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「ぷふぁー!」
9月30日。
二か月間に及ぶ長い夏休みも今日で終わるという日の夕暮れ時。
大学2年生の僕、宮津雪(みやつゆき)は、やっと大量の課題を終わらせることに成功していた。
大学1年の頃に比べて約2倍近い量のレポートたち。
夏休みの間、毎日ちょっとずつやっていた僕でさえこんなにギリギリまでかかってしまったのだから、きっと夏休みの最後のほうまでやらないタイプの人は今頃悟りの境地に入っているんじゃないだろうか。
スマホを覗くと案の定友達から「助けてくれー!」と連絡が来ていたが、僕にはどうすることもできないのでガンバレと書かれたうさぎのスタンプを送っておく。
課題が終わったはいいもののこの時間ではどこかに遊びに行くのこともできず、後は夜が更けていくのを待って寝るだけ。
今年の夏休みはどこへにも出掛けられなかったのが少し寂しい。
脱力感か達成感か分からない気持ちを抱えつつ、ベッドにダイブ。
そのままニュースサイトを漁っていると「秋にオススメ!絶景露天風呂3選」という記事を見つけた。
温泉……最後に入ったのは高校の修学旅行でだろうか。思い返してみると、大学生になってからまだ旅行に行ったことがなかった。
明日から大学が再開するが、良いところがあればそのうち行ってみたいなと思い、そのページをタップする。
──どこも遠いなぁ。
目を引きやすいようなポップなフォントに暖色でグラデーションされた背景のページ。
しかし、実際そこで紹介されていたのは大分県の別府温泉や兵庫県の有馬温泉といった有名なところばかりだった。
特に別府温泉は、温泉知識皆無の僕でも湯けむりが悶々と立ち上る情景が思い浮かぶくらいだ。
確か、何かの雑誌で"血の池"……みたいな名前の温泉を見た気がする。
湯が赤茶色で怖そうだと感じたけど、同時に少し興味もあったっけ。
サイトには、他にも綺麗な夜景の写真がこれでもかと掲載されていたが、僕が住んでいるここ東京からはすぐに行けるような距離ではなかった。
でも、もしかしたら家の近くに温泉の一つや二つくらいないだろうか。
温泉はなくともこの大都会。衛生上、銭湯くらなら近くにもあるはずだ。
僅かな可能性を感じてそう思い付いた僕は、スマホの地図アプリを開き、「近くの銭湯」と検索してみる。
記憶から思い出す限りでは近くに銭湯なんてなかったような気がしていたが、家から400m程の近い場所に"井ノ湯"というところがあるようだ。
しかも当初探していた銭湯ではなく、この辺りでは珍しい温泉とのこと。
銭湯と温泉の違いなんて沸かしたお湯か源泉かということくらいしか知らないが、少なくとも源泉の方が気持ちよさそうな気がする。
サイトの口コミによると温泉旅館などでよく見るような露天風呂なんかもあるそうで、毎日狭いユニットバスのシャワーだけで済ませてしまう僕にとって、今から準備をして外に出る労力に対抗できるほど魅力的だった。
……ピコンッ
準備をするためにベッドから起き上がろうとした時、又もや先程の友達からメッセージが届いた。
なんでも、レポートを印刷するための用紙がきれたから貸してほしいとのこと。
なるほど、さっきの助けてくれはこういう意味だったのか。
彼とは、家が近く歩いて行ける距離なので僕からよく遊びに訪れたりする。
唯一大学初日から仲良くしてる友達だ。
――今から持っていくね。
そう返信して、スマホの充電が少なくなっていたことに気づき充電器を刺した。
せっかくだから彼も温泉に誘ってみようかな。レポート印刷したら課題も全部終わりらしいし。
かくして、夏休み最終日の予定がやっと決まることになったのだった。
9月30日。
二か月間に及ぶ長い夏休みも今日で終わるという日の夕暮れ時。
大学2年生の僕、宮津雪(みやつゆき)は、やっと大量の課題を終わらせることに成功していた。
大学1年の頃に比べて約2倍近い量のレポートたち。
夏休みの間、毎日ちょっとずつやっていた僕でさえこんなにギリギリまでかかってしまったのだから、きっと夏休みの最後のほうまでやらないタイプの人は今頃悟りの境地に入っているんじゃないだろうか。
スマホを覗くと案の定友達から「助けてくれー!」と連絡が来ていたが、僕にはどうすることもできないのでガンバレと書かれたうさぎのスタンプを送っておく。
課題が終わったはいいもののこの時間ではどこかに遊びに行くのこともできず、後は夜が更けていくのを待って寝るだけ。
今年の夏休みはどこへにも出掛けられなかったのが少し寂しい。
脱力感か達成感か分からない気持ちを抱えつつ、ベッドにダイブ。
そのままニュースサイトを漁っていると「秋にオススメ!絶景露天風呂3選」という記事を見つけた。
温泉……最後に入ったのは高校の修学旅行でだろうか。思い返してみると、大学生になってからまだ旅行に行ったことがなかった。
明日から大学が再開するが、良いところがあればそのうち行ってみたいなと思い、そのページをタップする。
──どこも遠いなぁ。
目を引きやすいようなポップなフォントに暖色でグラデーションされた背景のページ。
しかし、実際そこで紹介されていたのは大分県の別府温泉や兵庫県の有馬温泉といった有名なところばかりだった。
特に別府温泉は、温泉知識皆無の僕でも湯けむりが悶々と立ち上る情景が思い浮かぶくらいだ。
確か、何かの雑誌で"血の池"……みたいな名前の温泉を見た気がする。
湯が赤茶色で怖そうだと感じたけど、同時に少し興味もあったっけ。
サイトには、他にも綺麗な夜景の写真がこれでもかと掲載されていたが、僕が住んでいるここ東京からはすぐに行けるような距離ではなかった。
でも、もしかしたら家の近くに温泉の一つや二つくらいないだろうか。
温泉はなくともこの大都会。衛生上、銭湯くらなら近くにもあるはずだ。
僅かな可能性を感じてそう思い付いた僕は、スマホの地図アプリを開き、「近くの銭湯」と検索してみる。
記憶から思い出す限りでは近くに銭湯なんてなかったような気がしていたが、家から400m程の近い場所に"井ノ湯"というところがあるようだ。
しかも当初探していた銭湯ではなく、この辺りでは珍しい温泉とのこと。
銭湯と温泉の違いなんて沸かしたお湯か源泉かということくらいしか知らないが、少なくとも源泉の方が気持ちよさそうな気がする。
サイトの口コミによると温泉旅館などでよく見るような露天風呂なんかもあるそうで、毎日狭いユニットバスのシャワーだけで済ませてしまう僕にとって、今から準備をして外に出る労力に対抗できるほど魅力的だった。
……ピコンッ
準備をするためにベッドから起き上がろうとした時、又もや先程の友達からメッセージが届いた。
なんでも、レポートを印刷するための用紙がきれたから貸してほしいとのこと。
なるほど、さっきの助けてくれはこういう意味だったのか。
彼とは、家が近く歩いて行ける距離なので僕からよく遊びに訪れたりする。
唯一大学初日から仲良くしてる友達だ。
――今から持っていくね。
そう返信して、スマホの充電が少なくなっていたことに気づき充電器を刺した。
せっかくだから彼も温泉に誘ってみようかな。レポート印刷したら課題も全部終わりらしいし。
かくして、夏休み最終日の予定がやっと決まることになったのだった。
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