブにも差し出した。
ふたりはひとしきり、故人の思い出を話した。話題もつきたかというところで
デーブが不思議な質問をしてきた。
『ピーターくんは、『予言の書』について、お母さまから聞いていなかったかな』
『なんですか、その『予言の書』って。』
『聞いたことはないですね』
『そうか、お母上から、調べるように依頼されていてね。キングダムの都市伝説の
ひとつと思われている書物だよ。今から50年前に、研究機関が、
キングダムの脅威となるものについて記したといわれている書物なんだが。』
『私は学生なので、そいうったものには疎くて』
デーブは残念そうにピーターをみつつ
『そうか、わかったと引き下がった』
その後、母を見送る法要も済み、ピーターは天涯孤独の身となった。
22歳の夏であった。
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